VOL24「憲法について考えよう」 憲法カフェ

「憲法について考えよう」 憲法カフェ

大橋さゆり弁護士

はじめに

小林道弘 前大阪市会議員

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 今回のフォーラムは大橋さゆり弁護士を招いて憲法について学習します。先の参議院選挙でも争点となった憲法改正ですが、憲法の全文を読まれた方は少ないのではないでしょうか。憲法は前文と103の条文で構成されています。前文では日本国憲法の3つの特徴が記されています。一つ目は「国民主権」、国民が日本の主人公だということです。二つ目は「戦争放棄」つまり平和主義です。三つ目は「基本的人権の尊重」、差別はしてもされてもいけないということです。
日本の法律や条例は憲法に基づいて制定されており、政治・経済のすべてが法で成り立っています。憲法は生活の根幹であり、私たちが生きていくうえで密接に関連していますので、今日はしっかり勉強したいと思います。

憲法カフェってご存知ですか?

 今日のテーマは憲法です。その言葉を聞いただけで敬遠する人に憲法のことを知ってもらうために、私たちは「憲法カフェ」という取り組みを進めています。憲法カフェとは 若手弁護士の有志が多くの方と情報を共有するために開催している「知憲の会」の取り組みです。

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 この会は、自民党が改憲草案を出した時に、あまりにも今の憲法と違いすぎるので、どう変えようとしているのかを、自分たちで考えていただくためにスタートしました。お菓子やお茶を用意して気軽に意見交換できる場にしています。ここからはクイズ形式でいっしょに憲法を学びましょう。

憲法クイズ

【①国民は憲法を尊重し、擁護しなければならないか?】
答えは「義務はない」です。第99条によると天皇、摂政、大臣などの公務員は憲法を尊重する義務を負いますが、国民には憲法尊重擁護義務がありません。どういうことでしょうか。紙芝居を使って、憲法は何のためにあるのかを説明いたします。

王を縛る法律 ~憲法の始まり~

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 むかしあるところに悪い王様がいました。国民は王様のことが嫌いでしたが、王様に逆らうことはできませんでした。気に入らないと殺されてしまうからです。人々はずっと我慢を強いられました。本や新聞を書く人は怖くて本当のことを書けませんでした。また、王様の不満について話すことができませんでした。
いずれ人々の我慢も限界になり、人々は悪い王様を捕まえ新しい王様を選びました。新しい王様は憲法を作りました。王様が許可したことはなんでもしてもいいというルールです。しかし、実際には王様はなにも許可せず人々は我慢をしていました。そこで人々は話し合い考えました。「憲法には王様が国民に自由を与えるとあるが間違っている。自由は王様からもらうものではなく、生まれながら持っているものだ」。国民は立ち上がり、王様の権力を縛る新しいルールを作りました。
これが新しい憲法です。憲法のおかげで、王様が好き勝手できないようになりました。やがて現代になり、選挙で選ばれた人が政治をする時代になりました。しかし、現在でも生活で困っている人、無実で捕まった人がいます。こんな時、偉い人たちが憲法を守ってくれているかどうかを私たちが見守る必要があります。そして憲法を破っていたら、憲法を守らせるために声を上げなければいけません。

【まとめ】
①権力者は権力を不必要または必要以上に行使し、人の自由を侵害してしまう傾向がある。
②権力の濫用を抑えるために憲法が制定された。
③政治権力は憲法に則って行使されるべきだという考えを「立憲主義」という。
④現在の日本国憲法は立憲主義に基づいている。

【日本の憲法の歴史を振り返る】
1889年公布された明治憲法では主権は天皇にあります。臣民の権利は一応認められていましたが、天皇が臣民に権利を与えるという形式でした。その後、日清戦争、日露戦争、第一次、第二次世界大戦と戦争が続き、第二次世界大戦が終わってからGHQのマッカーサ司令官が憲法の草案を作るよう日本政府に命令しました。しかし、その内容が天皇主権であったりしたので、却下しました。そこで、日本の民間人も含めていろいろと意見を出し合い、自由や平和や人権重視といった内容を盛り込んだ日本国憲法が、最後の帝国議会で可決されました。その憲法では第1条で「主権の存する国民」が天皇を「統合の象徴」に位置づけている、とされています。
【日本は三権分立】
現在の日本は憲法の精神に則って、権力が特定の機関に偏りすぎないよう、三権分立という仕組みを採用しています。国会は法律を作る「立法府」。内閣は法律に基づいて政策を実行する「行政府」。裁判所は、国会が作った法律や内閣の行政処分が憲法に違反していないか監視する「司法府」。このように3 つの権力が国民の権利を不当に抑圧しないようにバランスを取っています。

憲法を読む

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 では、具体的に条文をみていきましょう。
<第13 条:基本的人権の尊重>人は生まれた時から人権を持っています。第13 条には「すべて国民は個人として尊重される…」とあり、幸福を追求することを認めています。一方で「公共の福祉に反しない限り」という制約もあります。こんな判例があります。会社勤めの人がヒゲを生やしていて、それを注意された。その人は「ヒゲを生やす自由はないのか」と人権救済の申し立てをしました。ヒゲを生やす自由がある一方で、ヒゲを生やすべきではないという商慣習もあります。そこで、公共の福祉に反するかどうかが問われました。その結果、このケースでは「キレイにヒゲを手入れしてあるので問題なし」ということになりました。<第14 条:法の下の平等>「すべて国民は法のもとに平等であって…差別されない」とあります。ただし、民族とか国籍など言及されていないものはどうなるのかという課題も残っています。
<第15 条:公務員の選定、選挙の保障>公務員を選んだり選挙することに触れています。選挙権は最近18 歳まで年齢が下がりました。国籍条項も入っているので外国人には選挙権がありません。
<第22 条:職業選択の自由>公共の福祉に反しない限り居住移転職業選択の自由をもつ、ということで身分や性別に関わらず職業が選べることが述べられています。
<第23 条及び26 条:学問の自由と教育を受ける権利>以前は制限がありましたが、今は何を勉強しても自由です。第26 条では、すべて国民は能力に応じて等しく教育を受ける権利があるとされています。特別支援学校やフリースクールなどはこれを根拠にしています。また第2項では、保護者は子どもに普通教育を受けさせる義務を負うこと、義務教育は無償とすることが記されています。子どもの教育は、その親と国の義務であることを意味しています。
<第27 条:勤労の権利及び義務>義務とありますが働くということは基本です。賃金の基準も最低賃金法で決まっています。
【公共の福祉】

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これまで何度か「公共の福祉」という言葉が出てきました。これはお互いに基本的人権をもつ者同士が矛盾に陥ったり衝突したときに、利害や権利を調整するという意味です。またこれとよく似た言葉とされる「公の秩序」は、個人の人権より国家の利益を優先することを意味しています。                                         <第19 条:思想及び良心の自由>どんなことを考えても自由です。公共の福祉の制限がないので、頭の中で人を殺したいと思うだけなら自由です。実際に行うことはもちろんダメですが。
<第20 条:信教の自由>昔は天皇を崇拝する宗教以外はダメでしたが、今はどの宗教を信じてもいいし、信じなくてもいい。
<第21条:集会・結社の自由>基本的には自由ですが、たとえばヘイトスピーチ問題では、主張を表現したい人とその主張で人権が侵される人がいます。個人の自由や権利をめぐる衝突になり調整する必要があります。ただし公共の福祉を考慮すると、なんでも表現していいわけではありません。
<第24条:婚姻の自由>前の憲法では結婚するのに親の同意が必要でしたが、今は両性の合意によって成立します。現在「同性婚」が話題になってこの条文が注目されています。一部の議員が「同性婚は憲法違反ではないか」と言っています。私は「両性の合意」とは必ずしも「異性同士」という意味でなくてもいいと思っています。今後の動きに注目してください。
<第25条:最低限度の生活>健康で文化的な最低限度の生活を営む権利。生活保護の根拠になっている条文です。              <第29条:財産権>昔は国が財産を取り上げた時代もあった。戦争時代は鍋や釜まで取られました。こんな事に対して財産は守るということです。                                        <第31条~第40条:身体の自由>警察・検察から抑留や拘禁などを受ける際に、過度に権利を制約されないことを保障する規定です。「公開の法廷で裁判をする」「令状がなければ逮捕されない」「弁護士の選任」「拷問禁止」「国家賠償請求の権利」などが規定されています。

【②憲法に記載されていない権利(環境権や知る権利など)は憲法上保障されていないので、憲法改正手続きが必要か?】
答えは「不要」。憲法上保障すべき重要なことは、すでにある条文を含めて保障されるという解釈があります。「知る権利」は条文にはありませんが、第21条の表現の自由で保障されていると裁判所は判断します。
【③憲法が私たち国民に求めていることは何?】
答えは「不断の努力」です。第12条です。黙っていると権利が失われていきます。
【④憲法改正には有権者全員の過半数の賛成が必要か?】

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答えは「不要」。第96条。各議院の議員総数の3分の2以上の賛成で発議し、投票総数の過半数を超えた賛成が必要です。投票率が20%だった場合、その過半数である有権者の10%強の賛成で改正できるということもあるのです。

まとめ

 自民党改憲草案は、平和主義の放棄、天皇の元首化(国民主権の後退)、国民が国家を守る義務の増加(国防義務、「日の丸・君が代」尊重義務)、家族助け合い義務、環境保全義務、地方自治分担義務などを条文にしています。今後、どんな改憲案が出てくるかが問題になります。

質疑応答

【小林】

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 公共の福祉ということで権利の対立について説明があったが、たとえば西成区では公園でホームレスの人が生活しているケースがある。ホームレスにしたら居住権の自由を主張する。しかし、公園を利用する親や子どもからすると自由に遊ぶ権利が奪われている。ここに権利の対立が生じるが、お互いの権利が認められるためにはどう対処すればいいか。

【大橋】

c%c2%84e%c2%8c5                                       100%どちらかの権利を選ぶことはできない。弁護士の立場からすると、公園で寝ることを権利として主張することに対しては人によって意見が異なってくるところだ。お金がなければ、生活保護費を支給してアパートに住んでもらうなど自治体がするべきという考えもあるが、生活保護が嫌という人には話し合いが必要。他の事例でホームレスが公園をきれいに管理して半ば自治しているところもあったので、話し合いと共存の中で解決しなければならない。一方的な封鎖などは絶対にいけない。

次回のご案内

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第2 5 回フォーラムにしなり

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1 0 月 6 日( 木) 午後6 時3 0 分~

於:にしなり隣保館「スマイルゆ~と あ い 」