VOL15「どうなる?大阪市」

西成はトリプル選挙

都構想が否決された5月17日の住民投票から、およそ半年が経ちました。その間、大阪戦略会議は3度開催されましたが、途中で頓挫。橋下市長は政界引退宣言後も日本維新の党と大阪維新の会のゴタゴタの主役を演じています。

そんな中、11月22日(日)にはトリプル選挙を迎えます。大阪府知事選・大阪市長選・西成区補欠選挙(大阪市議)の3つです。

市長選は大阪市議の柳本あきら氏が無所属で、元衆議院議員の吉村洋文氏が大阪維新の会で立候補。府知事選は、元大阪府議のくりはら貴子氏が無所属で、現職の松井一郎氏が大阪維新の会で立候補。いずれも「反維新か維新」という事実上の一騎打ちです。

しかし、都構想は一度否決されたはずだし、それぞれの候補が何を主張しているのか知らないし、わからない。そんな声にお応えして、前大阪市議の小林道弘氏に、今回の選挙の争点を教えてもらいました。

 

【報告】小林 道弘  さん

■さようなら。市民交流センター

■住民投票のあと

1万票あまりの僅差で都構想が否決された住民投票も終わり、二重行政解消や大阪発展の戦略を練る場として「大阪戦略会議(以下大阪会議)」が開かれたのはご存知ですか?

この会議は、自民党を中心とする都構想の反対派が提案し、大阪府・大阪市・堺市の首長と議員が集まって議論しようというものでした。

でも、最初からボタンのかけ違いがありました。橋下市長は「大阪会議は大阪都構想の対案でなければ意味はない」と言うし、自民党は「大阪会議は大阪都構想の対案ではない」と言い、会議は3回で紛糾して、4回目は開催されていません。

これは維新の会の戦略とする見方もあります。自民党をはじめとする都構想反対派の推進する大阪会議では改革が一向に進まない。大阪を改革・発展させることができるのは、維新の会であり都構想だというイメージを印象付けるために、議論をすすめないという戦略です。

簡単に言えば、住民投票から半年も経つのに、何も決まらない。何も変わらない。だから、大阪会議はダメ。改革を望むなら、知事選市長選は維新の候補に投票しようということです。

151026-1

 

■維新だけで改革ができた?

では、維新だけが改革をしてきたのかというとそうではありません。大阪交通局の民営化や西成特区構想、公募校長制度など、橋下市長が改革に着手したことは確かですが、民営化はまだ実現していません。

一方で大阪市の中学校給食の導入は、関市長・平松市長が進めてきた改革です。たまたま実現した時に橋下氏が市長をしていたにすぎません。他にも市有地の売却など、橋下市長の功績に見えているだけで、これまでの改革の積み重ねがあり実現したものもけっこうあります。

そして、維新の党とおおさか維新の会のゴタゴタは見るに堪えません。政党助成金6億円という大きなお金が絡む話ではありますが、橋下市長お得意の敵をつくって、罵倒するパターンです。

ツイッターで自分がつくった維新の党の議員を『バカども』呼ばわりしたり、維新の党は『百害あって一利なし』とつぶやいたり、故意に下品な言葉を使っているように見えます。

あえて、品格のない橋下市長を演じて、品格のある吉村候補を演出して、市長選で当選させる戦略だろうという噂もあるぐらいです。

■今回の選挙の争点

では、11月22日の市長選の争点を各候補の主張から少し整理します。

柳本候補は、都構想は終わったものと捉え、争点とはしていません。その上で「まずは経済を強く。都市を強く」と主張します。一方で吉村候補は「過去に戻すか。前に進めるか」と橋下市政の継承と都構想の継続を訴えています。

余談ですが、都構想は住民投票で否決されました。もし仮にこの選挙の後に、もう一度「大阪都」をつくることになれば、また住民投票を行うことになります。つまり、前回同様の費用として税金が使われるのです。また、今回の選挙で都構想の是非を争点にすると法律違反の可能性もあるという専門家もいます。だから、維新の会も表立って「都構想をもう一度」とは言っていません。

次に、各候補の政策をみてみましょう。①リニア新幹線の大阪までの開通、②カジノを含む総合型リゾート(IR)の建設、③交通局の民営化、④学校長の公募制、これらの政策について吉村候補は「賛成・積極的な推進」に対して、柳本候補は「慎重に検討」と真っ向からの反対を避けています。

はっきり言って、ここまでは大きな違いはありません。ただ、市営バスの「敬老パス」の対応は異なります。吉村候補は現状維持で、柳本候補は乗車ごとの50円負担を廃止し、高齢者の外出を促していきたいと言っています。

また、柳本候補は住民投票で大阪市24区の5区分割の対案として期待されている「総合区」については、西成区と中央区で先行導入することを表明していますが、詳しい内容はまだわかりません。

と、両候補とも大阪市の改革をすすめていく政策に大きな違いはありません。ただ、慎重で調和型の柳本候補と橋下市長のように独断専行型を継承する吉村候補と、政治に取り組む姿勢にはちがいがあるようです。

151026-2

■結果はどうなるか?

政策には大きな違いがない中で、結果を予想してみましょう。世論調査では、柳本候補が若干優勢でしたが、3割の有権者がまだ投票先を決めかねています。

3割の有権者の投票行動を予想する材料に橋下市政への評価を聞いたアンケートがあります。「大いに評価する」29%。「多少は評価する」43%。合わせて7割以上の市民が評価をしています。これは驚異的な数字です。手法には問題があったとしても、これだけの人が評価した市長はかつていません。

また、松井候補の知名度が高いために、市長選が知事選に引きずられる傾向が予想されます。「松井候補に入れたから、吉村候補にも」という心理が働くのではないか。

「反対派、優位」という前評判でしたが、大接戦だった住民投票の結果と同様に、このままだと柳本氏の大苦戦は必至だと思います。

当然、自民党市議団はそれぞれの地盤でがんばるとしても、維新も相当に気合の入った選挙戦を展開しています。トリプル選のある西成区には、連日チラシが入っていますし。

同じ西成選挙区で戦ってきた柳本候補の人柄や政策を、僕は評価しています。柳本候補にはぜひその個性を前面に出してほしい。西成から市長を輩出したい。できることは限られていますが、僕は柳本候補を応援します。部落差別の解消が「国民的な課題」であり、「国の責務である」とされた1965年の同和対策審議会答申から50年です。

西成では同和対策として1970年に隣保館である解放会館、74年に老人福祉センター延寿荘、81年に青少年会館が建設されましたが、2010年に3館が統合され、現在の市民交流センターになりました。そのセンターも来年3月に閉館し、公設置の施設はなくなります。

もともと特別法に基づく同和対策は2002年に終わっていますが、法が終わっても同和問題が解決したわけではなく、一般施策を活用した事業で解決を図ろうと大阪市と協議を続けてきましたが、2006年の飛鳥会事件で風向きはがらっと変わりました。

関市長・平松市長時代には同和施策35億円の見直しがなされ、3館統合の末に市民交流センターが誕生しました。そして2011年に橋下市長が誕生し、市民交流センターそのものも廃止されることになりました。

151026-3

 

【みんなの声】

■敬老パスの復活

○政策の違いとして、敬老パスの復活はわかりやすいけど、すでに変えたものを元に戻すのはなぜ?

□敬老パスはかつて80億円の税金が市民局から交通局に支払われていました。顔写真が入っていない時代は、敬老パスの売買が疑われるケースもありました。だから、パスの発行費用3000円、1度の乗車につき50円と改革したのは評価できます。言葉は悪いですが、高齢者へのリップサービスだと思います。ただ、50円の負担を解消することで、元気高齢者の外出が増えて、消費も増えるのであれば、一考すべき価値があると思います。

■リニア新幹線

○両候補とも「リニア新幹線を大阪に」と言っているけど、本当に実現するの?また、それだけ大事な政策ですか?

□リニア新幹線は国会での議論が必要な案件で、大阪だけで解決できる問題ではありません。また、リニア新幹線の電磁波問題もあるので、今回の選挙の大きな争点ではないと思います。ただ、維新の副首都構想では、リニア新幹線の開通は時間距離の観点で必須事項です。「そのためには府・市の統合が必要」と主張するための戦略だと思います。

■なんでダブル選挙?

○知事選・市長選はこれまで別日程で実施されてきて、大阪市のことは市長選、大阪府のことは知事選と別に考えることができた。いまでは当たり前のように、同日選挙になった。これはええこと?

□「知事と市長の言い分が違うことこそが二重行政の象徴。だから、知事と市長は同じ主張をしている候補を選びましょう」という、橋下市長の戦略かもしれません。実際、橋下知事・平松市長時代はそこを争点に選挙をしました。

□今回の知事選・市長選は無所属とは言え、自民党出身の柳本候補・くりはら候補であり、自民VS維新という構図になっています。「二重行政をなくすには、市長・知事も同じ主張している方が良い」となれば、松井候補の圧倒的な知名度が、市長選にも影響すると思います。

□また、忘れてはいけないのが自民党支持者の4割が都構想に賛成していたということです。反都構想・反維新で結集したつもりでも、政党の対立という構図ばかりが目立てば、相当厳しいと思います。やっぱり、争点となる政策がないとアカン。

■総合区はどこにいった?

○〝near is better〟(行政サービスは住民に近いところで)は総合区でもできると言っていたけど、実際に西成区が総合区になったら何ができる?

○また、総合区になったとしても、区役所独自に事業を考えることはできるの?

□思い出す意味も込めて整理すると、都構想は市を5区に分割し、東京都のように各区に権限を持たせるという内容でした。一方で総合区は、24区のまま各区の権限を増やして、24区が地域特性に応じた運営をしていくための仕組みです。

□橋下市長は各区長の権限を増やし、区で決裁できる予算をつけたと言っていましたが、実は財布の紐は大阪市本庁の各部局が握っていました。各区がこんなことをやりたいといっても、予算は70%になって帰ってくるような状況でした。

□でも、総合区になると各区に本当の予算権限がつきます。やりたいこと・やれないことを各区で決められます。たとえば、福祉を地域経済の活性化につなげるために、地域クーポン券の導入が考えられるかもしれません。

□区独自の事業ができるという点は、総合区の大きな魅力ですが、区役所職員のほとんどは、事務方です。事務能力は高いですが、政策立案は難しいでしょう。だからこそ、地元住民からの提案が大事だと思います。

□たとえば、西成北西部でも今宮小中一貫校のような取組も考えられます。統廃合が議論されている長橋小学校は172人、北津守小学校は92人、鶴見橋中学校は172人です。単に小学校を統廃合するだけでなく、そこに提案して、新しいものをつくれるのが総合区だと思います。

□また、地域で決められるようにするには、米国のコミュニティ会議のように、現在の区政会議に財源・決定権を与えたり、メンバーを選挙で選んだり、とその仕組みも考えないといけません。

□各区の政策立案力を高めるには、市議会議員のもつ政務調査費の活用も考えられます。最近では、政務調査費がレクサスの購入に使われていたことも判明しました。政務調査費は市民からするとわかりにくい。西成区の政策を考えるという目的のために、各議員が共同して政務調査費を拠出し、政策立案予算をたてるというのも、おもしろいかもしれません。そうすれば、調査費の透明性も各区の政策立案力も高まるでしょう。

151026-4

151026-5

 

フォーラムにしなりVol.15

小林氏 当日資料 大阪府知事・市長選挙について