VOL24「憲法について考えよう」 憲法カフェ

「憲法について考えよう」 憲法カフェ

大橋さゆり弁護士

はじめに

小林道弘 前大阪市会議員

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 今回のフォーラムは大橋さゆり弁護士を招いて憲法について学習します。先の参議院選挙でも争点となった憲法改正ですが、憲法の全文を読まれた方は少ないのではないでしょうか。憲法は前文と103の条文で構成されています。前文では日本国憲法の3つの特徴が記されています。一つ目は「国民主権」、国民が日本の主人公だということです。二つ目は「戦争放棄」つまり平和主義です。三つ目は「基本的人権の尊重」、差別はしてもされてもいけないということです。
日本の法律や条例は憲法に基づいて制定されており、政治・経済のすべてが法で成り立っています。憲法は生活の根幹であり、私たちが生きていくうえで密接に関連していますので、今日はしっかり勉強したいと思います。

憲法カフェってご存知ですか?

 今日のテーマは憲法です。その言葉を聞いただけで敬遠する人に憲法のことを知ってもらうために、私たちは「憲法カフェ」という取り組みを進めています。憲法カフェとは 若手弁護士の有志が多くの方と情報を共有するために開催している「知憲の会」の取り組みです。

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 この会は、自民党が改憲草案を出した時に、あまりにも今の憲法と違いすぎるので、どう変えようとしているのかを、自分たちで考えていただくためにスタートしました。お菓子やお茶を用意して気軽に意見交換できる場にしています。ここからはクイズ形式でいっしょに憲法を学びましょう。

憲法クイズ

【①国民は憲法を尊重し、擁護しなければならないか?】
答えは「義務はない」です。第99条によると天皇、摂政、大臣などの公務員は憲法を尊重する義務を負いますが、国民には憲法尊重擁護義務がありません。どういうことでしょうか。紙芝居を使って、憲法は何のためにあるのかを説明いたします。

王を縛る法律 ~憲法の始まり~

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 むかしあるところに悪い王様がいました。国民は王様のことが嫌いでしたが、王様に逆らうことはできませんでした。気に入らないと殺されてしまうからです。人々はずっと我慢を強いられました。本や新聞を書く人は怖くて本当のことを書けませんでした。また、王様の不満について話すことができませんでした。
いずれ人々の我慢も限界になり、人々は悪い王様を捕まえ新しい王様を選びました。新しい王様は憲法を作りました。王様が許可したことはなんでもしてもいいというルールです。しかし、実際には王様はなにも許可せず人々は我慢をしていました。そこで人々は話し合い考えました。「憲法には王様が国民に自由を与えるとあるが間違っている。自由は王様からもらうものではなく、生まれながら持っているものだ」。国民は立ち上がり、王様の権力を縛る新しいルールを作りました。
これが新しい憲法です。憲法のおかげで、王様が好き勝手できないようになりました。やがて現代になり、選挙で選ばれた人が政治をする時代になりました。しかし、現在でも生活で困っている人、無実で捕まった人がいます。こんな時、偉い人たちが憲法を守ってくれているかどうかを私たちが見守る必要があります。そして憲法を破っていたら、憲法を守らせるために声を上げなければいけません。

【まとめ】
①権力者は権力を不必要または必要以上に行使し、人の自由を侵害してしまう傾向がある。
②権力の濫用を抑えるために憲法が制定された。
③政治権力は憲法に則って行使されるべきだという考えを「立憲主義」という。
④現在の日本国憲法は立憲主義に基づいている。

【日本の憲法の歴史を振り返る】
1889年公布された明治憲法では主権は天皇にあります。臣民の権利は一応認められていましたが、天皇が臣民に権利を与えるという形式でした。その後、日清戦争、日露戦争、第一次、第二次世界大戦と戦争が続き、第二次世界大戦が終わってからGHQのマッカーサ司令官が憲法の草案を作るよう日本政府に命令しました。しかし、その内容が天皇主権であったりしたので、却下しました。そこで、日本の民間人も含めていろいろと意見を出し合い、自由や平和や人権重視といった内容を盛り込んだ日本国憲法が、最後の帝国議会で可決されました。その憲法では第1条で「主権の存する国民」が天皇を「統合の象徴」に位置づけている、とされています。
【日本は三権分立】
現在の日本は憲法の精神に則って、権力が特定の機関に偏りすぎないよう、三権分立という仕組みを採用しています。国会は法律を作る「立法府」。内閣は法律に基づいて政策を実行する「行政府」。裁判所は、国会が作った法律や内閣の行政処分が憲法に違反していないか監視する「司法府」。このように3 つの権力が国民の権利を不当に抑圧しないようにバランスを取っています。

憲法を読む

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 では、具体的に条文をみていきましょう。
<第13 条:基本的人権の尊重>人は生まれた時から人権を持っています。第13 条には「すべて国民は個人として尊重される…」とあり、幸福を追求することを認めています。一方で「公共の福祉に反しない限り」という制約もあります。こんな判例があります。会社勤めの人がヒゲを生やしていて、それを注意された。その人は「ヒゲを生やす自由はないのか」と人権救済の申し立てをしました。ヒゲを生やす自由がある一方で、ヒゲを生やすべきではないという商慣習もあります。そこで、公共の福祉に反するかどうかが問われました。その結果、このケースでは「キレイにヒゲを手入れしてあるので問題なし」ということになりました。<第14 条:法の下の平等>「すべて国民は法のもとに平等であって…差別されない」とあります。ただし、民族とか国籍など言及されていないものはどうなるのかという課題も残っています。
<第15 条:公務員の選定、選挙の保障>公務員を選んだり選挙することに触れています。選挙権は最近18 歳まで年齢が下がりました。国籍条項も入っているので外国人には選挙権がありません。
<第22 条:職業選択の自由>公共の福祉に反しない限り居住移転職業選択の自由をもつ、ということで身分や性別に関わらず職業が選べることが述べられています。
<第23 条及び26 条:学問の自由と教育を受ける権利>以前は制限がありましたが、今は何を勉強しても自由です。第26 条では、すべて国民は能力に応じて等しく教育を受ける権利があるとされています。特別支援学校やフリースクールなどはこれを根拠にしています。また第2項では、保護者は子どもに普通教育を受けさせる義務を負うこと、義務教育は無償とすることが記されています。子どもの教育は、その親と国の義務であることを意味しています。
<第27 条:勤労の権利及び義務>義務とありますが働くということは基本です。賃金の基準も最低賃金法で決まっています。
【公共の福祉】

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これまで何度か「公共の福祉」という言葉が出てきました。これはお互いに基本的人権をもつ者同士が矛盾に陥ったり衝突したときに、利害や権利を調整するという意味です。またこれとよく似た言葉とされる「公の秩序」は、個人の人権より国家の利益を優先することを意味しています。                                         <第19 条:思想及び良心の自由>どんなことを考えても自由です。公共の福祉の制限がないので、頭の中で人を殺したいと思うだけなら自由です。実際に行うことはもちろんダメですが。
<第20 条:信教の自由>昔は天皇を崇拝する宗教以外はダメでしたが、今はどの宗教を信じてもいいし、信じなくてもいい。
<第21条:集会・結社の自由>基本的には自由ですが、たとえばヘイトスピーチ問題では、主張を表現したい人とその主張で人権が侵される人がいます。個人の自由や権利をめぐる衝突になり調整する必要があります。ただし公共の福祉を考慮すると、なんでも表現していいわけではありません。
<第24条:婚姻の自由>前の憲法では結婚するのに親の同意が必要でしたが、今は両性の合意によって成立します。現在「同性婚」が話題になってこの条文が注目されています。一部の議員が「同性婚は憲法違反ではないか」と言っています。私は「両性の合意」とは必ずしも「異性同士」という意味でなくてもいいと思っています。今後の動きに注目してください。
<第25条:最低限度の生活>健康で文化的な最低限度の生活を営む権利。生活保護の根拠になっている条文です。              <第29条:財産権>昔は国が財産を取り上げた時代もあった。戦争時代は鍋や釜まで取られました。こんな事に対して財産は守るということです。                                        <第31条~第40条:身体の自由>警察・検察から抑留や拘禁などを受ける際に、過度に権利を制約されないことを保障する規定です。「公開の法廷で裁判をする」「令状がなければ逮捕されない」「弁護士の選任」「拷問禁止」「国家賠償請求の権利」などが規定されています。

【②憲法に記載されていない権利(環境権や知る権利など)は憲法上保障されていないので、憲法改正手続きが必要か?】
答えは「不要」。憲法上保障すべき重要なことは、すでにある条文を含めて保障されるという解釈があります。「知る権利」は条文にはありませんが、第21条の表現の自由で保障されていると裁判所は判断します。
【③憲法が私たち国民に求めていることは何?】
答えは「不断の努力」です。第12条です。黙っていると権利が失われていきます。
【④憲法改正には有権者全員の過半数の賛成が必要か?】

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答えは「不要」。第96条。各議院の議員総数の3分の2以上の賛成で発議し、投票総数の過半数を超えた賛成が必要です。投票率が20%だった場合、その過半数である有権者の10%強の賛成で改正できるということもあるのです。

まとめ

 自民党改憲草案は、平和主義の放棄、天皇の元首化(国民主権の後退)、国民が国家を守る義務の増加(国防義務、「日の丸・君が代」尊重義務)、家族助け合い義務、環境保全義務、地方自治分担義務などを条文にしています。今後、どんな改憲案が出てくるかが問題になります。

質疑応答

【小林】

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 公共の福祉ということで権利の対立について説明があったが、たとえば西成区では公園でホームレスの人が生活しているケースがある。ホームレスにしたら居住権の自由を主張する。しかし、公園を利用する親や子どもからすると自由に遊ぶ権利が奪われている。ここに権利の対立が生じるが、お互いの権利が認められるためにはどう対処すればいいか。

【大橋】

c%c2%84e%c2%8c5                                       100%どちらかの権利を選ぶことはできない。弁護士の立場からすると、公園で寝ることを権利として主張することに対しては人によって意見が異なってくるところだ。お金がなければ、生活保護費を支給してアパートに住んでもらうなど自治体がするべきという考えもあるが、生活保護が嫌という人には話し合いが必要。他の事例でホームレスが公園をきれいに管理して半ば自治しているところもあったので、話し合いと共存の中で解決しなければならない。一方的な封鎖などは絶対にいけない。

次回のご案内

現代風の井戸端会議

第2 5 回フォーラムにしなり

テーマ:大阪市の教育を考える

1 0 月 6 日( 木) 午後6 時3 0 分~

於:にしなり隣保館「スマイルゆ~と あ い 」                                    

VOL23「第24回参議院選挙結果について」

第24 回参議院選挙結果について

小林道弘 前大阪市会議員

はじめに

先日、神奈川県相模原市で起こった障害者施設での殺人事件は本当に心が痛い事件です。新聞などのマスコミ報道では、精神障害による措置入院や大麻使用に原因を求めているようですが、入所者に対する容疑者の日常的な言動や犯行計画予告を衆議院議長にもっていくなどの行動から考えると、明らかに事件の本質はヘイトクライムにあると思います。これは「差別意識にもとづく大量殺人」事件です。
ヘイトクライムとは、障害者やLGBTなどの社会的少数者、マイノリティに対する偏見や憎しみによって行う犯罪行為のことです。今回の事件では警察にも重大な責任があると思います。最初の捜査で精神障害の事件だと決めつけ、容疑者を措置入院させ責任を回避しています。深刻なのは、社会にある障害者への差別意識と「障害者は施設へ」という隔離を是とする考えがあることです。なぜ普通に自宅で生活を送れないのか。人里離れた施設で何人も集団で生活しなければならないのか。このように追い込んでいる障害者への偏見・差別意識が社会意識の中にないでしょうか。
複雑な問題だと思いますが、地域の中からあのような事件を無くしていけないのかと感じています。教育や福祉やコミュニティの中で私たち一人一人の問題として考えていきたいと思います。

参議院選挙の総括

第24回参議院議員選挙が7月10日に投開票されました。選挙争点は、①消費税10%先送り、②安全保障関連法、③憲法改正の3つと思われましたが、大きな議論にならず、アベノミクスの評価や日本の将来が争点になりました。具体的に言うと、待機児童問題と教育無償化、給付型奨学金、同一労働同一賃金など、与野党の政策のちがいがあまりみえない争点だったと思います。しかし、今回の選挙で最も特徴的なのは18歳選挙権の行使です。18歳から投票ができるということで、学校ではこの選挙に向けて模擬投票を行ったり学習を積み重ねたりと変化がありました。今後も引き続き若い人たちが積極的に選挙に関わるような取り組みが必要だと思います。
【自民党・公明党、与党の圧勝】
結果は自民党・公明党の与党が70議席を獲得、改選定数の過半数(61議席)を確保し大勝しました。自民党・公明党が躍進、共産党はまあまあ、民進党は3年前と比較すればましですが、6年前の議席からは減っています。大阪をはじめとする近畿では民進党はほぼ全滅、かろうじて京都の福山哲郎さんだけが当選です。地域性の反映とも言えそうですが、むしろ民主党政権の失敗の後遺症が残っているという総括が必要です。民進・共産など野党4党による統一候補の擁立で注目された「一人区」(32選挙区)でも自民党が21勝11敗で勝ち越しました。
また、ヨーロッパでのテロ事件や不安定な国際情勢のなか、国民は大きな変化を望まない選択をしたのだと思います。このことも与党の勝因につながりました。
【民進党、大阪で議席獲得ならず】
大阪選挙区では、9人が4議席を争う激戦となりましたが、自民党・公明党とおおさか維新は新人二人が当選しました。尾立さんは公認会計士の視点からアベノミクスを批判し、最低賃金引き上げや待機児童の解消を訴えましたが、及びませんでした。得票数に注目すると、おおさか維新の二人の票数には民進党や共産党の得票数を合わせても届きません。それだけ維新は大阪の民意を得ているということです。これにより大阪の民進党は参議院における議席を失いました。
【野党共闘の課題】
今回の野党共闘は、野党間の政策のすり合わせも乏しく、ただ自民党一強崩し、安倍政権打倒だけが目的の安易な戦略と映り、有権者に受け入れてもらえなかったように思います。共闘の基軸に据えたはずの現行憲法についてのスタンスも野党間でさまざまであったため、政策論争も巧みに争点をすり替えられ、憲法改正が議論の俎上に載せられませんでした。マスコミも今回の争点はアベノミクスの評価だと報じていました。このように与党からは選挙目当ての野合と批判され、国民に認められた受け皿となることができませんでした。
今後も野党共闘が考えられますが、今回のことを教訓にしっかり議論して野党統一政策を出さなければ、国民の信頼は得られません。衆参ともに改憲勢力が3分の2を占めたことで、改憲の動きがますます加速し、秋の臨時国会以降、憲法調査会での議論に大きく影響することは必至です。その影響は衆議院選挙にも及ぶことでしょう。
【地方議会活性化にむけた地方政党の立ち上げ】
大阪では昨年の知事・市長のダブル選挙と同様、民進党に対する期待感はなく、おおさか維新が無党派層の受け皿になっています。また、最近の門真市長選挙も維新の候補が当選しました。おおさか維新
には「改革の党」というイメージが定着し、「ふわぁっとした民意」から確かな維新支持層が形成されつつあります。「大阪都構想」が再浮上することも予想されています。
小林は次の統一地方選挙に向け、民主主義を守り地域主権・市民参加で地方から人権・教育・福祉施策などを創っていく勢力として、新たな地域政党の旗揚げが必要だと思います。地方議会が自立するには、中央集権ではなく地方議員の発言権を強化し、分権に耐えうる成熟した地方議会を作り、地方独自で政策を立案・実施できなければいけません。住民自身も参加し共に地方分権を確立していく、地方自立型政
党としての地域政党の立ち上げをめざしたいと思います。

フォーラムの声

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○60 代男性

大阪は維新が非常に強い。大阪府議会、大阪市会、堺市議会合わせて維新議員が180 人いる。今回の参院選では14 万票獲った。なぜこうなったのか。野党にも責任があるでしょう。維新は本来的には保守だと思いますが、橋下さんが政治に新しい風を吹き込み、大阪では「改革派」ということになっています。今後はこれに対抗しうる新しい政治勢力、つまり政策立案する政策集団が必要でしょう。例えば尾立さんも言っていた大学奨学金の問題は、いま現在苦しんでいる人たちへの政策も視野に入れる必要があるのでは?

○50 代男性

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大阪維新はもともと大阪自民の右派寄りの人たちが参加した組織だから保守だと思います。しかし革新的に見えているのは不思議な光景です。維新が不満の受け皿になっている観があるが、問題も多い。大阪の景気はどうなっているのか、伸びているのか? わたしたちの生活はよくなっているのか、どうか? これらは維新の政治が問われるべき問題です。

○50 代男性

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維新政治になって色々やっていると言っているが何もやっていないと思う。観光客で賑わって潤っているように見えるが、働く人の賃金も上がっていないし、若者の要求に耳を傾けて「何をしてほしいのか」ということを把握しきれておらず(民進党がやってくれたらいいが)、小林さんに分かりやすい政策を出してほしい。

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○70 代女性

維新の議員は、当選すれば橋下さんの言うとおりに動く人ばかりのように思う。維新に任すわけにはいかない。女性ももっと多く学習会などに参加して小林さんを応援していくことが必要だと思う。

○80 代男性

民進党の課題、自民党に勝つために何が必要なのかという基本方針を示してほしい。二重行政の解消とは何かということを明らかにしてほしい。憲法にしても自民党は「対案を出せ」と言うが、憲法を変えないのなら現憲法を「対案」とすればいい。

秋からはじまります 総合区・特別区の住民説明会

大阪都構想の再燃

昨年5月、「大阪都構想」の是非を問う住民投票は僅差で反対が賛成を上回り、橋下前市長が提唱していた都構想は退けられました。しかし、昨年11月の知事・市長選挙で再度大阪都構想の実現を公約に掲げた松井知事・吉村市長が誕生しました。松井知事は「総合区」か「特別区(大阪都構想)」かの二者択一で大阪市のあり方を問う住民投票を2018年秋までに実施する考えを表明しました。今後、これらの内容について市民対象の説明会が実施される予定で、西成区では12月に開催されます。

総合区でも特別区でも「合区」が前提

西成区の人口は現在、11万8000人です。一番多いのは平野区で19万6000人、一番少ないのは此花区で6万6000人です。人口にはバラツキがあるのに、大阪市は横並びの行政サービスを実施しています。たとえば「老人センターは一区に一館なのに、西成区には老人センターが二つある」と言って延寿荘を廃止しました。
そこで総合区は24行政区を同規模の人口にするためにいくつかの区をまとめて合区し、エリアマネージャーのような総合区長を新設します。総合区長は議会承認後、市長が選任します。権限についても市長に意見具申して地域のニーズを伝えることができるようになります。
住民説明会ではおおさか維新の大阪都構想を前提とする「特別区」の説明もされます。大阪市を残す独自財源の「総合区」か、大阪府と財政調整を行う区議会を設置する中核市並みの「特別区(都構想)」なのかを選ぶことになります。

大切なのは、地域に応じた政策

重要なことは、市行政を24区横並びに実施するのではなく、合区されたブロックごとに抱える課題に応じた政策を実施することです。例えば、西成区的課題として低学力・子どもの貧困・子どもの居場所づくりに応じた教育政策や福祉政策・地場産業育成・観光政策などを総合区における権限移譲や財源を活用して住民サービスの向上をはかることです。

■ 区数(案)

総合区の設置とその事務の拡充にあたっては、効率性を考え、合区を前提に次の規模を想定

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※具体的な区割りは今後検討                                     人口は平成47 年の将来推計人口(約228 万人)

大阪市案は、合区を前提にしています。合区は3つの案が提出される予定です。

■ 事務レベルに相当する職員数(案)

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事務レベルについては、権限と事務内容に応じて三つの案が提出されます。事務の容量と権限はA<B<Cとなっていきます。
次に、事務レベルと区数を掛け合わせて、職員数を算出します。表の数値は、現在の職員総数からの増減を示しています。職員の増減数の妥当案として、○で囲んだ5つが提示されます。
住民説明会では以上のことと同時に「特別区(都構想)」の説明もされます。大阪市を残す独自財源の「総合区」か、大阪府と財政調整を行う区議会を設置する中核市並みの「特別区(都構想)」なのかを選ぶことになります。
重要なことは、市行政を24区横並びに実施するのではなく、合区されたブロックごとに抱える課題に応じた政策を実施することです。例えば、西成区的課題として低学力・子どもの貧困・子どもの居場所づくりに応じた教育政策や福祉政策・地場産業育成・観光政策などを総合区における権限移譲や財源を活用して住民サービスの向上をはかることです。

次回のご案内

第2 4 回フォーラムにしなり

テーマ: 憲法について考えよう
講師: 大橋さゆり弁護士9月1日(木)午後6時30分~

 

 

VOL22「国民が意思を示すとき」 ~イギリス国民投票と参議院選挙~

  1.EU離脱/残留をめぐるイギリス国民投票

はじめに

今日は7月10日に実施される参議院議員の争点などについて学習する前に、連日テレビ・新聞などで頻繁に報道されている、イギリス(以下、「英国」)のEU離脱問題について考えてみます。この問題は日本にも非常に影響のある重要な問題なので、最初に少し時間をとってお話しします。
英国は4つの国の連合国で、スコットランド、北アイルランド、ウェールズ、イングランドからなっています。国旗もこれら4つの国の旗を集約したデザインになっています。また、英国はかつて世界的に絶大な力を持
っており、例えば世界標準時も、ロンドンのグリニッジ天文台を通る経線(0度)に従って決められました。
ところで英国と日本の時差は9時間。日本の標準時は兵庫県明石市を通る東経135度を基準にしています。実際のところ北海道と沖縄の時差は1時間ほどですが、日本国内は標準時で統一されています。

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英国国旗の変遷
出典:ウィキペディア

EUとは

EUとは「欧州連合European Union」のことで独、仏、伊、スペインなど28ヵ国が加盟しています。英国はその28ヵ国の一つです。EUが生まれてきた背景には第2次世界大戦を反省してヨーロッパが国家を超えた一つの共同体になり、新しい秩序を作ろうとする人びとのねがいがありました。ヒト・モノ・カネの往来を自由にしてヨーロッパ全体でさらなる発展を目指すという目標もあります。

なぜ英国はEUを離脱し、難民を受け入れたくないのか

6月23日に英国で国民投票が行われます。表向きは国としての主導権の回復ということですが、本当の理由は、これ以上難民を受け入れたくないからだと思います。
英国では社会保障が充実しているので、「難民」に認定してもらえれば手厚い保護を受けることができます。だからシリア、イラク、アフリカなどからの多くの難民が英国を目指してやって来ます。
ところが、英国もさまざまな理由で難民の受け入れを拒否したくなる場合があります。まず、国民の税負担が大きくなります。また、国内の労働市場が難民に奪われ、失業のリスクが増大するのではないか、という不安があります。さらに、英国古来の文化の喪失や治安の悪化も理由とされています。しかし、EU加盟国には難民受け入れを拒否できないという法律があるので、拒否できないのです。

離脱後の日本への影響は?

現在、世界のマーケットは米国のニューヨーク、中国の上海、英国のロンドンの3都市を中心に回っていますが、英国がEUから離脱すると、英国への輸出品に関税がかかるので、世界の金融機関や企業が国外に出ていく可能性があります。そうなると、英国の貨幣価値が下がり、ひいてはEU全体に影響を及ぼし、多くの企業が進出している日本にも影響が出てくる可能性があります。
日本にとって英国はアメリカに次ぐ2番目の投資先で(2014年現在で日系企業1084社)、多くの企業がヨーロッパ全体のビジネス拠点を英国に置いています。しかし離脱した場合、EU域内の国々との貿易に関税がかかる可能性を考慮して、ビジネスの利便性から拠点を移動させる可能性があります。とくに日産、トヨタ、ホンダなど自動車業界への影響が注目されます。

※6月23日に開票された英国での国民投票ではEUからの離脱を支持する人たちが勝利しました。

2.参議院選挙、争点は憲法改正

はじめに

無題

6月21 日の公示をうけ7 月10 日投開票の参議院議員選挙が実施されます。衆議院議員は任期4 年で解散があります。参議院選挙は定数242 の6 年任期ですが、3年ごとに半数の121 人を改正します。今回の選挙の特徴はアベノミクスの評価と新しく18 歳選挙権ができたことです。これにより、高校生でも18 歳になれば投票に行くなどの選挙活動が可能になりました。教育現場での政治の学習がより深まることを期待します。

「アベノミクス」の評価は論点のすり替え

そもそも選挙の争点とは、選挙期間中に「私たちの政党の政策はこうで、あちらの政党とはこんな点が違う」と主張しあう議論の材料です。今回の争点は当初、①消費税10%増税、②安全保障関連法、③憲法改正の3 点になるかと思われました。しかし、消費税の増税は2 年半後に先送りし、安保関連法案はすでに成立、そして憲法改正に意欲を示すものの安倍総理は選挙争点にしない、と隠しているのが現状です。
これらの争点に代えて「アベノミクス」と呼ばれる安倍政権の経済政策の評価が争点に掲げられています。国民はこうした論点のすり替えを見抜く必要があります。

どうして与野党の主張が似ている?

与党が本当の選挙争点を隠すために子育てや社会保障などに重点を置くようになり、一見すると与野党とも似たような政策が並びます。
たとえば、待機児童対策も給付型奨学金の創設も、野党が今回の選挙に向けて考えていた政策ですが、野党の追及をかわすかのように、保育士や介護士の処遇改善策を検討すると言ったり、「同一労働・同一
賃金」実現による「正規・非正規の格差」の是正を訴えたりするようになっています。これらはもともと民主党が公約で訴えてきたものです。
このように自民党は、民進党など野党が主張する政策を取り込み、参院選での「争点かくし」の動きを活発化させているように思えます。

争点は憲法改正の是非

このような「争点かくし」のために分かりづらくなっていますが、今回の参議院選挙は、間違いなく「憲法改正」が争点になっています。自民党の一番の目的は、憲法改正発議に必要な3分の2議席を確保することです。与党が勝てば悲願である憲法改正にグッと近づきます。そして間違いなく憲法改正になるでしょう。
改正のポイントは第9条です。維新は憲法改正に賛成する可能性が高いです。公明党は公約に憲法改正を含めていませんが、反対派が存在するのも事実です。共産党は自衛隊を違憲とし「改正反対」です。重要なことは、私たち国民が憲法改正の是非についてしっかり判断することです。

フォーラムの声

10 代女性

無題2

私は今年で20歳になりますが、投票は10代で行うことになります。しかし、友達との会話では18歳選挙権の話題は一切出てきません。選挙に行かなければ、どんな影響があるのか、何を基準に投票すればいいのかわかりません。

小林――

日本は法治国家であり、すべて法律に基づいて私たちは生活しています。その法律を作っているのがとても少ない人数の国会議員です。
どの政党、どの候補者が自分にとって良いのか、それを判断する力を付けなければなりません。

50 代女性

メディアでは「就職率が上がっている」という話がありましたが本当ですか?

小林――

「就職率」でなく「失業率が下がっている」という報じ方をしています。現実には雇用が増えているとは言い難いのではないでしょうか。メディアの報じ方にも注意して考えなければなりません。

30 代男性

無題.3

選挙公約をみると自民党は「成長と分配の好循環」で、民進党は「分配と成長の両立」。二つの違いは何ですか?むしろどちらも似ているのに、なぜ一緒にやっていこうとしないのですか? その方が効率的だと思うのですが。

小林――

「成長することにより景気が良くなっていく」というのが自民党。「成長と景気を同時に」というのが民進党でしょう。ただ、キャッチフレーズが似ていても政党としての理念が根本的に違います。たとえば原発問題によくあらわれていますが、そもそもの理念が違うから一緒にはなりません。

30 代男性

投票基準として、候補者本人よりも政党の言うことを信じたほうがいいのですか?

小林――

信じるのであれば「個人」の方がいいです。もっともそれが実現されるとは限りませんが。

30 代男性

公約の財源はどこにあるのでしょうか?

小林――

自民党は財源の根拠を提示せずに隠しているし、おおさか維新は公務員の給料減らしや議員削減で予算を捻出すると言っています。民進党は赤字国債を発行すると言っています。

60 代男性

(民進党は)金持ちから税金をとると言っている。

70 代男性

無題4

18歳選挙権が今回から出てきたが、自分が若い頃には沖縄の復帰闘争がありました。そこで自分も沖縄に行ったものの命からがら逃げ帰った、という経験をしました。当時は沖縄がすべてを請け負っている印象を受けた。そんな経験をして、今の人たちも考えなくてはいけないのは「今の自分はどうしたらいいのか」を考えることではないでしょうか。自分たちが置かれている位置を分かろうとして、政治社会に興味を持つことが大切ではないでしょうか。

50 代男性

無題5

今回は18歳投票権が大きな争点であり、若者に焦点をあてて考える必要があると思います。奨学金やブラックバイト・企業の問題、消費税の問題、若者の政治的関心を高めることが必要ではないか。

40 代男性

無題6

――なぜネット投票はできないのですか?

小林――

第一に、本人認識が困難だからだと思います。ネットで選挙を行うには「なりすまし」をはじめとする不正防止が条件になるでしょう。
――それはハガキでも同じではないですか?

小林――

投票するのにハガキは必要ありません。事務作業の簡素化・効率化のためにあるだけです。

20 代男性

ネット投票が実現すると投票率はあがりますか?

小林――

24時間の投票が可能になり場所も関係ないので、大幅に上がる可能性はありますね。

会 場1

マイナンバーの使い方がこれから重要になってくると思う。

会 場2

QRコードを活用しても無理ですか?かなりセキュリティの高いものもあります。一度読み込むと、2度と使えない仕組みもあります。それを使えば可能な気もしますが。

小林――

不正を防ぐための議論はこれからたくさん出てくるでしょうね。若い子はやっぱりネット投票の方がいいかな?

会 場3

無題7

今ネットで調べたら、エストニアという国では電子投票がありました。韓国ではボタン投票が2006年にあるようです。

60 代男性

今回の参議院選挙、民進党の人気はやや持ち直したようにも見えるが、現状はかなり厳しい。民進党にもっとしっかりしてほしい。自分たちの政策に近い政党を応援するのが本来だが、その政党が本当に政策を実現できるかを判断しなければならない。

無題8

次回のご案内

第2 3 回フォーラムにしなり

7 月2 7 日( 水)午後6 時3 0 分~

於: にしなり隣保館「スマイルゆ~ とあい」