Vol1 『人口減少問題』を考える

さぁ!はじめよう。
『フォーラムにしなり』

「フォーラムにしなり」が10月3日にはじまりました。呼びかけ人は、小林みちひろ氏(大阪市会議員)、荒木幹雄氏(元大阪府議会議員)、寺本良弘氏(部落解放同盟西成支部長)の3人です。
設立準備号でもお伝えしたように、低成長時代で富の分配を担う政治の役割が大きくなる一方で、なぜだか、くらしと政治の話題がミスマッチしてしまう。○か×では解決しない問題が山ほどある。こんな状況に一石を投じる「現代風の井戸端会議」がフォーラムにしなりです。発題者はいるけど、講師はいない。結論を出すのではなく、それぞれのとらえ方を合意していく。そんな、月に一度のフラットな場を目指します。
第1回は呼びかけ人の荒木さんと飯島さんが「人口減少問題」をテーマに発題し、20人を超えるメンバーがわいわいがやがや語り始めました。その様子を少しお伝えします。当日の資料などはHPをご覧ください。

【発題】荒木 幹雄 さん

2013年の中央公論12月号の「壊死する地方都市」という特集以降、「人口減少問題」が大きく取り上げられ始めました。
増田寛也元総務大臣と人口減少問題研究会が発表した通称「増田レポート」とも呼ばれるこの特集では、2005年~2010年の出生率と大都市への人口移動がこのまま続くと仮定して推計された2040年の人口から「消滅可能性自治体」と「消滅自治体」を公表しました。
「消滅可能性自治体」は20~30歳代の女性人口が半減する896自治体。「消滅自治体」は、さらに人口が1万人を切る523自治体。西成区も「消滅可能性自治体」と名指しされました。
人口推計の方法には問題点も指摘されていますが、レポートへの反応はいろいろです。「①農村たたみ論」農村に未来はないと積極的に自治体消滅を容認する派。「②あきらめ論」どうすることもできないので、自然の成り行きに任せる放任派。「③制度リセット論」ピンチをチャンスととらえて自治体の制度改革につなげようとする派。
国は「人口1億人を切らない日本」という明確な目標を掲げ、「①ストップ少子化戦略」として、「各家庭が理想の数の子どもを持てる環境整備」を。「②地方再生戦略」として、大都市への一極集中を改善する「若者に魅力ある地域拠点都市の創造」などに取り組むことを発表しています。
では、西成でこの問題にどう向き合おうか。僕は①人口増加を前提とした社会制度は成立しない。②過疎が進行する農村や都市の端を大事にすることが、地域全体を守ることになる。③IT技術の進歩により、地域の特性を活かす分散型社会システムがつくれる。と考え、④人口減少を前提としたコミュニティーやライフスタイルを西成から提案したいと思っています。

【発題】飯島 照喜 さん

西成北西部の2000年から2010年の人口の動きを紹介します。一言でいえば、「まちで見かけなくなった子ども、働く人も少なくなった工場や商店街」ということです。
この10年で2割の人口が減少(17,265人→13,560人)、高齢者も4人に1人から3人に1人となり(24.7%→36.2%)、子どもは4割も減少(2,015人→1,168人)、生産年齢は3割減少(10.987人→7,483人)しています。このまま推移すると、2035年には人口は半分以下の58,693人という予測さえあります。

この影響を①教育の視点でみると「学校の統廃合」が、②すまいの視点でみると「空家の増加」が、③働く場の視点でみると「地域経済の衰退」が浮かびあがるのではないでしょうか。
また、転入者は転出数を上回りますが、社会的困難を抱えた人達の割合が多く、「困難の一方通行」と言われる現象が起こっているとも推測されます。この状況が持続すれば、都市機能の低下や空洞化により、人口減少にも拍車がかかるという悪循環につながる可能性もあります。
ただ、悲観的な面だけでもありません。生活産業としての医療・介護分野の従事者数は大阪市でもトップレベルで、新たな産業が芽生えていることも事実です。夕張市のように「コンパクトシティ」と呼ばれる発想で、公営住宅の集約化や統廃合された公共施設の有効活用など、くらしの質やライフスタイルに重きを置いた、コミュニティーを再編することも重要ではないでしょうか。

【発言】小林 道弘 さん

もう少しリアルな話をすれば、2015年には今宮・弘治・萩之茶屋小学校が1つの学校に統合されます。1クラス55人で育った僕には想像つきませんが、萩之茶屋小学校の全校生徒数は52人です。津守・北津守・梅南・松之宮小学校も、統廃合の話題があります。
ただ、この現象が西成区全体で同時に起こっているわけではありません。新しい戸建住宅が立ち並び、人口が増加している地域もあります。現に大阪市は人口が微増傾向にあり、西成区でも南津守や玉出がそうです。一方で北津守は人口減少している。人口減少問題1つをとってみても、まんべんなく表出するのではなく、偏在して問題化するという事実は重要だと思います。
北津守では、旧公設市場の解体に始まり、延寿荘が閉鎖されました。植田工業跡地や大阪書籍跡地は手つかずのまま。長橋を走る市バスの路線も廃止と、身近なくらしの場面では「買物はどこに行けばいいの?」「病院にはどうやって行けばいいの?」という切実な声があります。
国の視点で少子化をとらえると、①生産人口の減少、②年金制度の破たん、③日本の衰退といった社会保障や国際競争力という問題になり、地方や地域だけで解決できるものでもありません。もし、国が少子化に真剣に取り組むとすれば、一番わかりやすいのは子育て世帯の若者たちの給料をあげて、不安を取り除くことです。ただ、低成長時代はそう簡単に給料も上がりません。安い給料を前提にしたとすれば、フランスなどで成果を上げた子育て世帯給付の充実や2000万円はかかるといわれる教育費の負担減などを真剣に考えなくてはいけないだろうと思います。
また、バス路線の再編に代表されるように、制度・施策も効率性が優先される時代になりました。いわゆる公共経営のありかたが問われる時代です。限られた税収の中で、一番効果をあげる手法を優秀な公務員や住民代表である議員が知恵を絞っています。公共経営の難しさは、市場原理だけではないところにあります。
例えば、バスも乗客が少なくて不要と判断された路線で、バスが唯一の交通手段だったという住民もいます。いま、大阪市は民間企業を積極的に活用し、市場原理的な効率性を重視していますが、そこから漏れ落ちる住民をどうやって支えるか。市場原理を補完する公共という立場も忘れてはいけません。その時には、行政だけでなく、民間企業だけでなく、地域住民というプレイヤーの役割がより重要になると考えています。

【発言】寺本 良弘 さん

これからは行政の平等意識も課題だと思います。最近は区長予算や西成特区構想など、それぞれが、重点的な取り組みをできるようにする動きはありますが、根っこはあまり変わっていない気がします。
学力に明らかに差があるので、教師の増員を求めても、24区同じ配置が平等だと取り合ってくれない。1人当たりの予算が平等であれば、学力差は子供や家庭の責任ということになるの?
市営住宅でも空室の増加や高齢化が目立ち、自治活動がしんどくなってきても、若い子の入居を推し進めるような動きは出てこない。いろんな世代がいて、はじめて自治活動や地域が元気になるのに。
なにが平等かというのを、しっかりと取り上げていかないと、しんどいところはどんどんしんどくなり、手の打ちようがなくなって、余計にコストがかかってしまう。

【発言】冨田 一幸 さん

もう一度、論点を整理したいのですが、人口減少問題は、人口増加?それとも減り止めを目指しているの?
団塊の世代と若者はもともとのボリュームが違います。これから理想の子どもの数とされる2.4人を達成しても、人口は増加しません。少子高齢化ということは死ぬ人も多いということです。
だから、人口の減り止め問題と考えて取り組まないと、最初のボタンを掛け違えることになります。人口も経済と同じで大きな成長があるわけではない。でも、「都市は人が集まる。経済は発展する。」前提で開発されてきました。この部分の方向転換をどうするかということが求められているのだと思います。
みんなの話を聞いていて、横浜市の方が言っていた「まだら現象」の言葉を思い出しました。全体の人口は増えているけど、団地が集積する地域の人口はどんどん減少している。全体ではなく、局地的な問題だと。いったん、人口が減少しはじめると、空家が増えて物騒になり、不便になり、学校もなくなって悪循環がはじまる。
賃貸マンションでも、最初は1軒の空室かもしれないけど、もう1軒、もう1軒と空室連鎖が続くと本当に焦ります。1軒当たりの共益費の負担も大きくなりますし、どんどん魅力がなくなっていく。公営住宅と違って、食べていくためにはこの流れを放置できないので、いま空室活用も検討しています。
みんなで使える喫茶スペースや図書スペースにすると、物件として付加価値が上がるのではないかとか、いろいろ考えています。大阪市は賃貸住宅の空室をホテル活用できる特区申請をしているようですし、空室活用で付加価値を演出することは大切です。
幸い西成には、銭湯と利用者を守った「くらし組合」の経験もあります。生協は不便な地域で流行りました。公共頼りだけでなく、住民の互助で課題を解決することもできます。もう一度、公的な役割と住民の役割を合わせて、何かできないかな。

 

みんなのこえ

○人口減少と言われてもピンとこなかったけど、バス路線が廃止されたり、お豆腐を買うには鶴見橋商店街にでなあかんようになったのは、なんとなくつながっていることが分かった。
○地域産業の衰退というけど、法人企業が減った感じはない。どちらかというと個人商店の廃業に偏在しているかも。
○この前、北津守を自転車で回ったけど、人が全然歩いてなくて、少し怖くなった。道にはペンペン草も生えているし、延寿荘はそのままでほったらかし。もう少し考えてほしい。
○浪速生野病院が大国町に移転する。急に遠くなってこれからどうやって通院しようか悩んでいるところ。まだ動けるうちは何とかなるけど、動けなくなったら、どうなるんやろ。ほったらかし?
○長橋界隈では市の未利用地に戸建て住宅が建って、子どもの声もして、すこしにぎやかになってきた。でも、松之宮の空地には、コインパーキングができるだけでさびしい。
○植田工業跡地とか他の空き地をナイスが買って、なんか建ててくれませんか?
■植田工業跡地は、国のお金が入っているので、今すぐには売買されることはないですが、4年後にはできるはずです。その時に考えましょう(笑)。
○千日前の味園ビルはテナント料を格安にして、若い子が店を構えて、活気にあふれていました。商店街も活気を取り戻すには大幅値下げとか、思い切ったことが必要かもしれない。
○商店街で気になるのは、シャッターが連続して壊されていること。最近では旅行代金のひったくりもあった。空店舗や空工場とかが増えると、治安が悪いイメージを持ってしまう。
■治安が悪くなると防犯カメラを設置する声が大きくなる。でも、補助金がないので、なかなか進まない。あいりん特区で子どもの安全を守るために防犯カメラが大量に設置された。昔だとなかなか考えられないけど、いまは賛成派も多い。
■防犯カメラはお金だけでなく、個人のプライバシーと安全の兼ね合いもあるので、難しい。でも、怖いまちには人は足を踏み入れようとしないので、治安は大事な問題。ぜひ、フォーラムにしなりのテーマにしよう。
○治安だけじゃなくて、団地のエレベーターであいさつしても返ってこないことが増えてきた。昔みたいに、団地ずまいの心得を説明して、顔なじみになるような機会があれば。

フォーラムにしなりVol.1 本文

レジメ

荒木氏 当日資料

飯島氏 当日資料