vol21「人権に関する差別禁止法の課題について」

  はじめに

現在、国会では様々な人権に関する法案が審議されています。まず今年4月には障害者差別解消法が施行され、5月24日にはヘイトスピーチに関する規制の法律が参議院可決後、衆議院本会議で可決しました。そして、LGBT(ここでは「性の多様性」と理解します)対策法や部落差別解消に向けた法案の審議も継続して行われています。
昨今になって人権に関する法案が数多く審議されるようになった背景には次の三つが考えられます。①2020年のオリンピック/パラリンピックの東京開催。これらのイベントには、世界各国から民族・国籍・宗教
・文化・価値観などの多様な背景を持った外国人が大勢やってきます。人びとの多様性を理解し尊重し共有できるよう差別を許さない姿勢を育むには、人権に関する法整備が必要というわけです。
②日本政府・社会に対して国際社会から人権に関する警告がなされています。2014年、日本政府は国連からヘイトスピーチを法律で規制するよう勧告されたものの、日本政府は積極的に動きませんでした。その後、ヘイトスピーチ活動はエスカレートし、とうとう今回規制法の制定となりました。
③法務省の平成28年度啓発活動年間強調事項17項目(その対象は女性、子ども、高齢者、障害者、被差別部落民、アイヌ民族、外国人、HIV感染者やハンセン病患者、刑余者、犯罪被害者とその家族、ホームレス、性同一性障害、東日本大震災被災者など)の実践が求められています。
このような背景から最近、国会での人権に関する審議が多くなり、私たちの学習を重ね考えていきたいと思います。

1.部落差別解消法について

寺本良弘 解放同盟西成支部支部長

 今回の部落差別解消に向けた法案は自民党から提出されました。二階俊博自民党総務会長が議員立法で提案を行うために相当の努力をされたそうです。私たちとしては、部落差別をなくすための法律ができるのは大歓迎です。今回の法案の目的には「基本的人権の享有を保障
する日本国憲法の理念にのっとり、部落差別は許されない」とあり、「国や地方公共団体は部落差別解消に関する施策を講ずること」とその責務が明記されていますが、罰則規定は設けられておりません。つまり、全体として理念法的になっており、解決すべき課題が多くあります。しかし一番大きなことは、ようやく日本の政治が部落差別の存在を認めたことだと思います。
今後の課題として、①部落差別に関する実態調査が必要になりますが、これは当事者が中心となって行うべきであり、隣保館を中心に調査しなければならないと思っています。また②法律成立後も差別を禁止する十分な法律にするための運動が引き続き必要です。(なお、2016年6月1日現在でこの法案は継続審議となっています。)

2.ヘイトスピーチ規制

小林道弘 前大阪市会議員

 ヘイトスピーチを規制する法律が、5月12日の参議院法務委員会で可決、5月24日に衆議院で成立しました。
このヘイトスピ―チの問題は最近各地で相次いで起こっています。日章旗(日の丸)や旭日旗を掲げ、特に在日コリアンを狙い撃ちにしたヘイトスピーチ「朝鮮人のゴミを退治する」「朝鮮人を殺せ」「朝鮮人は一人残らず殺せ」などと大きな声を上げてデモを行い威圧しています。法務省の調べによると、全国のヘイトデモ・街宣活動は2012 年4 月~2015 年9 月までで1152件ありました。これらの行為は、在日の子どもたちも心に傷を受けるなど深刻な人権侵害の大きな社会問題となっています。
国連の人種差別撤廃委員会は2014 年にすでに日本政府に対しヘイトスピーチを法律で規制するよう勧告していましたが、日本政府は積極的に取り組む姿勢を見せてきませんでした。一向に収まる気配を見せないヘイトスピーチ行動に、行政や司法もようやく対処するようになりました。
京都市の朝鮮学校の前でヘイトスピーチを行った男らが威力業務妨害で逮捕され有罪判決が確定したり、民事訴訟でも一昨年、ヘイトスピーチを行った団体側に対し1200 万円の賠償を命じる判決が確定し
たりしています。今年3 月には川崎でヘイトスピーチに反対する男性にけがをさせた右翼団体の男ら4 人が逮捕されています。なお大阪市でも条例が制定されています。被害者救済のための裁判費用支援が大
きな目玉でしたが、条例の全会派一致が優先され実現しませんでした。いずれにしても、今回のヘイトスピーチ規制法の制定は、こうした流れを汲んだものと思われます。
今後はヘイトスピーチの保護対象が課題になります。今回の規制法では、アイヌや被差別部落住民が対象にならない可能性が懸念されます。また、適法でない外国人居住者も対象外に置かれます。これらについては付帯決議などで適切に対処するという修正を行いました。
また、この法律も救済処置や罰則規定のない理念法なので、今後のヘイトスピーチ根絶・差別撤廃に向けたスタート地点として考える必要があります。

3.LGBT関連

西田吉志ワークあい代表理事

 LGBT について差別をなくす動きが活発になったのは、今年2月くらいからでまだまだスタートラインにたったところです。成立まではまだ少し時間がかかる可能性があります。まず、LGBT とはlesbian レズビアン・gay ゲイ・bisexual バイセクシャル・transgenderトランスジェンダーの頭文字です。その人口は日本の全人口の約7%で840 万人といわれています。
多くの人はいじめや言葉の暴力にあっていて、就職などにも大きく影響しています。面接などでカミングアウトすると採用されなかったり、就職しても差別やいじめに合ったり、うつになって自死する人もいます。
このような厳しい実態にもかかわらず日本での法整備はあまり進んでいません。海外ではLGBT に対する差別を禁止する法律があり、台湾では法案が教科書に載っています。また、同性婚は20 数カ国で認めら
れています。日本でもようやく東京都の多摩市で条例ができたり、大阪市淀川区ではLGBT に対する支援を宣言したりしています。最も新しいのが東京都渋谷区の「男女平等及び多様性を尊重する社会を推進す
る条例」です。
法整備に向け2016 年2 月自民党の中で委員会が設けられ、議論が進められています。そこでは、カミングアウトができず、1人で悩んでいる人の支援に注力する一方で、差別に対する罰則などが設けられて
いません。
LGBT の課題は、たとえば同性婚をしても生活をしていく上での保証が一切ない、などの問題が多くあり、戦争法と同じく憲法論も視野に入れて考えなくてはいけません。

4.障害者差別関連

岡田光司 西成障害者会館職員

 障害者差別解消法が4 月1 日から大阪市で施行されましたが、まずは法律を作る経緯について考えてみましょう。これまで障害者のための法律は障害のない人たちが作ってきました。しかしそのことに疑問を感
じた当事者たちは「私たち抜きに私たちのことを決めないで」という大きなスローガンを掲げ、全世界の当事者が参加して障害者権利条約を制定しました。日本もこの条約に署名し、国内の障害者のための法律も自分たちが参加して作っていこうという機運が生まれました。そして、民主党政権下で障害者基本法が改正され、共生社会の実現や障害のある人の日常生活を支援し、障害を理由とする差別を禁止する法律として4月から施行されたのです。
障害者雇用促進法では、障害者を雇用で差別してはいけないということや、職場で働きやすい状況になっているかなどをチェックします。今回の障害者差別解消法では、大阪市役所や西成区役所に相談窓口が出来ました。障害者が差別を受けた時に相談できる身近な窓口が設置され、合理的な配慮がなされやすい環境が整いました。しかし、罰則規定がなくあやふやな部分もあります。
障害者の権利条約には障害者を優遇する特権が与えられているのではないか、ということがよく言われますが、決してそうではありません。今後は、障害者が当たり前のように地域で暮らせる生活のしかたや仕組みなどについて議論をしていく必要があると思います。

5.ハンセン病関連

寺嶋公典 部落解放同盟西成支部書記長

 ハンセン病の問題は、感染力が弱く簡単には伝染しないというのが世界的な常識ですが、日本では「らい予防法」の改正が20年前におこなわれ、またこの法律の違憲性を指摘した熊本地裁判決から15年経った今でも多くの問題を抱えています。
近年、ハンセン病をめぐる大きな出来事が三つありました。①日本が戦前に韓国・台湾に設置したハンセン病療養所に収容されていた被害者に対する賠償問題の全面解決、②隔離施設の中で裁判を行っていた「特別法廷」の問題について最高裁判所が過ちを認めたこと、③ハンセン病患者の家族も差別を受けていたとして損害保障を求める家族訴訟が提訴されたことです。
今回は、特に③家族訴訟について説明します。この訴訟は2月25日と3月29日にハンセン病患者の家族など568人の原告によって熊本地方裁判所に提訴されました。当事者本人はもちろん、結婚や就職、人間関係で差別を受け苦労したが、実はその家族も同じように家族の中にハンセン病患者がいるというだけで差別を受け苦しんでいたのです。家族間の亀裂も深刻な問題でした。
家族訴訟を後押ししたのは、ハンセン病患者を隔離する「無らい県運動」の研究や「れんげ草の会」という家族会の情報交換などから当事者の家族が差別・排除されていた実態が解明されたこと、また2015年鳥取訴訟で家族にも被害があると認められたことです。家族訴訟の目的は第一に、家族自身の被害からの解放および元患者と家族との絆の回復です。そのために、訴訟は国に対して全国紙での謝罪広告と慰謝料の支払いを求め、家族被害に対する責任も問うています。
家族訴訟には独特の課題もあります。それは原告の大半が氏名や素顔を明らかにできないことです。このことは現在もハンセン病に対する差別偏見が根強く残っている実態をあらわしており、この解決を見ないとハンセン病の最終的な解決はあり得ません。

フォーラムの声

当日会場でいただいた皆さまのご意見です。

【60 歳代・男性】

 現在の国会の状況を考えると自民党一党だけが強い状況にある。このような状況なら人権法案は通る。その人権の法律を作る際のチェック
ポイントは、①その法律の作成時にどれだけ当事者の意見が反映されているかということ。②謝罪があるのか。差別をなくすということは差別
があったことを前提にするのだから、謝罪が必要です。これがないと法律は不十分で、救済の内容がなく無益な法律になってしまう。

【寺本支部長】

 部落差別解消の法律で考えると、同和対策審議会答申などで当事者の意見はある程度反映されたと思うが、今回の法律でそれが十分かと言われたらそうではない部分もあると思います。

【60 歳代・男性】

 今後運動団体が要求すべきことは、今の若い人たちや子どもたちが部落差別を受ける可能性があるという当事者調査でしょう。

【小林】

 今後国会でいろいろな人権に関する法案が審議されていく背景には、1995年に日本が人種差別撤廃条約を批准して、国内の人権の法整備を行うよう勧告されていることもあります。

【60 歳代・男性】

 外国人が多く来日するオリンピックも大きな要因ですね。また、今回の法律ができたことにより救済の法律ができないとも考えられる。

【小林】

 たしかに今回の法律はすべて理念的であり、規制とか救済とかに発展させていけるかどうかが今後の課題です。

【80 歳代・男性】

 今日の報告によると、いずれも罰則規定がないので実効性に乏しい気がする。これと関わって今後の運動の進め方を検討する必要があると思う。また、沖縄でのデモ行動もヘイトになるという意見もあるように報道関係者への対応も必要ではないか。

【小林】

 今日の人権のテーマは今の政府の動きと連動して考える必要があります。つまり政府与党はどんな大きな流れの中で人権の法律を出してきたのかということ。人権の法律の代わりに厳しい施策がある。例えば戦争法案であったり消費税であったりと、こういうことをしっかり見抜くことも必要です。

次回のご案内

第2 2 回フォーラムにしなり

6 月2 2 日( 水)午後6 時3 0 分~

vol20「教育の無償化を考える」

4月20日(水)午後6時30分より第20回「フォーラムにしなり」を開催しました。今回のテーマは「教育の無償化を考える」です。わたくし小林みちひろ(前大阪市会議員)より話題提供し、ご参加いただいた皆さんと意見交換しました。

教育の無償化を考える

前大阪市会議員 小林みちひろ

1.「世界人権宣言」すべての人に教育を受ける権利がある

 世界人権宣言は、すべての人は教育を受ける権利をもっており、初等教育は無償である、と宣言しています。しかし、世界では7500万人の子どもが学校に通えず、7億7600万人の成人が読み書きできないと言われています。その多くは、アフリカ・アジアの一部の地域の人びとや女性です。
一読み書きができないと、必要な情報を手に入れることができず、社会的な不利益を被り権利が大幅に制限されます。貧しい国では教育予算がなく、子どもに労働を強いたり戦争に行かせたりすることもあります。識字率の向上により子どもの死亡率も貧困率も低くなっていきます。ノーベル平和賞マララさんも言うように、「戦争も教育でなくすことができる」のです。

2.教育費の負担が少子化の要因の一つに

 日本の子どもの出生率は年々低下し、現在、一人の女性が一生のうちに出産する子どもの平均数は1.43人であり、二人を産むことはありません。いよいよ少子高齢化の時代になってきました。その要因は複合的ですが、その大きな要因のひとつに、家庭における教育費の負担が大きいことがあります。現状では子育てや教育にお金がかかりすぎるのです。

3.格差解消に向けて教育の無償化を

 よって、家計に対する子育て・教育の経済的負担の軽減が重要です。そのために必要になってくるのが、①幼児教育の無償化、②高等教育費の負担軽減、③奨学金の充実、④経済的に困窮する家庭の子どもに対する教育支援などの施策が必要です。
これらの施策によって拡大する経済格差の中で教育の機会均等を図り、さらに、保護者の経済的・教育的環境に関わらず、子どもらの等しく教育を受ける権利を守るには、教育の無償化が大事です。

4.教育に係る費用は1 人1,000 万円以上

 一般的に「子どもにかかる教育費は、1人1,000万円以上」といわれていますが、下記の調査結果でも多額の費用がかかることを示しています。

5.教育の無償化を実現するために

①「義務教育と関連して、教育内容のどこまでを無償化にするのか」
憲法第26条により「すべて国民はひとしく教育をうける権利があり教育を受けさせる義務を負う」ことから、「義務教育は無償」となっています。しかしその範囲は規定されていないので、教育基本法により無償の範囲は授業料に限られています。給食費や修学旅行費、遠足や郊外活動費、補助教材費などは保護者負担のままです。
②「どの学校までを無償化・義務教育にするのか」
現在、高校・大学は義務教育ではありません。しかし、高校進学率は全国で97%を超え(文部科学省発表)、大学・短大進学率は現役で3.9%(文部科学省平成26年度学校基本調査)となっています。無償化と義務教育はセットです。ただし、大学教育の無償化には5兆円以上かかるという試算も出ています。その原資は税金で賄われるため、実行するために増税の可能性も出てきます。
③「大学奨学金制度をどう考えるか」
不況や就職難で奨学金が返済できずに厳しい取り立てを受けたり、自己破産したりする若者が急増するなど、奨学金の返済に関する問題は年々深刻化しています。結婚や就職にも大きな影響を及ぼし、大学卒業後の生活も厳しくなっています。そこで、奨学金制度も給付型や無利子型、卒業後の所得に応じた返済額の軽減措置などが検討されています。
④「フリースクールやインターナショナルスクールなどにも教育の無償化を」
現在フリースクールが注目されています。その背景には日本全国の小中学校で不登校の数が12万3000人という実態があります。多様な学びを実現するフリースクールが全国に存在しますが、子どもたちは学校に籍を置いたままフリースクールに通い、小・中学校の卒業資格を得ています。しかし、保護者の経済的負担も大きいのでフリースクールの教育無償化を考える必要があるのではないでしょうか。と同時に、インターナショナルスクールなども教育無償化の対象に加えるべきだと思います。

6.参加者のご意見

○60代男性

地域住民の意識が昔と変わってきた。何ごとにも関わりたくないという意識が多い。例えば町会に入るメリットがないのなら入らないとか。

○60代男性

『就職時の対応を考えると高校も義務教育化が必要。子どもの貧困をなくすのは福祉だけではダメ、教育からの対応も必要。今の学校選択制が教育の格差につながっている。隣保館に集まる子どもの意識を見ると親の意識も変えていく必要がある』

○20代男性

『大人の学び直しが必要、働きながら学ぶ機会がほしい。学ぶことにより人間を大切にする心が出るのではないか。社会はもっと教育に寛容になってもいいと思う』

○70代女性

『解放同盟西成支部の仕事について教育に関わってきたが、今、ひ孫をみていて昔の教育実態と変わらない気がする。昔は、保育所などが保護者や保母に対応したり、話し合いをしてきたが、今はできないのか。しかし、これまでの同和教育は間違ってなかったと思う』

7.まとめ 教育無償化の意義

①教育を受ける事は知識や情報を手に入れる力がつき、人権尊重や貧困、戦争をなくしていくことにもつながり、人が人として幸せに生きていくために重要な事。
②これまでの貧困対策の無償化から多様化する社会や価値観の実態をふまえ未来への投資という考えに転換し、教育の機会均等を求める事。
③幼児教育はすべてにおいて無償化を求め、小・中学校は給食費や修学旅行費も無償化を求める。
④高校教育は義務教育化の検討を求め大学教育は奨学金の無利子化や卒業後の所得と連動した奨学金制度を求める。
⑤学校での教育に限らない多様な学びの実態をふまえ、フリースクールやインターナショナルスクールなどにも教育無償化を求める。

vol19「大阪市の平成28年度予算案について」

第19回フォーラムにしなりは、大阪市会議員・武なおき議員を講師に迎え大阪市の平成28年度予算案につ いての説明をいただきました。当日は地域住民や教育関係者、企業、団体、行政など40数名の参加があり有意 義な意見交換会となりました。
また今回のフォーラムは新年度予算案がテーマということもあり、案内チラシに事前アンケートをつけて配布 し、当日の意見交換に活用させていただきました。

税金の使い道をチェックしよう

前大阪市会議員 小林みちひろ

 年度末は来年度の予算を検討する時期です。先日、吉村市長が大阪市予算案を提案されました。私たちの生活に直接ひびいてくる大阪市の予算をしっかり学び、どのように生活が変わるのかをいっしょに考えたいと思います。
一方、予算執行の是非を決める大阪市会議員の役割も重要です。市会議員の仕事には主に、①市民の生活相談(福祉や教育、まちづくりなど)をうけ、その声を大阪市に届け、改善していくこと、②税金の使い道について無駄を省き、市民生活がより良くなるよう提案することがあります。自分が鶴見橋中学校の社会科の教師のとき生徒に国民の3大義務を教えました。①教育を受けさせる義務、②働く義務、③税金を納める義務。予算の原案提案は大阪市長ですが、その案を審議しOKを出すのは大阪市会です。市会議員は市長提案を追及したり、違う形のものを提案したりするなど市会で審議し決めていきます。ちなみに、自分が市会議員に初当選した13年前、大阪市の年間予算は一般会計
・特別会計合わせて約4兆3000億円ありました。大阪市の予算は直接私たちの暮らしに大きく関わることなので、その使い道についてしっかり学習したいと思います。
議会がどれだけ私たちの為にしっかり議論しているかをチェックするのも市民の大事な役目です。こういう視点で皆さんからの意見をお願いします。

市民の声を議会に届ける議員に

おおさかみらい大阪市会議員団 武なおき大阪市会議員

はじめに

 生野区選出の武なおきです。今回2期目の市会議員をさせていただいています。市民の方から議員や議会は何をやっているのかわからないという声をお聴きします。そこで、今期の自分のテーマは「議会の見える化」と「対話による政策づくり」です。今日のように、市民の皆さんとの対話を基本にまちづくりを進めていきます。

なぜ議員になろうと思ったのか

 自分は岡山県の出身で、大学では社会福祉を学びました。その後、生野区の社会福祉協議会に就職し、地域活動やNPO活動、食事サービスとか地域活動を応援する仕事に就きました。地域密着型で活動しているため、障害者や高齢者の方の生活相談や市民の地域活動の悩みなどの相談を受けました。そのたびに関係者と一緒に区役所に行って話をしますが、担当職員は理解してくれても上の役職の人や本庁までは声が届かない現状がありました。
一社会福祉協議会職員ではなかなか声が届かないことが現場では多々ありました。これを変えるにはどうしたらいいのだろうと仲間たちと話していたら、「それは議員になるしかないで」ということになり、そしたら自分が議員になろうと決意しました。
選挙のことは何もわからなくて、最初は無所属で立候補しましたが落選しました。応援団もいなかったし、ビラも一人でポスティングし、演説会もどうするかも分からないような状況で、選挙の難しさを感じました。また民主党公認で補欠選挙にも出ましたが維新の会に負けました。しかし次の選挙で当選できました。
議員になって変わったことは、大阪市に直接、意見を言ったり要望したりできるようになったことです。市民の意見や地域の課題を大阪市に届けられるようになりました。

大阪市議会の現況

 現在大阪市会は「おおさか維新」が37人、「自民党」19人、「公明党」19人、「おおさかみらい」2人、「共産党」9人の構成になっています。自分たち「おおさかみらい」は2人しかいません。しかし、その二議席によって議案の賛否が左右されるような議案も、この間の大阪市会ではありました。
多数決で過半数の議員が賛成したら条例や施策が成立します。過半数ではなく3分の2の議決が必要な事項もあります。例えば地下鉄やバスなどの交通機関の民営化や水道の民営化・株式会社化という案件はその重要性のために、3分の2の賛成が必要になります。
議員には議決のために調査する権限があります。例えば、西成の高齢者の人口や虐待件数などの数字を出してもらったり、事業の経過や資料、効果測定などを調査し、議案の検討材料にします。

大阪市会のあり方(大阪市会だより参考)

 市役所の8階には本会議場があります。ここで市長が市会議員86人に予算案などを説明します。本会議場で各委員会に議案が付託され、各々の議員が案件を議論します。
大阪市会には6つの常任委員会(①民生保健、②都市経済、③教育こども、④建設消防、⑤財政総務、⑥交通水道)があり、各議員はいずれかの常任委員会に所属します。自分は建設消防委員会です。また常任委員会とは別に特別委員会というのがあって、市政改革特別委員会、大都市税財政特別委員会、環境対策特別委員会があります。
本会議場での代表質問は5 人以上の会派に限られています。代表質問では市長にまず会派の考えを述べ、質問します。次に各委員会で詳細を議論し、各委員会で採決を行います。例えば、最近ではヘイトスピーチ条例の議案がありました。これは財政総務委員会での議論となり、被害者の裁判費用をどうするかなどが議論されました。この議案は各会派の賛否が拮抗しており、最初は全会派一致だったものの、最終的に自民党が反対に回りました。結局、財総委員会で賛成が過半数になり、本会議場でも自民党以外の賛成で可決しました。ところが、本会議場にカラーボールが投げ込まれるという事件もあり、それだけこの事案は世の中でも賛否が分かれていたと思います。

平成28 年度予算案の主な項目の説明

 吉村市長は平成28 年度の予算について基本方針を大きく3 つ出してきました。①豊かな大阪をめざした政策推進、②新たな価値を生み出す市政改革、③新たな自治の仕組みの構築。この三つを柱に今年度の予算の概要は次のようになります。(大阪市の平成28 年度予算案から資料は抜粋)
まず、来年度の予算の概要ですが、予算総額として3 兆6,973 億円あります。そのうち、一般会計は1 兆6,509 億円で目的別に見ますと、福祉費が5,449 億3,800 百万円で約33%を占めています。子ども青少年の費用は1,872 億7,500 百万円です。
次に子どもの教育・医療、無償都市大阪を目指した予算として、5 歳児にかかる幼児教育の無償化で25 億2,000 万円。子どもの医療費助成に75 億9,600 万円。15 歳(中学生)で終了していたのを18 歳到達後の最初の3 月まで延長などです。
待機児童の解消をはじめとした保育を必要とするすべての入所枠の確保に向けて、43 億3,900 万円。また、中学校給食事業も温かい給食の提供など学校調理方式への移行にともない、26 億2,200 万円を計上、平成31 年度2 学期までに全校で実施を目指します。平成28 年度2 学期より中学校(18 校)を学校調理方式へ移行します。
子どもの貧困に対する取り組みとして、実態調査費など600 万円。児童相談所の複数設置に2 億7,600 万円計上しています。
真に支援を必要とする人々のための施策として、特別養護老人ホーム建設助成として37 億6,500 万円。認知症初期集中支援推進事業に3 億2,600 万円。生活困窮者自立支援事業に5 億1,100 万円。就労
自立支援に5 億4,100 万円を計上。西成区特区構想で、あいりん地域環境対策整備事業や、子どもの居場所づくりのためのプレーパーク事業。簡易宿泊所設備改善助成事業や薬物依存者等サポート事業な
どで総額9 億3,400 万円計上。このほかにも都市魅力の向上、大阪の成長戦略、うめきた2 期区域まちづくり、鉄道ネットワーク、防災・震災対策、密集市街地整備、観光集客ビジネスチャンスなど多岐にわたって予算が組まれています。また、官民連携で地下鉄、バス、上下水道、幼稚園、保育所、博物館、一般廃棄物収集輸送について積極的に民間開放を推進していくとなっています。最後に都構想関連で、「副首都・大阪」の将来ビジョンも、副首都推進本部を設置して進めていく、とされています。

フォーラムの声

 今回の案内チラシの事前アンケートにご回答いただいた皆さまのご意見です。

【70 歳代・男性・旭区在住】

(1)中学校給食をよいものにするのは賛成ですが、業者が見つからな      いということは難しいところです。旧同和推進校の給食設備を使用したりセンター校方式にするのはどうでしょうか。
(2)市民交流センターが廃止になった後、利用している高齢者の居場所づくりが必要では?

【60 歳代・男性・都島区在住】

(3)私はこれまで、釜ヶ崎・今宮中学ケースワーカー・鶴見橋中学校・長橋小学校など長橋地域に関わってきました。この地域の素晴らしい実践を、全国的に広がりつつある子どもの貧困について西成から発信していく必要があると思います。

【60 歳代・男性・西成区在住】

(4)中学校給食は賛成でできるところから早く始めてほしい。
(5)子どもの貧困調査は賛成だが、現場の学校教師が子どもの貧困についてどれだけ理解しているのか疑問に思う。
(6)幼児教育について、早い時期からのカリキュラムと、保小連携や発達障害の子どもたちへの対応が必要だと思う。
(7)都構想は情報提供が大事、公平な学習の機会が必要。

【40 歳代・男性・西成区在住】

(8)子どもの貧困が大きな問題となっています。市民交流センターで実    施している「子ども食堂」への支援、ボランティア派遣、食材の提供など周知してほしい。
(9)公営住宅の入居者の高齢化が進んでいます。孤立死や自治活動     の担い手がいない、引きこもりなどの問題解決のために、自治活動を担うことを業務にした若者・中高年の入居募集や子育て世代の大幅入居などの政策入居を進めてほしい。
(10)西成区北西部は老朽密集市街地で大規模な震災が起こると甚大な被害を受けると言われています。国の事業を活用しても問題の解決には至っていません。震災が起こってからでは取り返しのつかないことになるため、早急に整備できる仕組みづくりを行ってほしい。

次回のご案内

第2 0 回フォーラムにしなり
4 月2 0 日( 水)午後6 時3 0 分~                     於: にしなり隣保館「スマイルゆ~ とあい」

vol.18「戦争法廃止・辺野古新基地建設阻止・改憲阻止にむけてどう闘うか」「大阪市幼稚園保育料5歳児の無料化について」

第18回フォーラムにしなりは、2月2日(火)に、昨年12月に新設された民設の「にしなり隣保館」で開催いたしました(参加者50余名)。 今回は、第1部として元衆議院議員の服部良一さんを講師に招き、昨年成立した安保関連法の問題点や沖縄の基地問題などについて学習しました。
第2部は小林みちひろ前大阪市会議員より、この4月から大阪市が実施予定の「5歳児の教育費無償」についての説明を受け、意見交換を行いました。
戦争法廃止・辺野古新基地建設阻止・改憲阻止にむけてどう闘うか                      

                         元衆議院議員 服部 良一

西成で住み政治運動をしています。

私は現在、津守の西成公園横に住んでいます。20歳くらいのときに西成に来て、当時部落解放同盟西成支部と運動を共にし、特に夜行バスで東京まで狭山闘争に行ったことを思い出します。その頃、津守にある昭和起重機製作所に就職し、33年間そこで働きました。その後、政治活動を経て衆議院議員になり現在も政治運動を展開しています。

最近の国会の動き

まず今国会は色々なテーマがあります。中でもゼロ金利の問題、銀行にお金を預けたら利子がつくのではなくて手数料を取られるという常識では考えられないことです。普通の銀行が日本銀行に預けたら手数料を取られるということです。新たなアベノミクスの方針で安倍政権の経済政策は、我々の年金基金を投入して株価を上げることを中心に行っています。また、TPPの問題です。日本の農業に大きく影響しますし、本当の狙いは医療保険や年金保険だと言われています。次に労働法制の問題、これは残業代がつかないというただ働きを可能にする法律が準備されています。

戦争する国へ、改憲の動き

昨年は戦争法反対の集会が全国的に繰り広げられましたが、この間秘密保護法が成立しました。これは秘密国家にするような法律です。また武器輸出3原則廃止により、日本も武器を作る国になろうとしています。それに集団的自衛権の閣議決定など、安倍総理は今夏の参議院選挙に勝ち、秋の臨時国会で改憲草案を発議して来年4月の消費税が上がる前に憲法改正の国民投票を実施するのではないかと言われています。
去年「安保関連法案」が国会で審議されましたが賛成的意見が多い中、潮目が変わったのが去年6月4日に自民党・民主党・維新の党の各党が推薦したすべての憲法学者の意見が、この法案は憲法に違反していると発言したことでした。自民党が推薦した学者までもが憲法に違反していると判断したことは非常に大きなインパクトを与えました。

戦争法で自衛隊がどうなっていくのか?

3月29日から施行される戦争法、私はこれを「戦争法」と呼びますが、安倍政権は平和安全法制と言います。まずこの法律により集団的自衛権を行使できるようになり、他国の防衛を意味します。自衛隊をアメリカ
の戦略に使うことでもあり、その時に国会のチェックが本当に可能かどうか問題です。また自衛隊はいつでもどこにでも行けるようになります。しかし後方支援も安全とは言えません。自衛隊関係者によると逆に一番危ないそうです。自衛隊が戦場に出て行って救助することが可能となる法律で、例えばアメリカ軍が中東などで空爆している時、自衛隊が救助に向かうことができるようになります。
また、他国に対する武器の提供も可能となり、発進準備のアメリカ軍機に対する給油も可能となります。武器使用の緩和にもつながり、現在一番危険なのはPKOで南スーダンに派遣している自衛隊員です。自衛隊が初めて現地で武器を持ってパトロールすることになるのではないでしょうか。これによりアフリカ、中東の戦争に巻き込まれる可能性も出てきます。今回の戦争法に一番不安を感じているのは自衛隊員だと思います。中谷防衛大臣は自衛隊のリスクは増大しないと言いましたが、それは真っ赤なウソで死の危険があります。

戦争法で日本はどうなる

この法律のキーワードは「切れ目のない安全保障」です。つまり24時間いつでも戦争できる体制になるという意味です。「警察と自衛隊の境目は?」「日本の自衛隊とアメリカ軍との切れ目は?」「平和と戦争の境目は?」など、切れ目のない安全保障の中でうやむやにされてしまう危険があるのが、今回の戦争法です。
また基本的人権や財産権などが侵害される恐れもあります。現実に民間のフェリー会社なども防衛省と契約しており、防衛省が要請したら72時間以内にフェリーを出すという契約もスタートしています。そして、船員も予備自衛官にしようという考えもあります。第2次世界大戦では6万人の民間船員が死亡しています。次の段階になると自治体への協力要請が出てくるでしょう。港、空港、建物、人員、物資、救急搬送、病院などを活用するために自治体に要請が来ます。国の権限を強化し、文民統制が破壊されていくでしょう。

沖縄の問題

2013年に沖縄のすべての自治体首長・議会・超党派の政党で「建白書」を作成しました。これはオスプレイ配備と普天間基地県内移設反対の内容です。
翁長知事の言葉に「沖縄のことは沖縄が決める」「沖縄のアイデンティティ」「誇りある豊かさ」という言葉があります。終戦後、基地があればお金を落とすという時代もありましたが、今は米軍基地が沖縄経済発展の阻害要因であり、基地を撤去し民間が来て雇用を作る方が、沖縄は発展するという考え方です。しかし現在も辺野古の闘いは続いています。翁長知事はあらゆる手段を使って基地建設を止めたい考えで、そのひとつに土砂埋め立て許可を取り消すというのがあります。基地をつくるのに埋め立て用の土砂がたくさん必要で、沖縄だけでは足りずに本土からも運んでこようとしています。これを条例で規制しようとしていますが、埋め立て許可取り消しは全面的な裁判闘争になっています。

戦争法の廃止に向けて

政治の反撃が必要です。国会に戦争法廃止法を出そうとする動きや参議院選挙での野党協力の実現も重要です。現在はシールズとかママの会とかいろんな団体の動きもあり、大阪でもデモをしたり新しいうねりが出てきています。また2000万人署名なども考えています。これらを含め司法判断を求めるために全国一斉に違憲訴訟も行いたいとも思います。
いずれにしても私たちは歴史の重大な転換期にいます。平和憲法がいよいよ変わるかもしれません。現在憲法9条はまだ変わっていません。しかし、今年7月衆・参議院選挙が実施され、自公政権が多数3分の2を取れば、今年の秋にも憲法改正の住民投票があるかもしれません。今、こういう時代になって来ています。沖縄県民も基地建設反対に頑張っていることも知っていただいて、一緒に連帯して頑張っていけたらいいと考えています。

大阪市幼稚園保育料5歳児の無料化について
                         前大阪市会議員 小林 道弘

今回の改正で大きなポイントは3つです。
①現在は5歳児のみだが、今後教育として考えると対象を広げていく視点が必要です。
②年収が多い家庭も含めた所得制限なしの事業をどう考えるのか。大阪市財政との関係も考えることが必要です。
③大阪市の幼稚園・保育所は無料ですが、無認可は認めないとなっています。市は認可していない所は把握できない、としていますが、それで多様化する社会の現状を捉えられるのでしょうか。また、認めるならばどんな方法が考えられるでしょうか。
このたび5歳児だけと決めたのは、待機児童の数が大阪市全域で二人だけでした。ただ幼稚園と保育所の教育の時間の決め方が違います。幼稚園は4時間教育ですが、保育所は決まっていないので、おおよそ半分が教育ということで、その分が無料になりました。
無認可の問題は大阪市が実態を把握しきれないという理由で、このたび無認可の事業所は5歳児無料化の対象から外されました。西成でも無認可のインターナショナルスクールも出てきたので大阪市に意見を出していきたいと思います。

 

フォーラムの声

服部発表をうけて

(質問) 基地闘争など沖縄の事で報道で知らされていないことがあれば。
(質問) 米兵の事件事故は沖縄では多く起きている。しかし、日米地位協定により日本の警察は手が出せなく県民はほとんど泣き寝入りの状態。まともな補償はもらえないのが現状です。
(質問) 今回の宜野湾市長選挙結果をどう見るか。
(服部) 負けた要因はいろいろあるが、今回は新人という事もあり選挙スタートが遅れた。また基地に反対だという人も勝った人に票を入れている。地方選挙は辺野古新基地ひとつだけでの選挙ではなかった。
(会場) 今回の選挙報道は沖縄だけの問題のようになっていた。市長選挙の争点が基地だけのようになっていて、これで反対派が負けたら辺野古にいくやろという書き方になっていたと思う。
(質問) 普天間移設関連で、本土に基地を引きとろうという動きについての考えについて。
(服部) 本土に基地を引き取るということは、パフォーマンスとしてはありえても運動としてはありえない。アメリカに基地を引き取ってもらうようにしないといけない。
(質問) 戦争法案に反対するある政党などは、破棄しようとする考えを出しているが、一旦できた法律を破棄するよりも抑止・抑制する法案が大事だと思うがどこか準備・研究しているとこがあるのか。
(服部) 戦争法が明らかに憲法違反というところもあるので訴訟も視野に入れて考えている。また廃止法案の骨子も民主・維新(東京)で作っているので、他会派の意見も取り入れて進んでいくと思う。
(質問) 今回の法律に反対の声が大きかったが、現在の日本の置かれている状況を考えるとどうなのか。
(服部) 安倍政権のもと、「中国の脅威」などといった宣伝に惑わされてはいけない。現実的に中国との戦争は考えれないし大局で考える必要がある。

小林発表をうけて

(会場) 前大阪市長の橋下さんはこれまで「地方分権で改憲」と言っていたが、今回は「教育無償のために憲法改正を」と言い出している。教育や分権で憲法を変えようとする世論を作ろうとしていることに危惧を持っている。過去の歴史を考えると簡単に憲法を変えることがあってはならないと思う。

 

今後フォーラムのありかたは、意見を書いていただくとか学校や地域などにフィールドワークに行くとか色々な形を考えていきたいと思います。次回は武市会議員をむかえて大阪市の新年度予算について勉強します。