Vol2 「西成特区構想」を考える

どこまで知ってる?
『西成特区構想』

第2回の「フォーラムにしなり」は西成特区構想がテーマです
橋下市長は西成特区構想を「えこひいき政策と言われても、地域が変わるということを示し、大阪全体のまちづくりに生かしたい」と決意表明し、圧倒されるほどのスピード感と情報公開の徹底で西成区役所のHPに行けば、誰でも大体の資料を手に入れることができます。HPには動画もあります。ついこないだの資料も議事録もあります。大阪都構想とならんで、テレビや新聞で目にすることが多いはずです。
最近では9月からスタートした「あいりん地域のまちづくり検討会議」が30人もの住民(委員)が参加するボトムアップ型の取り組みとしても紹介されていました。
でも、実際にみんなは、どこまで知っていて、どんなところに興味を持っているのでしょう。そんなところを知りたくて、寺嶋さんと小林さんが発題しました。

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【発題】寺嶋 公典 さん

西成特区構想は、2012年2月のプロジェクトチームから始まりました。生活保護率が非常に高く、高齢化が進み、若い世代が少ないなど多様な課題を抱える西成区の活性化を大きな目標にしています。
そこでは、「子育て・教育」「住まい」「環境対策」「安全」などに関わる様々な分野から西成を総合的にとらえなおし、大阪市の各局長が一斉に集う中で、議論されました。
また、役所の中だけで議論するのではなく、「幅広く意見を募集すること」「過程を公開すること」を意識し、2012年中は市長と市民の公開懇談会やシンポジウム、そして12回に及ぶ有識者座談会が開催され、「西成特区構想有識者座談会報告書」が取りまとめられました。この報告書の中では、「①短期集中的な対策」「②中長期的な対策」③「投資プロジェクトや大規模事業」の3つの段階に分けた8分野56項目の具体的な提言がされていました。
これらの実現にむけ、2013年度には実際に事業化されたものや議論を深めるための4つの専門部会「地域資源活用」「観光振興」「環境・福祉」「こども・子育て」が設けられるなど、5年程度のスパンで取り組みが始まっています。
具体的には「①短期集中的対策」として、あいりん地域を中心とした、ゴミの不法投棄や薬物など。「②中長期的対策」として、西成区全体の将来をふまえた、子育て施策、子育て世帯の呼び込み策など。「③将来に向けての具体的なプロジェクト・大型事業」として、あいりん総合センター・日雇労働市場の今後のあり方などがあります。
そして、実際のお金ですが、特区構想には、2012年度は9億円、2013年度は13億円がつきました。2013年度からは防犯カメラ、道路照明灯の整備、塾代助成(1万円助成)などの事業が始まり、2014年度には大阪府・大阪市・大阪府警察本部があいりん地域を中心とする環境整備の取り組み【5か年計画】がスタートしています。

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ただ、「あいりん地域」での取り組みが先行していることもあり、「実際に北西部に関わるところがあるの?」との声もよく耳にしますので、北西部で関わるところを整理してみました。
まず、子どもの居場所づくりとして、「プレイパーク」の設置があります。子どもが思い切り遊べる冒険遊びの場として、暫定的に西成公園などで開催されていますが、来年4月に梅南小学校に統合されることになった、津守小学校を「プレイパーク」としての活用する計画もあるようです。
また、新今宮の「ひと花センター」という高齢者のつながりづくりや居場所づくりに取り組む事業が、北津守の空地に「ひまわり迷路」をつくっていました。もっと近くでも、市民交流センターの隣にある研修情報センターに西成区の歴史や地図が学べる「にしなりアーカイブ」が設置されています。
いまでは、大阪市全域に広がった「教育バウチャー」(塾代助成)も西成区が先行していました。でも、北西部には塾が少ないということもあり、今年からは鶴見橋中学校で月曜日と金曜日の放課後に「西成まなび塾」がスタートしています。

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確かに、ゴミの不法投棄をした人が逮捕されたニュースなど、ゴミの不法投棄対策や防犯カメラの設置、覚せい剤の取り締まり強化、あいりんセンターの今後などあいりん地域の出来事が多く報道されていることは事実ですが、整理をすると、実は北西部でも西成特区構想がらみの事業が展開され、参加できる取り組みもあります。

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ただ、北西部には大阪市が所有する「未利用地」がたくさん残っています。有識者座談会ではこの部分の活用方法についても議論されていたので、今後どうなるか注目したいと考えています。

【発題】小林 道弘 さん
特区とは簡単に言えば「規制緩和」のこと。国には法律、地方には条例があり、できることできないことが、縦筋で決まっていることがいっぱいあります。
例えば保育所関係なら厚生労働省、商店街のことなら経済産業省などと決まっています。だから、地域という面的な整備をする場合には、横ともいえる他の省庁の規制を外したり、認可を取ったりする必要があります。これらの規制緩和を一定の地域・特別な区域に認めることが「特区」です。
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では、西成特区構想の「特区」は、どうでしょう。本来であれば、局と局との壁を超えて、横断的な事業を行うことになるのでしょうが、今の段階では、新たな事業の予算化、いわゆる「えこひいき策」が先行しています。部局横断型のプロジェクトチームや有識者座談会など、広く意見を募った取組ですが、本来の意味の「特区」とはいえないので、厳密には「特区」と言わない方がいいと思います。全国にもさまざまな特区がありますが、規制緩和をして経済を発展させようというようなものがほとんどです。最近では「カジノ特区」が分かりやすいと思います。
西成特区構想のスタートはあいりん地域でした。その中心は「結核対策」と「治安対策」です。西成区が先行した「バウチャー」や「プレイパーク」などは子育て環境の整備という点で評価されますが、西成全体が変わるにはインパクトが弱い。「西成区」特区であるならば、基本的に西成区全体を対象とするにもかかわらず、今のところは、あいりん地域が中心になっています。
環境整備の5か年計画もタイトルに「あいりん地域を中心とする」と書かれていますし、覚せい剤等の薬物取引の取締や防犯カメラの設置など安全対策が進められているのは、あいりん地域です。今のところ、特区構想の要はあいりん地域の改善です。ただ、何度も言いますが、「西成区」特区構想を意識しているのであれば、西成区全体を対象に、面的に規制を緩和していくことが必要です。
では、どうやったら「西成区」特区になるのでしょう。まずは、西成区の実態を知ることが必要です。役所のメンバーと議論をするときには、24区の中での西成区のポジションをはっきりさせています。
例えば、西成区の高齢化率は24区で1番高い。生活保護率、空家率、不法投棄、結核発生率、救急車出動率、火災発生率なども1番となっています。その反面、市税収入、自動車保有率は24区でワースト1です。この良い悪いの1番を入れ替えるような取組こそが、「西成区」特区にふさわしいと思います。
岸里や玉出は関係ないとの声もあり、まだまだ、オール西成のコンセンサスは得られていない面もあります。「西成特区=あいりん特区」で終わらせないためにも、西成区全体をみすえた提案をしていきます。

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【発言】冨田 一幸 さん
「特区」とは縦割りを横割りに使うのが基本で、西成区特区構想は西成区を「特別扱い」にしただけといえます。そのなかで、「あいりん総合センター」のあり方については場所を変えて規模は縮小し、日雇労働市場は残すということで「雇用特区」になるかもしれない。職安を超えた労働相談ができる公的な場所はなく、また日雇労働市場は多様な働き方の1つとして捉えることもでき、「労働のシリコンバレー」になる可能性がある。
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「あいりん地域」の定義に「地勢的あいりん地区」と「社会的あいりん地区」があると思う。昔、簡易宿所密集市街地といった人がいる。最近は福祉アパートが点在している地区、ホームレス多住地区などと定義されている。あいりん地域をどう定義するかで、人々の見方は変わります。
来年生活困窮者支援法が施行されることもあり、生活保護は抑制されます。それから西成区の統計、平均を比べることは、信用できないところもあります。あいりん地区が数字をグーと上げているところがあるので。
「防犯カメラの設置」に対して、カメラを設置するならば、人によるパトロールで対応したほうがいいのではないのか。治安対策を雇用創出や会社設立につなげるという海外の事例もあり、さらに西成特区に雇用をプラスするということでもいいのではないか。

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みんなのこえ

○まわりでも、西成特区構想は、我々には関係ないという人は多い。「あいりん地域のことでしょ。」と考える人は多い。

○西成特区だけでなく、お隣の浪速区では浪速「得」区として、大阪市の未利用地を活用する取り組みが始まっている。淀川区ではLGBTを応援したり。各区独自の取り組みをもっと知りたい。

○テントからから福祉アパートに入居した方は、風呂もエアコンもなしでもいい、屋根さえあれば、という方がいて、古いアパートがそのまま残る。

○登校時は集団で通学するが、下校時はバラバラで帰宅する、防犯カメラがあれば一定の抑止力になる。あいりんだけでなく他の地域にも付けてほしい。

○ホームレス支援の経験からすると、特区はあいりん地域中心のイメージである。それにより周辺の文化と断絶・落差につながるのではないかと思う。畳のある生活になっても、生活歴の問題もあり、ごみ屋敷化することも考えられ、それがどんどん周辺のまちに拡がり、あいりん化する。居酒屋のママもまちが変わってきたといいます。よい意味ではなく、生活保護の普及に合わせて、周辺にそのライフスタイルが波及し、あいりん色になってきたということです。

○昔は西成は悪いニュースばかりだったけど、最近は西成特区構想や音楽ライブなどいいこともよく出ていて、郷土心はくすぐられる。

フォーラムにしなりVol.2本文

レジメ

寺嶋氏 レジメ

寺嶋氏 当日資料1

寺嶋氏 当日資料2

小林氏 当日資料1

小林氏 当日資料2

Vol1 『人口減少問題』を考える

さぁ!はじめよう。
『フォーラムにしなり』

「フォーラムにしなり」が10月3日にはじまりました。呼びかけ人は、小林みちひろ氏(大阪市会議員)、荒木幹雄氏(元大阪府議会議員)、寺本良弘氏(部落解放同盟西成支部長)の3人です。
設立準備号でもお伝えしたように、低成長時代で富の分配を担う政治の役割が大きくなる一方で、なぜだか、くらしと政治の話題がミスマッチしてしまう。○か×では解決しない問題が山ほどある。こんな状況に一石を投じる「現代風の井戸端会議」がフォーラムにしなりです。発題者はいるけど、講師はいない。結論を出すのではなく、それぞれのとらえ方を合意していく。そんな、月に一度のフラットな場を目指します。
第1回は呼びかけ人の荒木さんと飯島さんが「人口減少問題」をテーマに発題し、20人を超えるメンバーがわいわいがやがや語り始めました。その様子を少しお伝えします。当日の資料などはHPをご覧ください。

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