VOL12「18歳選挙権について」

2016年の参議院選挙から!

選挙権の拡大は、戦後すぐ1945年の女性参政権の導入と25歳から20歳への年齢引き下げ以来70年ぶりです。2015年6月、選挙権の18歳引き下げが全党一致で可決され、来夏の参議員選挙から10代の若者も選挙デビューです。

「どうせ、投票に行かへんやろ」「高校生に政治のことがわかるか?」という懐疑的な声から「若者が政治参加するチャンス」「世界的に18歳選挙権がスタンダード」という肯定的な声まで様々です。

今回のフォーラムでは当事者である「若者の声」を皆さんに届けようと、西成青年部のメンバーが高校生200人以上にアンケートをとりました。そのまとめや18歳選挙権導入のメリット・デメリットなど青年部長の山村氏が報告しました。

また、元中学教師の小林氏は今回の改正が及ぼす教育現場への影響について、自身の経験と重ね合わせながら報告しました。

 

【報告】山村 祐太 さん

■若者の投票率

6月17日の参議院本員会で、選挙権が18歳に引き下げられることが決まりました。来夏の参議員選挙から10歳代が初めて投票できます。

改正安保関連法案はいま大きな話題となっていますが、選挙権が拡大されたのは70年ぶりのことで、大きなニュースだと思います。

年代別の投票率をみると、2013年参議員選挙は20歳代33.4%、30歳代43.8%。2014年衆議院選挙は32.6%、42.1%と若い世代の投票率は低くなっています。

また、2016年から新たに投票権を得る10歳代は、大阪市内で約4万人、西成区内で約1400人。仮に投票率を3割とすれば、大阪市内では1万2千票、西成区内で420票です。選挙結果に及ぼす影響は少ないかもしれません。ただ、先の大阪都構想の住民投票ではその差が1万票でしたので、接戦になれば若者の投票が与える影響も無視できません。

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■成人=18歳?

酒・たばこ・競馬・選挙といえば20歳以上が当たり前でした。10歳代の実名報道制限や契約における保護者の同意など、少年法や民法は未成年を守っている部分も少なくありません。この取扱いも18歳に引き下げられるのでしょうか。

もしそうなれば、高校3年生でも自分の意志でサラ金を借りられるようになります。ギャンブルや詐欺などで借金漬けにならないような対策は必要だと思います。

世界のスタンダードは18歳選挙権です。兵役や徴兵と連動している国も少なくないとは思いますが、各法律における成人の取り扱いがどのように改正されていくかはこれからも注目です。

■なぜ18歳に引き下げた?

改正国民投票法で18歳以上に投票権を与えることになったので、連動していることはわかりますが、公職選挙法の改正が全会一致で決議されたというのは不思議です。

各紙面では「若者の意見が政治の場に反映される」という賛成派と「若者の判断能力はまだまだ政治を担うに未熟」という反対派が拮抗しているはずなのですが、国会は世論とは別のところで決まっている気がします。

各政党は来年の参議員選挙を見据え、若者の意見を取り入れ、支持者獲得のために、SNSを強化したり、大学に支部を設置したり、学生との対談の場を設けたり、着々と準備を進めています。

■高校生の声

今回の改正に合わせ模擬投票を実施する高校もちらほら出ていますが、これからの教育現場では政治的教育を促進することが求められ、一方で「政治活動の罰則化」という方針のもとで教員は授業づくりで困ることは目に見えています。では、当の高校生はどう考えているのか、高校2年生と3年生の200人近くにアンケートを実施しました。

大きなテーマは3つです。「①今回の選挙権改正を知っている?」「②政治の情報収集はどこから?」「③興味のある政治的テーマは何?」

①については、2年生(50.4%)よりも3年生(83.7%)のほうが「知っている」が多くなっていましたが、改正についての良し悪しについては「どちらともいえない(77.6%)」が圧倒的でした。

②については、「テレビ(86.7%)」が圧倒的で、各政党が力を入れようとするSNSなどインターネットは(11.0%)でした。ネットは興味のあることを調べるためのものであり、政治的なテーマを自分で調べたいと思うほど動機があるわけではないということの表れだと思います。

③については、半数を超える高校生が興味を持っていたたのは身近な「子育て・教育」で、3割を超えたのは「社会保障・年金」「景気対策」「労働・雇用」でした。

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あなたが興味や関心があることで、政治が取り組むべき課題は?

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【報告】小林 道弘 さん

■大阪戦略調整会議

18歳選挙権の話をする予定でしたが、その前にちょこっとだけ言わせてください。

本日、7月24日に大阪戦略調整会議(以下大阪会議)がありましたので、その説明をします。

橋下市長の大阪都構想は『二重行政解消の手段』として提案されたものでした。一方で自民・公明などは『二重行政はそもそもない。これからのことは話し合いで調整できる』と言い続けていました。その話し合いの場が今日の「大阪会議」です。大阪都構想で一緒になるとされた大阪府と大阪市だけでなく、堺市も含む2市1府の市長と知事が参加しています。

「二重行政」についての大きな見解の相違がある中で、11月には大阪市長・大阪府知事の選挙が予定されているので、維新の党や橋下市長は「二重行政の解消に向けた取り組みが、大阪会議では進まない」といったことを見せつけようとしているのか、今日は建設的な議論ではありませんでした。

ただ、都構想反対のための「大阪会議」なんてものはいりません。大阪市をよりよくしていくための「大阪会議」にしてほしい。いまは市議会で所属議員は0になった民主党でもプロジェクト・提案づくりをすすめていきたいと考えています。

■1%の参政権

投票率がこれだけ低くなると、参政権のありがたさを忘れそうになります。明治22(1889)年の選挙では、全人口のたった1%しか投票できませんでした。今でいえば、1200万円以上の年収があり、男性のみに限定されていました。ごくごく一部の人の意見が民意とされ、政治が決まっていたのです。

これが大正デモクラシーや太平洋戦争終結などの時代の変遷を経て、男性による普通選挙や婦人参政権が獲得されてきたのです。だから、「たった1票で何も変わらない」ではなく「この1票で意志を伝える」ということを大切にしてもらいたいと思います。

■政治的中立とは?

では、それを教える・伝える側の教師はどうかというと、実に難しい。先生や教師は政治的に中立な立場で生徒と接することが求められますが、日教組・全教・全日教連といった労働組合もあるように、個人の立場でも政治的に中立であれというのは限界があります。

自民党は政治的中立性の確保に向け、違反した教師への罰則導入を検討していますが、中立性を警察が判断するのはいかがなものか?そもそも中立とは、多数意見なのか、真ん中ぐらいの意見なのか、政府の見解なのか。判断は難しい。

■元教師として

社会科の教師だったので、時事問題に興味を持ってもらおうと、新聞をよく教材に使っていました。これを中立性担保のために、朝日・毎日・読売・産経のすべてを紹介しなさいと言われると時間がかかるし、賛否両論を取り上げても自分の意見で授業の濃度は変わってしまう。たとえば、改正安保法案は憲法9条違反?合憲?とか、旬な政治的なテーマを取り上げるには時間がかかる。でも、政治は時代の流れや熱というものがある生ものなので、旬に教えないと、生徒たちから貴重な学ぶ機会奪うことにもなる。

真面目に考えれば、どんどん難しくなるので、ほとんどの先生が教えなくなったり、現実的な政策課題を伝えることを避けたりするのではと危惧しています。

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みんなのこえ

■教えるではなく「伝える」

○授業で政治のことを教えるということは、テストとか評価の対象になるの?

○若い子がちゃんと判断して投票できるの?

□投票率の問題より何よりも投票に「行く」「行かない」を本人が決めることが大切。

□学校だからといって「教える」ではない。ちゃんと情報を「伝える」という姿勢が大切。授業の内容だけでなく、各クラスや図書室ですべての新聞が読めるようすることの方が大切。

□若気の至りは当たりまえ。チャレンジをして成功・失敗を重ねて、未熟なものが成熟するということをもう一度受け入れられるような社会の方が良い。

■先生よりも「親」

○なんで若者は選挙に行かないの?

□「若い割に選挙行くやん」「年とってるけど選挙行かへんの」というのは、つまるところ個人。

□若者だけが選挙に行かないのではなく、50歳代でも選挙に行かない人はいっぱいいる。

□60歳代を超えると選挙に行く率は高くなるけど、年齢を重ねて成熟するし、何よりも時間もある。

□経験則だけど、親が選挙に行く家庭で育つと、選挙に行く子供たちも多い。

■18歳投票権は「憲法違反」?

○そもそも酒とたばこ、選挙は20歳。なんで勝手に変えることができるの?

○18歳は未成年なのに、選挙できるのは憲法にあっている?

□憲法第15条には「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。」とあります。

□憲法には成年者の具体的な年齢は書かれていませんが、これまで20歳だったので、厳密に言えば憲法違反でしょう。でも、「憲法違反」と大きな声もあがらなかったから、そのまますんなりと変わったのでは?

□憲法改正の国民投票法案と重ねているから、憲法9条と改正安保法案だけでなく、憲法15条と18歳選挙権など現況と憲法の整合性のなさを取り上げる作戦だったりして。

■今回の改正で変わるもの

□報告にもあったように、参政権だけでなく、他の法律も随時18歳以上が成年者のスタンダードになるだろう。

□成年者が18歳になるということは、サラ金も高校3年生をターゲットに動くだろうし、犯罪は実名報道になるだろう。

□責任が与えられる一方で、これまで見過ごされてきた「若者福祉」という概念が出てくることにも期待したい。たとえば、高校進学率が97%を超え、半ば義務教育と化した時代に、高校中退者を支えるセーフティネットはない。

□各政党が若者票の獲得に動いているように、選挙権のあるなしで対応は変わってくる。

□高校生や若者に意見を聞くだけでなく、次は政治家のみなさんに若者に向けてのメッセージを聞くのもおもしろいかも。

□でも、結局は少子高齢化が背景にあって、若者にも現実を知ってもらいたいという押し付けにならなければいいけど。

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フォーラム西成Vol.11本文

山村氏 当日資料 18歳選挙権について

山村氏 当日資料 高校生アンケート

小林氏 当日資料 18歳選挙権