Vol3 「民営化問題」を考える

2つ目の『民』?
「民営化問題」を考えた

第3回の「フォーラムにしなり」は『民営化問題』がテーマです。
大阪市ではバスや地下鉄、上下水道、ゴミ収集・保育所などの民営化が検討されています。議会では否決されましたが、まったなしの財政状況を考えると、民営化がすすみ、サービスの向上と業務の効率化が図れるのであれば、これ以上ないことです。
でも、過度な効率化が進むとサービスの切り捨てが起こるのでは。危機管理体制は大丈夫か。一部の民間企業しか参入できないのでは。という心配があるのも事実です。
そんな話から始まったフォーラムでしたが、「民営化は『民』間企業だけ。市『民』はないの?」はたまた、「公務員の給与の決まりかた」「民営化が進んだときの行政の役割」「過度なダンピングの予防策」「事業の継続性を担保する指定管理者制度のありかた」にまで話が広がりました。

【発題】荒木 幹雄 さん

■なんで民営化?
民営化というのは国や自治体の事業について、民間企業にゆだねるもので、民間委託やPFI、独立行政法人化や指定管理制度などがあります。民営化にするのは、行政では赤字経営で効率が悪い、公務員の給料が高すぎるといった問題があり、一方ではもうかる仕事は民間も参加させよう、競争で住民サービスを充実させようといったことがあります。

■どんな民営化があるの?
今までの民営化の歴史は、明治時代の官営工場の民営化、製鉄会社・炭鉱が払い下げられた例などがあります。
戦後は中曽根内閣の国鉄がJRに、電電公社がNTTに、専売公社がたばこ産業に、最近では小泉内閣の郵政民営化などが代表例です。
最近は国事業の民営化から自治体事業の民営化に焦点が集まってきました。PFI法や構造改革特区法、指定管理者制度の導入や地方独立行政法人法、市場化テスト法など法律も整ってきています。
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事業別に見ますと、都道府県立の病院事業は、医師・看護師の不足、診療報酬の削減、未収金の増加などの問題もあって、行政と切り離して、法人化されたりしています。8年前には府立病院が独立法人化され、5つの病院機構になりました。
公営地下鉄事業は9都市にあります。地下鉄は建設費が巨額に上り、支払利息が収益を圧迫しています。経営状態は3都市ずつに分かれます。黒字は大阪、東京、札幌。利益はあるが支払利息を賄いきれない仙台、横浜、名古屋。純利益が赤字の京都、神戸、福岡。いま民営化を検討しているのは横浜と大阪です。京都は公営の中でリストラと運賃の値上げで、経営健全化に取り組んでいます。
水道事業は、水需要の伸び悩みを受けて料金収入は頭打ち、収益環境は厳しい状況です。明治時代から自治体が原則経営していて、ノウハウを持つ民間企業は少なく、公営から民営に移行した水道事業はありません。ただ、関連業務のアウトソーシング化を実施しているところはあります。

【発題】小林 道弘 さん

■公のしがらみ
公というのは法律でがんじがらめにされていて、やりにくい面があります。その点、民の方が自由にできることがあります。昔は公しかできなかった事業も民間に力が備わってきて、公に替わってできるようになってきた。
また、NPOなどの公益活動の新たな担い手も登場しました。そういった中でサービス向上や財政再建の問題を含め、大阪市では各事業の民営化について議論がされています。

■行政の役割
民営化が検討されているのは、交通・上下水道・ゴミなど大きくは3つです。これらは長らく行政サービスとして位置づいていましたが、私鉄があったり民間廃棄物業者もあったりで、『公』でなければならないのか。それとも『民』でできるのか。といったところを慎重に議論しています。
特に「効率性と公平性のバランス」や「いのちの問題や非常時対応」など財政再建だけではない行政の責務としての視点も持ちながらの検討です。

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■個別の検討状況
まずは、地下鉄とバスですが、11月議会は否決しました。市長の思い付き答弁も含め、少し政治の駆け引きに使われている面が嫌われました。再度民営化案は出てくるでしょうが、いくつかの問題を解決すれば、民営化がすすむでしょう。もう1つ、誤解が多いので整理しますが、地下鉄の1区間180円の値下げは民営化を目指すから安くなったのではありません。消費増税分をそのままにすると一桁の端数が出るので、2区間230円が240円などの便乗値上がり分の調整として、1区間を180円にしたというのが本当のところです。
次に、水道事業です。水道は施設と運営を別にして、運営だけを民間にまかせる方法を提案しています。私は水の民営化については反対です。水はひとの命にかかわる問題です。琵琶湖を水源に持つ近畿各地は、行政組織だからこそ横の連携ができ、琵琶湖になにかあった時にすぐに対応できますが、現時点に民間が参入してもそうはいきません。フランスでは水道の民営化をすすめましたが、水道料金が高くなったりで、再公営化が検討されています。
ゴミ収集の環境局も予定ではもう民営化しているはずでしたが、議会の否決でまだ実現していません。紙などのゴミ収集では民間参入を進める一方、家庭ごみ回収の現場では退職不補充が続いていて、このままではサービスが低下します。はやく結果を出さないといけません。
ただ、オール大阪市が対象のゴミや水道は、都構想の動き次第で民営化を決めても施設の配置状況に矛盾や無駄が起こるので、慎重に検討しているところです。
その他にも福祉施設や幼稚園、卸売市場なども含めて民営化が議論されています。すでに民営化された事業でいえば、病院がすでに独立行政法人になりましたし、施設のほとんどに指定管理者制度が導入されています。
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みんなのこえ

■給与はどうやって決まる?
○交通局や環境局の職員給料は人事院勧告で決めるのはおかしいではないか?
○世の常識は収支のバランスで給料はきまるものだし、交通局の職員と私鉄の職員は何が違うのという意味では、純然たる公務員だとは思えない。
□大きな開発を伴う事業を官としての大阪市が実施した経緯があって、大阪市が経営するわけだから、そこで働く人は『公務員』ということ。またスト権もないので、人事院勧告に準じてきたのだろう。
○でも、人事院は国家公務員の一般職職員の給与について勧告するだけで、ならうかどうかは各自治体の議会判断ではないの?となると、議会が経営を判断することになるが、政策を考える場で適切に判断できる?民間業者が育っている事業で、経営のことを考えるなら民営化の方が適しているのでは?

■官と民。その間には公がある。
□民営化を前提に考えるのは大切。でも困る人も出てくる。例えば「赤バス」や「ゴミのふれあい収集」などの取り組みの継承方法も考えないと。これまでは、「市営」=「官営・公営」と言っていたけど、市場原理の民間企業による「民営」と行政がやらなければならない「官営」の間にあるのが、「公営」とわけて考えて、地域原理の市民参加による「『市民』営」の領域も考えていきたい。
○赤バスも民間企業は参入しないと当たり前のように言われているが、NPOなどの「市民営」ならやるところが出てくるかもしれない。年収500万円ないと無理という人ばかりではないし、福岡市の葬儀屋は自分たちが使っていないときに、社会福祉協議会にバスを無償で貸している。
○民営と官営は分かりやすい。勝手に公営と言っているだけで、本当は特権的イメージのある官営をどうしますかというのが、「民営化」の本質では。
○税収が豊富にある時代ならまだしも、同じ仕事で「官」と「民」の賃金が大きく変わるのは納得できない。

■民営化で地域も豊かに
○安易な民営化は反対。明治時代は最初だけ国にやらせて、大きな民間企業が引き継ぐ形でボロ儲けということもある。いまでは、ハローワークや自治体の就労相談に大手派遣会社が参入していっていて、大きな資本の言いなりはいやだ。
□あるNPOの人が「わたしたちは、公務『民』やねん」と言っていた。「市民営」と同じこと。大きな資本の「民」だけではなく、地域の小さな「民」もある。
○行政だけでサービスやっても官製ワーキングプアが増えるんだったら、民営化で豊かになろうというぐらいの意気込みが欲しい。そうしないと、ダンピングダンピングで恐ろしいことになるかもしれない。お金だけでなく、地域への付加価値をどう評価するか。
○いまでも、民間保育所の若い保育士の給与は安すぎる。そのうえ、これから少子化もあるし、本当に経営が成り立たなくなる可能性もある。
○事業評価にもう少し熱心にならないと、安かろう悪かろうの問題や、数字で見える効率化ばかりを追い求めてしまうと、本来の事業趣旨が忘れ去られてしまう可能性がある。
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■誰のための民営化?
○中曽根内閣時代に国鉄がJRに変わって、一大闘争が起きていたけど、国民は困ったのかな?概ね評価されているのでは。ただ、原発の導入を決めたのもその時で、これは禍根を残している。
○いまの議会は最低。発言者の好き嫌いで賛成反対を決めているのでは。市民を見てる?
○民営化の議論はわかりにくくなっている。たぶん、民意は民営化賛成だと思う。でも、民営化していい部分とダメな部分があるのもわかっている。そこの整理をしっかりすることから始めたらわかりやすい。
○民営化だけでなく、指定管理制度もなんとかならないか、3年でおしまいと言われたら、指定管理者も中長期の視点を持って運営できない。利用者も「明日から指定管理者が変わります。」は困る。継続性を担保できるしくみを考えられないか。
□非常時対応が難しい。東日本大震災の時も直営だからカウンターパート方式で、環境局が活躍できた。災害時に家族をほってでも現場に駆けつけるのが公務員の使命。同じような危機管理が民でも構築できないと、民営化は進みにくい。
○行政の役割を民でも担える契約や評価、権限委譲をしっかり考えないと。
■ゴミはどうなった?
○一般廃棄物のゴミセンターをまずは民営化して、そこから家庭ゴミ収集の民営化という話だったけど、どうなりました?
□ゴミ収集は公務員と民間で賃金が大きく離れているという議論がありますが、いまの「ふれあい収集」「労働者への感染症予防対策」「災害時の対応」「3人体制での収集」などの仕組みを維持するとなった時に、本当に民間並みの賃金で希望者が出るのか。という心配もあります。
○市民からの「安全・安心・信頼」というのは大切なことだけど、それをふまえても、今よりは賃金が安くても希望者が来るのでは。
■これからの行政は?
○極度の民営化がすすむと行政の機能も変わるのでは?
□政策づくりのしごとや、委託業務とかのチェック・コントロール機能に集中するだろう。その時は、議会ももっとスリムになってるだろうけど。
○チェック・コントロール機能ばかり強化したら、何のために民間がやっているのかわからなくなる。創意工夫を導入しやすい民間がやっていることを忘れて、単なる行政サービスの代行業者、下請けに過ぎない形が民営化だったら空恐ろしい。

フォーラムにしなりVol.3本文

レジメ

小林氏 当日資料

荒木氏 当日資料