VOL14「隣保館について」

スマイルゆ~とあい

いよいよ12月、にしなり隣保館「スマイルゆ~とあい」がスタートです。コンセプトは『民設民営互助型の隣保館』です。

隣保館は同和対策として全国にひろがり、公設公営か公設民営(指定管理者等)の運営形態がほとんどです。民設民営の隣保館を名乗る施設はおそらく全国初です。

スタートまで残すところ2か月となった今回のフォーラムにしなりでは「スマイルゆ~とあい」で何をするの?なぜ必要?などなど地域のみなさんの声にお応えしようと、寺本さんと西田さんに登場いただきました。

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【報告】寺本 良弘 さん

■さようなら。市民交流センター

部落差別の解消が「国民的な課題」であり、「国の責務である」とされた1965年の同和対策審議会答申から50年です。

西成では同和対策として1970年に隣保館である解放会館、74年に老人福祉センター延寿荘、81年に青少年会館が建設されましたが、2010年に3館が統合され、現在の市民交流センターになりました。そのセンターも来年3月に閉館し、公設置の施設はなくなります。

もともと特別法に基づく同和対策は2002年に終わっていますが、法が終わっても同和問題が解決したわけではなく、一般施策を活用した事業で解決を図ろうと大阪市と協議を続けてきましたが、2006年の飛鳥会事件で風向きはがらっと変わりました。

関市長・平松市長時代には同和施策35億円の見直しがなされ、3館統合の末に市民交流センターが誕生しました。そして2011年に橋下市長が誕生し、市民交流センターそのものも廃止されることになりました。

■大阪市に隣保館はいらない?

そもそも隣保館は、第二種社会福祉事業に位置づく、特定地域に偏在する貧困や生活困窮、社会的課題を総合的に解決するためのコミュニティセンターです。

西成に集中する貧困や生活困窮の問題はまだまだ残っていますが、大阪市は「特定の人のための『隣保館』はいらない、阿波座の『大阪市人権啓発・相談センター』の啓発・相談事業の実施で充分。」としています。特定地域に偏在する問題に対して、当該住民の生活改善や向上を図るのが、隣保事業です。でも、大阪市が実施する隣保事業は地域や地元をもっていません。不思議な話で、あほな話ですが、結論的には大阪市は隣保事業をしない・していないということです。

高齢者や子どもの集いの場であり、識字教室などの学びの場であり、悩みごと相談の場である隣保館はこのまちに必要です。

■自ら実践する隣保館

隣保館はいらないという姿勢を変えない大阪市に対して、しっかりと物を言うことも大切ですが、そんなことを言っている間に市民交流センターはなくなり、地域の集いの場はなくなってしまいます。それなら、自分たちでやる・集まる場をつくろうと今回のにしなり隣保館「スマイルゆ~とあい」を実践することにしました。

でも、民設民営で隣保館を名乗るのは日本初で、その時に大阪はこの事業をどう捉えるのでしょう。勝手に民間がやっていることと位置付けて知らんぷりをされると困ります。民設民営でも公益性の高い事業や取り組みとして、行政的な認知をしてもらえるように、しっかりと交渉していきます。

すでに運営団体である(一社)ヒューマンライツ教育財団の公益事業として、大阪府は隣保館事業を認めました。民設民営は公益性が低くて、公設公営は公益性が高いというおかしな話とは闘っていきます。

■地域の互助でやっていく

「スマイルゆ~とあい」の入るパークコートの建設費は約11億円にもなります。安くありません。そして、そのほとんどが借金です。運動から生まれた3つの組織が力を寄せ合い、40年をかけて借金を返していきます。

建物のオーナーは株式会社ナイスです。3階はインターナショナルプレスクールを運営する事業者に賃貸します。1~2階は隣保館で、運営するのは教育財団。4~6階はサービス付き高齢者住宅で、運営するのはヒューマンライツ福祉協会です。当然、それぞれの事業所が家賃を支払って運営していきます。

でも、松田喜一さんが目に余る衛生環境の悪さを改善しようと呼びかけ誕生した文化温泉をもう一度思い出してください。文化温泉は地域のみんなの力で建設されました。地域のみんなの力で運営費も出し合いました。

現代版の文化温泉として、隣保館を使ってください。利用料はかかりますが、お風呂の入浴料と一緒です。目に見える問題だけではなく、目に見えない孤立や孤独という大きな課題を克服するために、隣保館でまちをよくする基盤をつくりましょう。

「スマイルゆ~とあい」という愛称も公募でいただいた意見を合わせて決めました。「みんなのためにみんなでやる」互助型の隣保館を一緒につくっていきましょう。

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【報告】西田 吉志 さん

■支部の立ち位置

「スマイルゆ~とあい」を運営するのは教育財団ですが、実質的には西成支部が応援をすることになります。西成には「福祉・医療=社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会」「起業・雇用=株式会社ナイス」とまちづくりを進める2つの法人があります。そのなかで、支部の役割はなんなのかと考えてみました。

一番に思い浮かぶのは選挙です。運動体として、地域住民の声を行政に届け、地域を改善していく。これは大切なことですが、法に裏付けられた同和対策のあった時代と今では全然違います。極論を言えば、「運動をして声を上げても、行政は動かない。」「声を上げてもしょうがない。」「本当に支部は必要なのか?」となってしまいがちです。

でも、支部がなくなったら何に困るか?と考えるとまだまだ捨てたものではありません。

①差別など人権問題が起こった時に相談できる支部。

②市営住宅のトラブルを相談できる支部。

③奨学金など他ではできない相談を引き受ける支部。

④地域の子育てや教育を考える支部。

など、実は支部がなくなるといろんなことに困りはじめます。でも、支部の役割がわかりにくい時代になったことは事実です。だからこそ、隣保館で何をしたいか考えました。

■隣保館のコンセプト

コンセプトを言葉で表すと、

『居場所(拠点)をつくるとともに、つながり(交流)をつくる。その中で人を育てる(支援)。育った人たちが新たに事業をつくる(出番)。隣保館は、そのすべての「核」になります。』です。

隣保館で実現したいことは3つです。①居場所づくり。②つながりづくり。③出番づくり。これら3つの拠点となり、活動を通じて、これからの支部を担う「人」を育てていきたい。次を担う若者を育てないと組織は続きません。

■実際に何をする?

隣保館のメイン事業の1つは出会い・集いの場としてのコミュニティカフェの運営です。1階のガラス張りスペースでたモーニングもランチもやって、誰もがふらっと立ち寄ってコーヒーを飲めるおしゃれなカフェを目指していきます。

ただのカフェをするのでなく、相談と支援にも力を入れていきます。解放会館には総合生活相談がありましたが、市民交流センターでは相談機能を十分に果たせていません。相談機能が弱いとしんどい事情を抱えた住民さんはなかなか利用してくれないし、つながることができません。相談や支援があって、つながってこその居場所ということを大切にして、アウトリーチもしっかりとやっていきます。

そして、子どもや若者への支援もしっかりとやっていきます。いま市民交流センターでは様々な事業にエントリーし、「マナビバ!」という不登校や中退した若者の居場所事業をやっていますし、「子ども食堂」や「子ども楽塾」という事業もやっています。子どもを通じていろんな事業でいろんな人とつながっていこうと考えています。

また、2階では貸館や講座をやっていきます。カラオケやバンドの練習ができるスタジオもあります。いろんな趣味でいろんなサークルをつくって活動をする拠点として利用してもらえます。

講座では地域の皆さんの特技を見つけて講師をしてもらったり、ボランティアマイレージ制度を活用してカフェを手伝ってもらったり、サービスを提供する側と受ける側を行ったり来たりできるようにし、出番づくりをしていきます。

■最後の難題「お金」

ここまでは素敵な話ばかりですが、ここからは持続可能にするために避けて通れない「お金」の話です。

先ほども言ったように、隣保館の場所代がかかります。会費制度で月会員2000円、1日会員200円程度と考えていますが、仮に500人の月会員と見込んでも月100万円の会費収入だけでは、運営費や場所代はまかないきれません。貸館や講座、他のメニューで充分な収入を得ることができるのか、オープンぎりぎりまで検討していきます。みんなのためにみんなで持続可能な料金体系を設計したいので、またご意見ください。

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【みんなの声】

■まちづくりの再定義が必要?

○隣保館といえば昔は地域の集合・結集を目指すまちづくりの拠点というイメージだったが、「スマイルゆ~とあい」は新しい隣保館像を目指しているように聞こえた。

○新しい像を作るときに大切なのは、地域や住民が何を求めているのかということだと思う。もう一度、声に耳を傾け、まちづくりそのものを再定義するぐらいの時期が来たかもしれないが、どう考えますか?

□これまでやってきたこと。これからやろうとしていること。これをしっかり発信しないと何も始まらない。知ってもらって始めていろんな人の声や希望が集まってくる。だから、情報発信は大切にしていきたい。

□かつては地域の要求や声をまとめて運動を作ってきた。そして、地域の課題や問題がわかりやすかったと思う。たとえば、住まいの問題には、公営住宅の建設運動につなげていけたし、教育では教科書を買ってやれない世帯があれば、教科書無償化運動へと地域の声を集めることができた。でも、いまはみんなが何を求めているのか多様になっている。択一化できるほどの大きな欲求はほぼ満たされ、小さな欲求や声にこたえる時代がやってきたのだと思う。

□小さな声を集めるためには、みんなに話してもらえる場、つまりは隣保館的な場が、過去にもまして必要になっている。

■支部は住宅住民にこだわる

○隣保館ではいろんな事をするのはわかったけど、隣保館の一丁目一番地はどこですか?

□市営住宅の住民さんにこだわりたい。かつては、支部が住民さんとしっかりつながっていた。地域で何かをやる時は住民総出で参加してくれた。でも今は食事会をやっても、無償学習塾をやっても出てこない。もう一度、つながれる取り組みを隣保館でやっていきたい。

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