VOL25「大阪市の教育課題について」

大阪市の教育課題について

無題2

岡本共右 大阪市教職員組合書記長

はじめに                   小林 道弘 前大阪市会議員

無題

昔は地域の小中学校を忌避する越境入学という問題がありました。しかし、最近は進学校先の公表や学力テストの結果公表などの情報公開をして学校選択制が進められています。学校を選ぶ自由もある半面で、学校の偏在化にもつながっています。たとえば児童生徒数の偏りにより学校の統廃合が進められ、西成区でも今年度から弘治・今宮・萩之茶屋の3小学校と津守・梅南の2小学校が統合されました。
このように子どもたちの教育を取り巻く状況は大きく変わってきています。今後の大阪の教育の在り方について皆さんと共に考えていきましょう。

身近な出来事から教育を再考

最近、「自分の孫がどう育ってほしいか」というその願いが教育であると考えるようになりました。この願いはそれぞれの立場で変わってきます。「勉強ができる」「健康である」「夢を追う」「やさしい」「自分で考えて行動」「強くてたくましい」「人のために役立つ」「競争に勝てる」「善いこと悪いことの判断ができる」とさまざま。これらの願いで一番は何でしょう。この一番の願いが社会と親の間でズレが生じてきているのではないでしょうか。大切なのは、願いをかなえるために学校でどういう教育をしてほしいかです。
次に学力を考えてみます。大阪は全国一斉学力テストで45位と下位でした。しかし、去年大阪の中学校が大きく躍進しました。なぜかと言うと、全国学力テストの結果を内申点に結び付けたからです。つまり、もともと成績の良い子にさらに内申点の高い評価が加えられたにすぎず、必ずしも教育実態を正確に反映したものとは言えなさそうなのです。
ところで、大阪が低いと言われる45位ですが、次の表を見ると全国と比べても大差なく、大阪が極端に低いとは言えません。

全国小学校の国語平均点                           全国:72.9 大阪:71.3                             全国中学校の国語平均点                           全国:66.5 大阪:63.3

社会がどのように子どもを育てるのか

橋下さんが知事に就く前の教育は、経済・家庭・社会的課題を抱えた子どもたちに学力と生活習慣を身につけて社会に送り出す、というぬくもりのある教育を目指していました。この方針のもと学校が地域のコミュニティ拠点となり、地域と学校が協力して地域社会の中で子どもを育てていました。
橋下知事誕生以降、教育行政基本条例と学校活性化条例の2つの条例ができ、次のことが実施されるようになりました。
①知事・市長が教育委員会と協議し教育目標を設定。これにより、競争主義・グローバル化を重視し、学校の平均点の公開や英語教育を重点化。
②公立高校の学区再編に伴い大阪府内の学校はすべて受験可能。同時に、3年連続定員割れの場合は再編対象。その結果、学力のしんどい生徒が通っていた高校が統廃合。
③校長公募制の実施。問題のある公募校長が続出し、教頭応募者激減。
④区長の教育次長兼任。進学先の公表。

これまでの大阪市の教育の良いところ

①マイノリティの教育権を保証する「人権教育」の取り組みは大阪がトップ。
②「多文化共生の教育」により外国籍の子どもの全日制への進学率が高い。
③「インクルーシブ教育」により障害ある子どもが通常教育を受ける割合が最も高い。
このように、これまでの大阪の教育は、課題を抱えた子どもに焦点を当てて底上げし、全体の学力を上げていこうという実践を行ってきました。

5つの教育課題から考える

①教育の無償化:学校が格差を広げる場であってはならないので、誰もが無償で教育を受けることは大事です。大学卒が一般化している時代、借金して大学に行く人も多い。奨学金で卒業しても、このお金を返していくので、生活が経済的にしんどくなっている。教育の無償化は大切だと思います。
②内申書の問題:中3の6月に一度のチャレンジテストを行い、その結果が各学校の平均点として10月に出てきます。このチャレンジテストによって内申点が左右されるので、現場の先生は、評価するのに非常に困っている。たった一度のテスト結果を内申点に反映させることはおかしい。子どもの日常のふるまいが評価されない。テストだけを評価の物差しにすると、公平に評価できないと思います。
③「子どもの貧困」の実態:子どもの貧困は保護者の問題でもあります。たとえば、シングルマザーの場合、厳しい生活実態のために保護者がSOSを出せない状況もあります。そのような親をどのようにサポートするかが課題です。「子ども食堂」には子どもを中心とした新たなコミュニティづくりという側面があり、保護者も集まってきて発展していく可能性がある取り組みだと思います。                     ④西成区内の小中学校の低学力:橋下元知事と同じく大森教育長は「テストがその子どもを評価するのに一番いい」と言っていましたが、テストの学力だけで子どもを評価するのは非常に危険で、多角的な評価が必要だと思います。
⑤学校選択制と進学先公表:公立学校がどうあるべきかという問題には、地域・学校・保護者とみんなで学校を作るという考えが必要です。この問題は地域コミュニティをどう作るのかということと合わせて考える必要があります。

フォーラムの声

無題3

【小林】今夏、大阪市の「子どもの生活実態調査」が実施され、吉村市長はその調査結果に基づいて施策方針を出すと言っていました。これまでの大阪市側の方針が子どもの実態に適した方針なのか少し疑問
もあります。そこで、実態を一番よく知っている学校の先生も今回の調査を分析する必要があると思うのですが、いかがでしょうか。
弱い者や現場の立場から分析すると結果も変わってくると思います。現場を知る先生が実態調査を分析し、委員会と協力して子どもたちに必要な施策をフィードバックすることも必要ではないでしょうか。     【岡本】調査アンケートを分析するのは難しいですが、そもそも今回のアンケートは目的がはっきりとわからないところがあります。じつは学校現場では子どもの生活状況をある程度掴んでいます。ただ、今回の調査で、現実に貧困の問題があり、子どもも親もしんどい状況にあることが、主観的にではなく客観的に数字でハッキリしたことが大きいと思います。今後それらに対して行政的に学校もどういった手だてを打つべきかが必要になってくるでしょう。

無題4

【稲田(市教組委員長)】教師の労働組合や教師独自では教育委員会に施策を提起したりすることは条例によりできない状況です。そこで、市民のネットワークを通じて貧困の問題などに対応する必要があると認識しています。また、非正規雇用の問題なども労働組合は考えなけれ
ばならない。ですから、一つの組織だけで動くのではなく、様々なネットワークの中で絵を描いていく必要があると思います。

無題5

【小林】過去、西成特区構想で西成区では教育バウチャー制度がありました。一定の成果があったようですが、これは現場から求めたものではありませんでした。吉村市長も今回の調査を受けて施策を出すと言ってていますが、分析結果に基づいた施策が現場のニーズに合っているかどうか不安があるので、現場から提案できないものかと思った次第です。

無題6

【寺本】解放同盟大阪府連も大阪市の教育課題について検討しています。現在の大阪市の教員の給与は大阪府が支払っています。しかし、来年4 月以降は大阪府からの権限移譲により大阪市独自で予算を組んで、教員給与を支払うことになりました。大阪市独自で教育を進めら
れるというメリットもありますが、大阪市の判断で教育の予算を増やせる一方で、逆に予算が減る可能性もあるという問題もあります。
このような状況下で内申点の問題も出てきています。鶴見橋中学校の先生は子どもの努力を加味しながら内申点を付けてきました。しかしそれができなくなり、普段の努力が認められないようになります。こうなれば切り捨てられてしまうことが目に見えます。
また、教育の無償化も出てきていますが、これで得するのは中間層であり、しんどい層は何も変わりません。この層を支えることが大事です。子ども食堂に来ているしんどい子どもたちの現状を見ていると、この子たちを切り捨てることはできません。今後教育の在り方そのものを解放同盟・教職員組合を含めて考えて、ネットワークを構築していく必要があると思います。                                【加藤】学力テストの説明がありましたが、①教科別の評価の結果はどうですか。②男女別ではどちらの成績がいいですか。③教員の子どもの成績はいかがですか。                           【岡本】①まず教科別ですが、基本的に全部点数は低いです。②次に男女別では女の子の方が平均点は高いです。③教員の子どもの成
績は統計がないのでわからないですね。
相対的に見て応用問題の平均点が低いです。たとえば小学校の国語の問題は文章問題があって、これを最後まで読まないと問題が解けません。しかし、しんどい子は最後まで文章を読まないので問題を解くこ
とができません。応用問題で差がつくようです。             【参加者(女性)】子どもの貧困に関して、子どもが3食摂れていないのは、本当に貧困で食事が摂れないのか、それとも親の怠慢などで摂れていないのか疑問に思います。

無題8

【岡本】この問題はていねいに考える必要があります。お金があっても子どもの面倒を見ないということがありますが、しかしただ単にサボっているとも言えない場合があります。その親の生い立ちを見ていく必要もあります。親自身がしんどい環境のなかで育ち、子どもにどう接すればいいのかわからないこともあります。だから、保護者が悩みを打ち明け情報を共有して解決するためのネットワークが必要だと思います。

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【参加者(男性)】今問題になっている子どもの格差とか貧困はグローバル化が元になって起こっており、これらの子どもの現状を変える闘いは、グローバル化との闘いだとも思いますが、どう考えますか。     【岡本】グローバル化を考えるとき、評価の物差しを一本化してきたことが問題だと思います。昔は子どものそれぞれの個性の居場所がありました。また大阪では外国籍の子どもも多くいて、その子どもたちが地域や学校での居場所を作ることが本来大事なことです。それをグローバル化という名で阻害していくことによってこぼれていくことはダメだと思います。

無題11

【参加者(男性)】教育委員会や橋下市長が進めていた「グローバル化」について教職員組合はどのように認識されどのように対応しようと考えていますか。                                   【岡本】教職員組合としては「グローバル化」ではなく「多文化共生教育」を進めていくべきだと思います。教育委員会の「グローバル化」とは実質的には英語教育を進めることですが、英語教育だけではダメで、いろいろな国の文化を知る必要がありますし、多様化していく社会の中でどう適応していくかが大事だと思います。

まとめ(小林)

教育の課題は様々な課題があり、一口にまとめられません。現在多様化の時代、生活も考え方もいろいろです。だからこそ大事なのは、一人ひとりの子どもをしっかりさせることです。子どもの背景である親の生活・地域を見れば、確かに厳しくしんどい家庭も多くあります。しかし、そこに甘んじることなく学校・地域・社会が連携して取り組んでいくことが必要です。子どもは生きていく中で変わります。その子どもたちを私たちがしっかり支えていくことが大切です。

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