第32話 西成リフォームセンターの設立

「西成のまちづくり100話」

西成リフォームセンターの設立

 阪神大震災(1995年1月)以降、古い木造住宅の補強や修理点検が増大する中、古い住宅の修繕や模様替え、増改築の需要も急速に拡大し、住宅リフォーム市場への大手住宅メーカー、中小工務店の参入が目立つ中、こうした需要に、地域事情を踏まえた対応ができる住宅業社の必要性から、自分たちの手で解決しようという住環境問題の一つの提案として住宅リフォーム事業を立ち上げる決意をし、当時の開業資金や運営費は関連会社と地元で出資し、技術的な側面を地元建設業者、専門技術者の協力を得る形で、1997(平成9)年12月に『合資会社 西成リフォームセンター』という屋号でスタートをきりました。

 大阪市の中でも老朽住宅が密集する西成区内では、地域住民の住宅に対する不安や不満は大きく、その問題の解消は急務な課題であり、また建設業に携わる高齢技術者の雇用の拠点という側面もある一方で考慮し、地元に支えられる住宅リフォーム店を目指し、第1号店舗を地域住民との接点と交流を考えて、なにわ筋と鶴見橋商店街の結束点(6番街)に店舗をかまえ、当面は細かな住宅の修繕、改修の相談を中心に住宅リフォーム工事を受注し、公的窓口としての生活相談業務もフォローする形で、総合住宅相談サービスへと展開を広げていきました。また2000(平成12)年から始まった介護保険制度の導入に伴い、高齢者や障害者への住空間サービス提供の必要性も後押しして、段差の解消、手摺の取り付け、和式便所から洋式便所への改修といった福祉的要素を含んだバリアフリー工事の受注も急増し、公的補助を活用できる案件は申請手続きのサーポートを含め、より快適な居住空間を個人の費用負担の軽減に繋げる形で提供できる取り組みをしてきました。

 今年で設立17年、これまでの道のりは決して易しいものではなく、施工技術の信用、実績の面で地域住民に定着するまではかなりの時間を費やしました。当初の主な工事内容も住宅工事というよりは水道パッキンの交換、水漏れ補修、そして電球の交換といった日曜大工的な小さな修繕が多数を占め、工事数にしても年間数十件の受注が精一杯の状況でしたが、年を追うごとに地域住民から信頼も得ることができ、工事件数がスタッフの経験と自信に繋がり、現在では大小の修繕を含めて年間約250件の改修工事を手掛けるリフォーム業社へと成長し、地元のリピーター数も1500世帯を超えました。

 時代は高齢化社会に入り、身体のケアならず安心して生活ができる住居のケア(修繕)を担う地域密着型のリフォーム業社として今後より一層の技術の向上を図り、また同時に技術者(職人)の育成にも力を入れ、安心して暮らせる街づくりに貢献しようと、現在は『株式会社ナイス リフォーム事業部』として鶴見橋から長橋に拠点を移して活動をしています。

 資料:西成リフォームセンターの設立

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第31話 民間活力導入による都市型生活関連産業振興施設建設構想

「西成のまちづくり100話」

民間活力導入による都市型生活関連産業振興施設建設構想

 2001年からの旭2丁目の産業振興施設建設構想は、財政事情などによりいったんとん挫しましたが、大阪市と西成地区街づくり委員会は、2006年、再び、「民間活力導入による都市型生活関連産業振興施設建設構想」をまとめることになりました。
 地元からは、あらためて、大阪市有未利用地が景観的にも、衛生面でも、防犯面でもまちづくりを阻害していることから、旭2丁目の土地活用は焦眉の課題であるが、財政面から構想が頓挫した経過を踏まえ、民間活力の導入による再検討を求めました。市有地を事業用定期借地権付きで民間事業者に有償貸与し、民間の資金で産業振興施設と上階の賃貸住宅を建設するというもので、大阪市は、土地代を貰いながら産業振興施設を運営し、民間事業者は、賃貸住宅を建設、運営するというものでした。
 2001年の検討時より、少子高齢化やライフスタイルの変化など社会経済環境の変化は顕著で、購買力を持った高齢者市場は拡大し、ユニバーサルデザインの需要は高くなっていました。都市型生活関連産業での新規創業や既存事業所の新分野進出の支援が、大阪経済への再生と西成の発展につながると考え、地元では、民間事業者を広く求めるだけでなく、地元から事業者を創ることも含めて熱心な誘致を行いました。
 地元からは、地域活性化事業として新たに、1.コミュニティ・ビジネスの育成拠点、2.西成製靴塾や津守焼きの実績を踏まえた人材育成、3.新たに設立されていた「にしなりくらし組合」と連携したユニバーサルデザイン商品開発ためのモニタリング事業などの提案も行いました。また、入居者確保の観点もあって、産業振興と就労支援を合体する構想も検討し、2001年以降設立されていた大阪市地域就労支援センターのサテライト事業も提案しました。
 住宅事業についても、1.SOHO型住宅や雇用促進住宅という「しごと対応型住宅」、2.ファミリー向け賃貸や、ライフステージの変化に合わせて間取りや内装を変えられるスケルトン住宅などの「良質な住宅」、3.ニート等のグループハウスや高齢者下宿など「福祉対応型住宅」、4.一人暮らし用レディースマンションやケア付きひとり親家庭住宅等「女性や子育て世帯対応住宅」などの構想を検討しました。
 民間活力導入型で画期的な構想検討で、大阪市も前向きでしたが、飛鳥会事件などによる同和行政への逆風、大阪市の行政機構改革の政治焦点化の中で、新規事業への風当たりは急速に強くなり、構想熱は急速に冷めていきました。いまから考えても残念な構想断念でした。

 資料:民間活力導入による都市型生活関連産業振興施設建設構想

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第30話 都市型生活関連産業振興施設構想

「西成のまちづくり100話」

都市型生活関連産業振興施設構想

 西成地区のまちづくりの中で大きな比重を占めたのが、地区内に散在する大阪市有未利用地の活用でしたが、旭二丁目の藤川金属西隣の土地活用の検討も重要なテーマでした。ここに産業振興施設を誘致できないかと街づくり委員会が提案したことから、検討が始まりました。
 2001年(平成13年)6月に「産業振興施設懇談会」が設置され、大阪市と街づくり委員会にDAN研究所、櫂建築事務所、中小企業診断士の高見一夫氏が参画して、検討が始まりました。
 着眼点は「都市型生活関連産業」でした。西成の地場産業である皮革・製靴産業は、分野としては生活関連産業で、この分野は今後成長が期待され、生活者のニーズも広がり、新規参入と創業の可能性が高いとみていました。少子高齢化社会を見通して、ライフスタイルの多様性に対応することで、皮革・製靴産業をコアにしたファッション産業、生活関連産業を振興するインキュベート施設を誘致しようと考えたわけです。
 懇談会では、「大阪産業創造館を中核とした『ものづくり振興ネットワーク』の一翼を担う産業振興施設」という仮説を立て、施設コンセプトを「消費財を中心に、市場とマッチする新製品開発・創業拠点」としました。施設の機能は、1.インキュベート・スペース提供機能(研究試作ラボ、レンタルオフィスのイメージ)、2.支援サービス機能(経営効率化と新事業創出のコーディネートサービス)、3.開発支援機能(売れる商品開発のための情報提供と事業性評価)、4.人材育成・交流機能(ものづくり人材育成と交流・コラボレーションによる市場創出)の四つと位置づけました。
 この産業振興施設によって、全市的には、1.創業の促進2.新規事業展開の促進3.既存産業集積の活性化4.雇用増大・定住の促進5.都市活力の増進という波及効果が得られ、西成の地域的には、1.まちづくりの推進(福祉人材開発研修センターとなにわ筋に並立)2.創業期企業の集積3.地域と創業期企業の交流拠点4.新聞や創業期企業(企業家)の育成(地域の新事業と人材育成)が期待されると予測しました。元々、福祉に熱心だった西成地区では、ユニバーサルデザイン(年齢や能力に関わりなく全ての生活者に適合するデザイン)や、高齢化によって新しい生活産業が成長することに関心を持っていました。
 この産業振興施設構想は、2001年(平成13年)構想策定調査、2002年基本計画、2003年基本設計、実施設計、2004年着工、建設、オープンのスケジュールを建て検討が進められましたが、大阪市の財政事情や政策変更で、残念ながら構想倒れに終わりました。しかし、その後、地元での政策要望は続き、民間活力の活用による再検討が行われることになりました。

資料:都市型生活関連産業振興施設構想

「西成のまちづくり100話」

都市型生活関連産業振興施設構想

 西成地区のまちづくりの中で大きな比重を占めたのが、地区内に散在する大阪市有未利用地の活用でしたが、旭二丁目の藤川金属西隣の土地活用の検討も重要なテーマでした。ここに産業振興施設を誘致できないかと街づくり委員会が提案したことから、検討が始まりました。
 2001年(平成13年)6月に「産業振興施設懇談会」が設置され、大阪市と街づくり委員会にDAN研究所、櫂建築事務所、中小企業診断士の高見一夫氏が参画して、検討が始まりました。
 着眼点は「都市型生活関連産業」でした。西成の地場産業である皮革・製靴産業は、分野としては生活関連産業で、この分野は今後成長が期待され、生活者のニーズも広がり、新規参入と創業の可能性が高いとみていました。少子高齢化社会を見通して、ライフスタイルの多様性に対応することで、皮革・製靴産業をコアにしたファッション産業、生活関連産業を振興するインキュベート施設を誘致しようと考えたわけです。
 懇談会では、「大阪産業創造館を中核とした『ものづくり振興ネットワーク』の一翼を担う産業振興施設」という仮説を立て、施設コンセプトを「消費財を中心に、市場とマッチする新製品開発・創業拠点」としました。施設の機能は、①インキュベート・スペース提供機能(研究試作ラボ、レンタルオフィスのイメージ)、②支援サービス機能(経営効率化と新事業創出のコーディネートサービス)、③開発支援機能(売れる商品開発のための情報提供と事業性評価)、④人材育成・交流機能(ものづくり人材育成と交流・コラボレーションによる市場創出)の四つと位置づけました。
 この産業振興施設によって、全市的には、①創業の促進②新規事業展開の促進③既存産業集積の活性化④雇用増大・定住の促進⑤都市活力の増進という波及効果が得られ、西成の地域的には、①まちづくりの推進(福祉人材開発研修センターとなにわ筋に並立)②創業期企業の集積③地域と創業期企業の交流拠点④新聞や創業期企業(企業家)の育成(地域の新事業と人材育成)が期待されると予測しました。元々、福祉に熱心だった西成地区では、ユニバーサルデザイン(年齢や能力に関わりなく全ての生活者に適合するデザイン)や、高齢化によって新しい生活産業が成長することに関心を持っていました。
 この産業振興施設構想は、2001年(平成13年)構想策定調査、2002年基本計画、2003年基本設計、実施設計、2004年着工、建設、オープンのスケジュールを建て検討が進められましたが、大阪市の財政事情や政策変更で、残念ながら構想倒れに終わりました。しかし、その後、地元での政策要望は続き、民間活力の活用による再検討が行われることになりました。

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