VOL11「総合区について」

『現状維持』が民意?

5月17日(日)の住民投票の結果、反対:70万票vs賛成:69万票となり1万票の僅差で、大阪市24区を廃止し、5つの特別区に再編することは否決されました。

「シルバーデモクラシー」や「南北問題」など要因を分析するいろんな声はありますが、民意は「大阪市を残そう」でした。ただし、この僅差は「大阪市はこのままではいけない。」という民意の存在を改めて示すものでもありました。

『都構想』に反対する陣営は「大阪都にしなくても、『総合区』を導入すればできる。」と市民に訴えてきました。市長の言葉ではありませんが、改革のバトンが『都構想』から『総合区』に移りました。

約1か月ぶりのフォーラムにしなりでは、『総合区』にスポットをあて、「議会ではどんな話になっているのか」「総合区でやってみたいこと。できること。」をみんなで確認しました。

都構想選挙結果のコピー

【報告】寺本 良弘 さん

■都構想を振り返る

僅差の土俵際で大阪市は残りました。『都構想』は否決されましたが、大阪市が抱える課題は残っています。課題を一言でいえば、「これからの大阪市の自治、地方行政のあり方」です。

この背景には大きく3つの問題があります。1つ目は「大阪市3兆円、大阪府6兆円。あわせて9兆円の借金」、2つ目は「少子高齢化が進む大阪」、3つ目は「夜間人口266万人昼間人口370万人の母都市大阪市のありかた」です。

『都構想』はこれらの解決策の一つとして、府と市の財源を一元化し、大阪府全体で行政を執行し、借金を減らそうとした提案ともいえます。

■対案としての『総合区』?

『都構想』の対案として、『総合区』があると考えていたのですが、なかなかその姿は見えません。

24区で一気に実施するのではなく、「平野・東淀川区、中央・北区などでモデル的に実施して、最終的には11区で実施する。」とも言われていますが、合区することとなれば、都構想と何が違うのか、はっきりとはわかりません。

柳本議員は改革の必要性は認識しながらも、「『総合区』を『特別区』に対しての対案と捉えているわけではない。・・・(中略)・・・我々も現状維持を重んじるわけではないことから現状を転換する方向性として『総合区の活用』を提案しているのだ。」と述べ、『総合区』は『特別区』の対案ではないとも言っています。

このままでは、現状がよくないことはわかっているけど、ふたを開ければ、現状のままということになりかねません。

問題を先送りにしないためにも、『総合区』頼りになるのではなく、今の枠組みでもやれることをしっかりと考えていきたいと思います。

■西成からはじめよう

西成区では2016年に見直される「地域福祉計画」を活用して、地域課題にアプローチしようと話し合いが始まっています。また、西成特区構想で取り組まれてきた「学力向上支援」や「プレイパーク」などいろいろな取り組みが芽生えています。でも、「誰がやるのか」「お金が続くのか」という問題は残っています。行政の財源が潤沢であれば問題ないでしょうが、それはない。

やっぱり、新しい公共や市民協働という発想で官民が手を取り合い、お金をかけずにできる方法を考えることが大切です。

横浜の福祉クラブ生協では、子育て支援ワーカーズコレクティブで子どもの預かり事業を始めていますが、保育所に準ずる要件を満たそうとすると面積や保育士などコストがかかりすぎます。だから、コストを抑えながら提供できる体制とサービスを理解してくれた組合員が利用しています。

西成のプレイパークでも、木から落ちてけがをすることもあるというリスクは残しながら子ども達が元気に遊んでいます。けがをしたらすぐに閉鎖されるブランコよりも、こっちの方が楽しいと思いませんか?

行政任せになると、リスクを全部取り除くためのコストや使い勝手の悪さを利用者が受け入れざるを得ません。だからこそ「リスクとコストを利用者と合意」しながら、いろいろチャレンジしていくことが必要ではないでしょうか。

民は民で頑張って、足らずの部分を行政が応援する。そうした志でがんばれば、少しは大阪市の自治のありかたが見えてくると思います。

福祉クラブ生協

 

【報告】冨田 一幸 さん

■総合区でやってみたいこと

『総合区』の話は議会では、なかなか進みませんが、総合区でやってみたいことを10の理由にまとめてみました。

①公募区長と区政会議で、大阪市はもう「半分総合区」。

②「総合区」は一つの方法で、重要なのは「都市内分権」。

③「西成特区構想」で、西成区は都市内分権の「先行区」。

④「予算提案権」が公募区長で、「予算編成権」が総合区。

⑤「総合区条例」ではなく、「総合区共同提案条例」になる。

⑥リコールもあれば、擁立区民運動もあるのが「総合区長」。

⑦税外収入や互助(非貨幣)で、「ない袖を振る」のが総合区。

⑧福祉は市域では「線」に止まり、区域では「面」になる。

⑨総合区に無料職業紹介所を設置すれば、雇用の「地産地消」。

⑩「エリアマネジメント」で「地域立・地域運営」隣保館ができる。

■大阪市を身近にする

少し、ポイントを整理すると、24区か11区かということでいえば、24区のまま総合区を導入しないと意味がありません。それは「都市内分権」が大切だからです。

いまの大阪市は大きすぎて、教育と福祉が苦手です。周辺の市町村と比べると、差がついています。大きすぎると地域の問題に焦点が当たりにくくなります。たとえば、西成では高齢者がすごい勢いで増えています。でも、特別養護老人ホームの新設は非現実的です。それよりも、市営住宅を準特養的に活用できるように、いまの住まいにサービスをつけるほうが現実的です。そのために大阪市全部の合意を取るのは大変です。西成区の合意であれば、問題意識も共有できるので、実現は可能です。

「西成特区構想」では、バックパッカー向けのゲストハウスをつくろうと『観光のまち』構想が動き始めています。これは、地域を指定して新たな取り組みをすすめる都市内分権の先駆的な取り組みです。

これらを実現するには、自分たちで『ルール=条例』をつくって、『予算を配分』することが必要ですが、議論されている総合区の枠組みでは、実現できるとは明確に書かれていません。これでは、公募区長制度や区政会議が導入されたいまとあまり変わりません。

だからこそ、実質的に総合区が提案した「条例」や区長による「予算編成権」が実現し、住民が推薦した人が「区長」になれるような工夫と知恵が必要です。

また、限られた予算の中で地域を経営するという発想が求められます。それは「地産地消型の労働市場」であったり、地域の互助を育む「民営隣保館」であったり、身近な地域でできることをみんなで出し合いながら、実現させていく仕組みが『総合区』だと思います。

そのためには、「西成区をなくせ・残せ」で仲たがいした区民の仲直りから始めましょう。

 

【報告】小林 道弘 さん

■住民が提案するチャンス

市議会での『総合区』の検討状況はまだまだこれからです。具体的な内容を集めようとしても、各会派とも内容を検討中で、提案できる段階ではないと、資料がありません。急ぐ橋下市長や維新の会とじっくり検討したい自民党・公明党という構図です。

住民投票の結果を考えると、市議会での議論を待つのではなく、住民が提案していくチャンスではないでしょうか。

■総合区の区長

総合区の区長について書かれていることを整理します。総合区の区長は選挙で選ばれるわけではありません。大阪市が特別職の公務員として任命します。任命された区長には、人事権と予算提案権はあるけど、執行する権利は市長や担当局が握っています。簡単に言えば、いまの副市長とよく似た役職です。

この予算提案権が実質的な各区の予算として機能できるような仕組みが大切です。都構想にしたら税収が増えるわけでなかったように、総合区にしても税収が増えるわけではありません。限られた財源のなかで、総合区で提案した予算が、市役所や関係部局に調整された結果、今と変わらないということがおこらないようにしないといけません。

総合区の設置

■地域の提案に権限と予算を

西成特区構想で西成区長は独自の予算をもち、重点事業を実施してきました。2つの大きな柱に「①子育て環境の充実」「②安心・安全に暮らすことができるまちづくり」をあげ、あいりん地域の環境整備や子どもたちの遊び場や学力向上、簡易宿所の改善事業など独自に組んでいます。

この流れを継承し、新しい提案を実現させるためにも、ニューヨークのコミュニティ委員会のような仕組みができないか考えています。ニューヨークは800万人の人口がいますが、59のコミュニティ委員会があります。この委員会が予算を提案したり、住民サービスの評価をしたりしています。

総合区の実現が難航するのであれば、24区のままで現在の区政会議やあいりんまちづくり会議を発展改組し、『西成区コミュニティ委員会(仮称)』をつくれないでしょうか。

『コミュニティ委員会』で、西成の文化活動に寄付を募るプランをつくったり、芦原橋・今宮・新今宮の駅前に広がる未利用地活用計画を作りあげたり、そうした活動を行いながら、大阪市や西成区に提案していくことが、いまできることだと思います。

上からの統治を待つのではなく、下からの自治をつくるためにできることを始めていきましょう。

写真

 

みんなの声

■いまの公募区長制度

○公募区長制度はすでに導入されていて、各区独自の取り組みを進めているけど、なぜだか、批判をしにくい。臣永西成区長は就任した時に、「①生活保護を半分に減らしたい」「②公務の民営化で若者のしごとづくり」「③西成をきれいなまちにしたい」と約束をしたけど、この3つは思うように成果が上がっていない。一方で西成特区構想ではがんばってもいる。でも、まちの人と話をしても、区長の批判や評価はあまり出てこない。

○総合区の区長は区民がリコーできるので評価はできる。でも、自分たちで選ぶことができない。

○総合区長が市役所からのあて職だと、臨場感にかける。やっぱり地域の声で選んで、地域で評価し、区民も選んだ結果を受け入れていかないと、役所任せになってしまう。

○そもそも市役所が区長を選ぶことができるの?地域の声を聴けるのか疑問。結局、声の大きい人の意見を聞いて選ばれた区長になるのでは。

■18歳から選挙

○2016年の参議院議員選挙から18歳も選挙権を持つことになる。これで若者政策に焦点が当たる選挙になればいいけど、若い子はどうやって候補を選ぶんだろう。

○先日、京都で2000人を超える学生が安保関連法案改正への反対デモをした。少しずつ、政治に興味をもつ若者が増えているんだろうが、「政治」「宗教」「プロ野球」の話題は初対面では避けるべきといった風潮もあるなかで、若い子は政治に触れる機会はあるんだろうか。

フォーラムにしなりチケット

フォーラム西成_Vol.11本文

小林道弘氏_資料