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月刊なび152号より 世界遺産のような中間支援組織認定
 投稿日時: 2019/09/30
 先般施行された大阪府ハートフル条例を読み解くキーワードの一つが、福祉と市場に橋を架ける「中間支援組織」を認定するということ。これって世界遺産登録のようなものだと例えると、想像力を広げてもらえるだろうか。エルチャレンジは、ビルメン市場でその役割が顕著と評価されて、先頃認定第一号となった。Aダッシュワーク創造館は、製靴産業や大正区のものづくり産業、はたまた青森県のりんご生産や石川県の温泉旅館等にアプローチしていて、近々認定候補にノミネートされるのではないかと期待している。
 わがまちの西成製靴塾もそんな大志を抱いても良いと思う。製靴塾は行政の財政補助を全く受けずに、もう20年続けてきて約200人の修了生を送ってきた。この際、カリキュラムや支援体制を文字化して、ハートフル条例審議会に提出する準備をしたらいいと思う。ひょっとすると、Aダッシュと共同体で認定申請が良いのかも。その際、民設民営のにしなり隣保館のサポートを忘れずに記述して欲しい。
 Aダッシュは、俗っぽく言えば橋下改革や民主党政権の事業仕分けという「逆風」に耐えてきた。製靴塾も似たような境遇を経てきた。橋下さんはもういないけど、吉村知事や松井市長が、改革の跡地に咲いたこの花を慈しんでくれると、
ボクは期待する。
 さてさて、話は思い切り飛んで政治の話。安倍一強の原因は野党の人気がないからと言われて久しい。安倍与党が野党のお株を取ってしまっているとも指摘される。最低賃金が典型で、官邸主導で最賃が上がっているかに見える。「シッタカ」じゃないが、最賃には地域最賃だけじゃなく「特定最賃」つまり地域別産業別最賃というのもある。皮革とか製靴産業などは、産業分布が一定地域に集積し
ていて、この特定最賃に向いている。何よりその産業の関係者の円卓会議が面白そうだ。ボクは、安倍さんの最賃にはストーリーが不足していると思う。つまり、就労支援や企業支援の全体像がわかりにくく、最賃が景気対策にしか見えない。悲しいかな、野党の最賃政策もほとんど同レベルだと思う。だから、「安倍最賃、麻生最賃」に化ける。
 ボクは、最賃も就労支援も生活産業も、そして地域再生も一体となったサクセスストーリーで描いてみたいと思う。特定最賃なんて風呂敷まで広げて、円卓会議をやってみたい。
 ボクはかねがね、都市には、人々が暮らす「地域」とともに、人々が働く「流域」とでも言い表す「コミュニティ」があると言ってきた。地域再生ならぬ「流域再生」、ハートフル条例による中間支援組織認定に、そんな夢を膨らませている。政治に話が飛んだのは、政治家や政党に、とくに野党に、この話を拾って欲しいと思ったからだ。

株式会社ナイス
冨田 一幸

月刊なび151号より 障がい者が法を変える
 投稿日時: 2019/09/03
 「れいわ」の重度障がい者が参院比例選挙の特定枠から立候補した時、よくこんなこと考えたものだと仰天した。当選の確率は高そうだった。そうなると、通勤や通学には認められていない介助保障を国会議員にどうするのだろう、ワクワクしながら見てた。法律が認める「合理的配慮」を運用して参院負担するか、いやいや一気に法律改正してしまうか。頑なに障がい者議員の自己負担を求めるか。障がい者国会議員を前に、ごまかしは効かないと思った。
 始まってみると、当事者パワーはやっぱり凄かった。あっという間に参院負担が決まった。でも、それで済む問題ではない。すかさず、障がい者議員は、「私を特別扱いするのか!一刻も早く法律改正を」と質問書を提出した。
 各党、言い方には多少の差が出た。維新の会代表でもある松井大阪市長は、執拗に「議員特権はダメ」とこだわって、山本太郎さんに「昭和のオッさん」呼ばわりされた。本論から逸れたやり取りをあれこれ論じる気はない。松井市長も法改正は必要と言明した。
 これからどうなる。そもそも障がい者の総合支援と大きく構えながら、通勤介助は企業負担と逃げてしまった欠陥の総合支援法だ。さいたま市の女性の重度障がい者が、市役所に直談判したのは2017年7月。市も厚労省に要望したが埒があかない。業を煮やした市は、今年から市独自で通勤介助保障を作ってしまった。このさいたま市の女性障がい者が井戸を掘ったエラい人だ。それを知っているだろうから、れいわの2人も参院特例なんかでは引き下がれない。
 こんなことを目の当たりにして、一体ボクらは何をしてたんだろう、政党も何をしてるんだろう、そう思わせた。だからと言って卑下するんじゃなくて「福祉は当事者が与党、野党が与党」、しみじみそう思う。障がい者議員にそう気づかされた。いま良い経験をしているということだ。
 ボクは、松井市長は合点さえいったら行動は敏な人だと思う。府知事時代の最後には、障がい者就労支援のハートフル条例を改正してくれたから。さいたま市のように国に働きかけてくれると期待もする。さもなくば、大阪市は独自の制度を作ることも辞さないと啖呵を切ってくれても良い。それなら、ボクは、市長の多少の言葉足らずは気にもならない。
 公的通勤介助保障に法律を改正すると言っても、企業の負担はなくならない。公的保障に合理的配慮を重ね合わせることになる。1つの例が大阪府の就労支援条例で考慮された「就労支援費込労務単価」。自治体は就労支援費を予定価格に積算し、企業は雇用する障がい者の実情に合わせた支援計画と突合させる。府認定の中間支援組織がこれをコーディネートし、審議会が検証する。よくできたこの制度は当時知事だった松井市長の功績で、今年の4月から実施されている。上述に「福祉は自治体が与党」と付け加えることもできよう。何せ当事者パワーはすごい!

株式会社ナイス
冨田 一幸

月刊なび150号より 最賃の全体像を見よう
 投稿日時: 2019/08/01
 最賃(地域包括最低賃金)は、10月から全国874円、大阪936円になったのだが、参院選の公約で、自公国民は1000円、立憲は1300円、社民共産は1500円と掲げた。ボクは、各党の説明不足がちょっと歯痒かった。
 とりあえず時給1000円(月額16万円)なら、法定福利費等を足すと約1・4倍にはなるから1400円(月額22・4万円)が経営側の負担となる。この「労務単価」で商取引の発注側と受注側が合意しているかと言うと、発注側の仕様書がそうなっていないことがままある。入札など契約段階での価格競争も重なって「半値八掛け」になる場合もある。最賃は法律で定められても、労務単価の遵守は法律では定められていない。
 さらに、新規社員教育や障がい者雇用などに掛かる間接人件費等が仕様書に積算されているかと言えばそうではない。つまり就労支援費は労務単価に積算されていない。とりあえず就労支援費等を労務単価の5%程度と仮定して加算し1500円を「福祉単価」と呼んでおく。
 つまり、最低賃金1000円は労務単価1400円、福祉単価込みなら1500円だと想定して、それらを連動させるフェアトレード(公正契約)な政策を、政治は論じるべきだ。ここを間違うと、最賃引き上げが生産性だけを争点にし、障がい者等の雇用や人権の論点を失わせかねない。
 ボクは、ずっと「総合評価入札」と「就労支援費込労務単価」で障がい者や就職困難者の雇用を創出すると言い続けてきたが、この4月、大阪府でユニバーサル就労条例(正式には「ハートフル条例」)が施行された。ところが、それでも最賃で生活できるか疑問だ。最近話題になった「老後2000万円」が参考になる。厚生年金受給者(平均月額18万円として)の老後でも月額5万円足りないというのだから、これを現役世代にあてはめると、個人差はあるが、少なくとも月額25万円、時給にして約1500円になる。これが「生活(できる)賃金」とすれば、その労務単価は時給2100円、福祉単価込みなら約2200円だ。
 労務単価の積算根拠に、最低賃金ではなく生活賃金を充てるところまで含めると「社会指標」になる。つまり、生活賃金1500円を基準に、生産性と「共生性」の向上を社会指標としたうえで、法定下限額の最賃を設定するということだ。「守る最低賃金」と「めざす生活賃金」を併記し、守るにはペナルティ(是正)、めざすにはインセンティブ(奨励)、それが政策だ。
 例えば、自治体は自ら発注する委託業務を、少なくとも最賃を払える労務単価と福祉単価で積算し、公正な契約制度(総合評価入札等)で運用する。その上で、生活賃金で労務単価を積算できるよう発注側と受注側、さらに受益者でも負担者でもある市民の「三者」が合意をめざす。一朝一夕にはいかないが、これは税と社会保障の関係と似ている。
 決まった最賃は守る、それは法治国家日本の良いところ。でも、市場での契約規整は自由競争で野放図、それが自民党政治の悪いところ。社会指標(対案)を示さないまま「最賃上げろ」としか言わない、それが野党の頼りないところ。ボクは、それらが歯痒いと思ったのだ。

株式会社ナイス
冨田 一幸

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