Vol.0 設立準備会ニュース

名前のない座談会
『政治と生活の溝を埋める』

「地方分権」、最近では「地域分権」とさえ言われるようになってきました。しかし、家庭ごみの収集一つとっても、市民のニーズは多様で、一つにまとめていくのは大変だと思います。それなのに、議会で議論されていることと、日常の地域の話題がかみ合わないことも多々あります。このミスマッチを解消するにはどうしたら良いのか・・・。西成区で活動する有志が座談会を始めました。いまは「名前のない座談会」ですが、近いうち名前もつけ、お誘いもしようかなと思っています。この座談会は、7月10日、西成市民交流センター会議室で行ったもので、要旨を紹介します。

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岡本 茂 さん
一般社団法人タウンスペース
WAKWAK代表理事/高槻市

いまや全国共通の状況ですが、650世帯の高槻市の富田地区でも、少子高齢化が進み、自治会(町会)機能が著しく低下しました。長い間地区の自治を下支えしてきたのは部落解放同盟支部でしたが、同対法終結後、目立って影響力が落ち、ふれあい文化センター(旧解放会館)に事務所も専従者も置けなくなりました。老人会も崩壊していました。そこで、自治会と老人会を再建し、「富田まち・くらしづくりネットワーク」というまちづくり団体を創りました。この団体と同盟支部と、岡井すみよ市会議員事務所が共同して、事務所を設置し、その管理者でもある一般社団法人タウンスペースWAKWAKを2年前に設立しました。
設立理念は、①「すべての人に居場所と出番を!」②「SOSを発信できない人を見捨てない!」③「新しい公共のプレイヤーに!」です。主な事業は、①公営住宅の全棟建替という10年スパンのまちづくりの「グランドデザイン」を描くこと、②生きがいと居場所づくりということで「ボーダレスアート」に取り組む、③「コミュニティスペース事業」ということで、発達障がいの家族を招くなど身近なテーマでフリートークするなど、岡井議員の後援会「おはなクラブ」を名称にしたコミュニティカフェも始めます。④「生活困窮者の子どもたちの学力支援事業」を大阪府の福祉基金(20万円)で始めました。⑤同盟支部や老人会、社会福祉法人後援会等の事務作業を受託していますが、将来的には、地域の「中間的就労」に活用したいと思っています。
私(岡本さん)自身が長く高槻市会議員を務め、いまは岡井議員にバトンタッチしていますが、私たちの一般社団は、議員活動との関係がとても深い法人です。議員というのは、①市政等「情報力」があり、②議員の質問には可否はともかく市は回答しなければならないわけで「提案力」も育ち、③実際の市の政策立案過程で、役所の方々とやりとりができて、普遍性を考えながら個別の地域課題に対応するという「政策力」もついてくるという利点があります。
この一般社団設立にあたって、NPOという選択肢もあったのですが、①NPOの場合、20の活動分野に制限されますが、一般社団は無制限で、政治活動もできます。②NPOは10人以上ですが、一般社団は2名以上で始めやすい、③NPOには主務官庁への報告義務がありますが、一般社団は所轄官庁がなく報告義務がありません。④法人設立までの手続きがNPOは3~4か月ですが、一般社団は1か月です。総じて、一般社団は、「小規模」「簡易設立」「自由活動」がウリです。ただ、一般社団のデメリットは、①税制の優遇措置がありませんから、登録免許税6万円、法人府民税2万円・市民税6万円を赤字でも支払わなくてはいけません。・・・などの条件を鑑みて一般社団にしました。
一般社団で活動を始めて思うのは、社会福祉協議会の「小地域ネットワーク」等は、どうしてもテーマや活動パターンが決まってしまうのですが、別の地域活動をやっていることで、問題提起等ボールを投げていくことができたと思う。また、議員の場合、どうしても市政報告なんて一方通行になりがちだけですが、岡井議員はフリートークのコーディネーターになって、市民とつながっていけると思います。また、一般社団の一人の役員さんは民生委員協議会に入っておられたりして、テーマによっては、人が集まってきます。組織で人を動かそうとすると今は大変ですが、関心のある方をつないでいくというのが大切だと思います。

冨田 一幸 さん
株式会社ナイス 代表取締役

経済の分野では、コミュニティ・ビジネスとかソーシャル・ビジネスが活躍し始めましたが、政治の分野でも、政党や団体とは違う「新しい挑戦」が始まる予感がします。
小泉さんと細川さんの新エネルギー開発の一般社団法人設立や、社会活動家湯浅誠さんが「場づくり」を提唱し、哲学者の中島岳志さんが「橋渡し型(ブリッジング)」の社会運動を提唱しているのは先駆なのでしょう。第一次民主党は、「市民との協働」とちゃんと言っていたんですけど、いまはどこかに行っちゃった感じです。リベラルとは「違いを認め合う(共生・共働)」ことで、そこに共感している人々の「居場所(スペース)」と「出番(プレース)」を考えようということが、政治の分野の「新しい挑戦」なのではないでしょうか。橋下市長は、すぐに「最後はトップが決める」が口癖ですが、それと真逆の「中間的な場」、合意を重ねあうという場が必要なのです。
「大阪都構想」を提案して、自治(統治機構)のあり方を問い直そうという橋下市長の構想は面白いと思いますが、他の政党は対案も出さず反対するから、今どきあまりにも保守に見えるのです。しかし、橋下さんは、都と区の役割分担と言いながら、「都」を語るだけで、「区」については福祉等市民生活を任すと言うだけです。ところが、その「区」が担うべき福祉や市民生活が構造的に変わろうとしているのです。例えば、幼児期と高齢期だけで良かった福祉が、若者等稼働年齢にも必要になった(就労支援等)、それだけ財源も必要だし体制も必要だが、これを低コストでやるにはどうするのか等、一つも議論がありません。「西成特区構想」は、西成区(あいりん地区)を、ボーリングのセンターピンと見立てて、一点突破し、区内、都に広げるというふれこみで、私は、画期的な構想だと思いますが、橋下さんは、これしか言いません。まさに「西成区をえこひいき」しているだけです。浪速区や西成区には5000戸を超える市営住宅がありますが、「区」になったら、これを「若者支援住宅」にも活用し、公営住宅入居の介護を要する高齢者には、サービス付き高齢者住宅への家賃補助付き転宅を推奨する等、「区」で福祉が変わるというようなイメージを出さないと、けっきょく「都」に財源と権限が集中するだけではないかと思われてしまいます。
橋下さんは、統治機構を変えると言うだけ、他の政党は、「福祉を変えよう」「市民生活を変えよう」と一つも言わない。でも、変えると言うだけ橋下さんの方が支持が多いのは、それだけ、政治と生活がミスマッチしているからです。議員は、その現実をしっかりボトムアップすることです。でも、一人でできっこありませんし、政党の中でもまとまらなかったりしますから、別の中間的な「場」が必要なのかもしれません。一般社団法人で政治政策活動というようなことです。市民の中にも、そういう場で活動してみたいと思う人が増えているのではないでしょうか。

高見 一夫 さん
Aダッシュワーク創造館 館長
中小企業診断士/八尾市

社会がいま直面している「変化」について、私は、つい最近まで「軽い変化」と思っていましたが、どうも「価値観の転換」も含めた「大きな変化」が起こっている時代だと思います。ですから、渦中の人は少数者の運動と思っていても、それが大半の人の心を捉えることもある、メインストリートだと胸を張って言うことです。
ドルショック(1971年)やオイルショック(1973年)を経て「産業資本主義」というものが終焉を迎え、やってきたのが「金融資本主義」。世界各国が金融緩和し、お金がじゃぶじゃぶ流れている。お金が世界をうろうろし、国が簡単に破綻する時代になりました。リーマンショックが数年に一度起こり、バブルが繰り返され、バブルで儲ける資本家、バブルで弾ける中間層で、社会は二極化しました。労働分配率は引き下げられ、金融の金利ゼロ、つまりは会社の利益がゼロ、ということは利益の増殖がないという意味で、これは資本主義の終焉です。そこから、「次の資本主義」ということがテーマになってきました。ところが、アベノミクスはいまのところの評判は良いみたいですが、従来の自民党の経済成長路線と変わらない、2%のインフレを無理やり操作しても投資先がなく、必ずバブルを招き、破裂してしまって多くの企業を没落させるのではないでしょうか。何とか、このアベノミクスをソフトランディングさせないといけません。「グローバル化」と「地域分権」で、国家の役割が問われていますし、我々のスタンスも問われているのです。
そういう視点で、少し話題を切り出してみましょう。「里山資本主義」というのは、過疎地を再興させる取り組みのコンセプトの一つを本の題にした言葉ですが、この本が売れていますし、中国地方の農業や林業の再活用がいま注目されています。「エコノミックガーデン」というのは、企業を誘致するのではなく、地元企業を発見して成長させるという試みで、いま八尾市が注目されています。「女性資本主義」という言葉は、「開拓/征服/自己満足/利己主義」ではなく、「共感/信頼/愛情/きずな/利他主義」に代わるという意味です。「シェア」つまり「共有する」という意味ですが、負担も共有するということと理解されています。「モノからコトへ」というのは、ブランド物や車ではなく、自転車がかっこいいという価値観の転換を言い表しています。「ソーシャル」という言葉もよく使われるようになりました。大阪の中小企業は、パイは小さくなったが、元気。日本の部品がないと製品ができない、それぐらい部品輸出は伸びています。都心型から郊外型というのはもう昔の「集客」、これからはお客さんに近づく、配達サービスが伸びてくる。アベノハルカスも、客足の伸びに売上げが追いつかない「オーバーストア現象」です。
「地域資源」を見直す、言い方を変えれば「生きにくさ」を見直す、これが、地域改革、事業化のヒントになります。ソーシャル・キャピタル(人間関係資本)とは「ツーカー」ということ。縁とか恩とか情とか、ウェットな関係が持つ効率性を再評価することです。つまり、冒頭述べたメインストリートを歩くということです。
政治政策的な一般社団を創るにあたってですが、大阪の高齢者大学というのは、行政の補助金もなくなったけど、年会費3万円程で活況で、「大学」というのはヒントですね。また、「利用会員」と「活動会員」を分けることや、無償・有償の併用も良いと思います。女性を中心にしてタテじゃなくヨコを大事にした運営が良いでしょう。出入り(入会・脱会)は自由にし、意思決定はちゃんと情報提供するようにし、事務局はファシリテートに徹する、「全日本おばちゃん党」のような発想が面白いと思います。

小林 道弘 さん
大阪市議会 議員

私は、橋下市長には是々非々でやってきたつもりです。公募区長や外部校長等は評価できますし、慣習や組織に縛られてきた市政を解き放ったことや、物事決めるスピード感には感心しました。何より、市長との質疑には準備に時間をかけて緊張した討論ができました。しかし、やっぱり、市長と維新の会の代表との二足の草鞋は良くなかった、特に国政政党になって、足元が定まらなくなって、その分、議会軽視や検証なき政策が目立ったと思います。

一連の民営化政策でも、私は是々非々です。地下鉄やバスの民営化や家庭ごみの収集の民営化には、原則賛成の立場で、いかにして合意に至るかを考えてて、動いてきたつもりです。少数会派で、なかなか報道されることはありませんでしたが。しかし、水道の民営化には、私は原則反対です。命に係わるのが水ですから、公の役割をちゃんとして、むしろ事業のスリム化や効率化を検討することだと思います。

つまり、大阪市政も複雑系ということです。橋下さんはシロクロはっきりつけたがりますけど、これだけの大都市ですから、改革の合意に時間は必要です。しかし、まな板に挙げた以上、結論は出す、決は取ることです。大阪都構想も、最後は住民投票で決着つけるべきだと思います。

議員活動として、多様な市民の方と複雑系で多様化した大阪市の政策のあり方を議論し、情報交換する「場」というのは切実な要求だと思います。

荒木 幹雄 さん
元大阪府議会会議員

先日、北海道の夕張市に行ってきたんですが、少子高齢化、人口減少、公営住宅での孤立、買い物等が不便等々、それに、かって造船や鋳物工場等で膨らんだ人口が急減した(夕張市は炭鉱)等、いろんな意味で西成区の北津守に似ていると感じました。また、夕張市は、公営住宅率が全国一多いのですが、広い市域に点在して、孤立しているから、コンパクトシティと言って幹線道路沿いに集約しようとしていましたが、その集約された姿が高槻市の富田地区に似ていると思いました。コンパクトシティとしてまとめているまちづくりや一般社団活動が良いという意味です。

逆に、西成の場合、社会福祉法人があったり、株式会社(社会的企業)があったり、ある意味他の地域より恵まれた社会資源があるけれど、これらがしっかり連携できているのか、住民がちゃんと理解して活用できているのか、というところに課題があると思います。ですから、昔の解放会館のような、インフォメーション機能が必要ではないか、そういう意味も一般社団で考えてみたいと思います。

寺本良弘さん
部落解放同盟西成支部長

いまある市民交流センターが一年半後には廃館になることから、私たちは、いま「コミュニティ・カフェ」と呼んでいますが、そういう地域の「居場所」を民設置民営で創れないか検討しています。その居場所のデザインを豊富化してくれる話が、高槻富田地区の事例など聞けたと思います。コミュニティ・カフェと政治政策の一般社団のイメージはかぶると思いますが、そういう「場」が求められていることは共通しています。

西成特区構想の中身は良いけど、単身高齢者の孤立などは区内全域に広がる課題でもありますから、構想を広げていく取り組みが必要だと思います。

フォーラムにしなりVol.0 本文

岡本氏 当日資料

高見氏 当時資料

冨田氏 当日資料