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月刊なび148号より 共生都市を思い描く
 投稿日時: 2019/06/05
 4月1日から懸案だった大阪府ユニバーサル就労条例(改正ハートフル条例)が施行された。府が発注する公契約業務において障がい者等就職困難者雇用を条件にする総合評価入札を義務付ける条例だ。就労支援があればすべての人々が安
心して働けるというのがユニバーサルの意味で、自治体自身が範となり民間にも広げるという主訴だ。
 この条例は、何かと対立が目立つおおさかの議会にあって、維新の松井知事が提唱し全会一致で可決された。松井さんは大阪市長に転じられたので、さっそく大阪市議会にも提案してくれると期待したい。また、吉村前市長はヘイトスピーチ防止条例を制定されており、大阪府議会でも改正人権条例として提案してくれると期待したい。国の省庁が障がい者雇用率改竄問題の後始末を駆け込み雇用に歪曲してしまったのと対比的に、大阪こそ障がい者雇用や人権施策をめざすべき「共生社会」のモデルと論じて欲しいと願う。
 その点、総合評価入札では①応札企業の雇用率実績は3倍まで、②当該現場の雇用計画は10倍まで加点され、③就職困難者雇用も、④企業の就労支援計画も評価される。ボクはこの大阪モデルを「共生雇用率」と命名し、ポスト法定雇用率と自賛してきた。大阪都構想が大阪市を分割廃止するだけならとても賛成しかねるが、大阪をひとつの「共生都市」と捉え、建てつけから見直していくのはアリだと思う。大阪独自の共生雇用率の算定や、率先した人権委員会設置や救済措置を伴う人権条例などを、「大阪都」のインフラにしていくというのも有意義だと思う。
 この国は、福祉だけでなく何事も旧態依然としたトリクルダウン(富めるものあっての福祉)な政治経済手法に終始しており、当分変わらないように見える。とすれば、地方から成長至上主義ではない共生社会モデルを先駆するというのは大いに検討に値するのではないか。そのために中途半端に見える政令都市制度さえも見直すという知事市長提案なら耳を傾ける必要があると思う。
 ともあれ、共生雇用率は障がい者雇用現場からの提案であり、そのずっと前から自治体連合団体等から人権法の原案も提唱されたが、当時は社会的合意に至らなかったという経緯もある。いまあらためて地方から障がい者雇用と人権の2つの社会モデルを発信するのはどうなんだろう。その際、当事者は勿論のことだが、福祉と人権がすべての人々にとっての都市共有財産であることの合意形成が肝要であると思う。そういう条例議論をやってみたいものだ。

株式会社ナイス
冨田 一幸

月刊なび147号より おおさか改革は次のステージへ
 投稿日時: 2019/05/01
 前代未聞のダブルクロス選挙は維新の圧勝に終わった。能天気なボクは、大阪府議会が総合評価入札を制度化した障害者雇用条例(ハートフル条例)改正案(ボクはユニバーサル就労条例と呼称してきた)を可決してくれたことを喜んでいた。また、松井知事が改正人権条例へ踏み込んでくれたことも評価していた。打ち明けた話、これという失点もないし、松井知事は再選されると思っていたが、突然の辞任となった。
 始まってみると、選挙戦での維新の主張は分かりやすかった。①府と大阪市は二重行政になりがちだから1つにした方が良い、②市民サービスは住民に身近な区に任せる、③民間企業にできることは委託した方が効率的、④保育教育無償化や地下鉄民営化、区役所への権限委譲など改革は進行中、⑤民意は多様だから最後は選挙や住民投票で決める、⑥バラバラの選挙は非効率だから「4重選挙」にした。
 それ自体は間違ってないかったし誇張でもなかった。ところが、①1つにするあまり政令都市の力が弱くなってしまう、②分権には市民参加が不可欠、③ちゃんとした民間に委託するためのルールが必要、④教員不足など改革には修正も必要、⑤選挙や住民投票は万能ではなく少数意見も尊重する、⑥回り道でもルールは守るべき、という当然の疑問に答えようとすると、話は少しめんどうになる。
 柳本候補はその「めんどうさ」を引き受けようとした。社会問題が輻輳する西成の出身らしいと肌で感じた。しかし、柳本候補を応援する政党陣は「めんどうさ」を逃げた。「維新は性悪、都構想は廃案しかない、維新を潰すチャンスだ」と逆の意味のシンプルさでちゃぶ台を返したから、贔屓の引き倒しだった。
 奇しくも、ボクは前号の「いい湯かげん」で、「ボクに任せて」という橋下さんに共鳴する知人女性に、「市民参加は(そんなに)めんどうか」と問答したと書いた。維新側も反維新側もめんどうさから逃げた空中戦は、あろうことか改革vs反改革に曲解され、当然のように改革側の圧勝となった。柳本候補は言いたいことの半分も言えないまま敗者となった。
 最初から劣勢の選挙となったので、ボクは「都構想の対案は柳本」と発信し、選挙の目標を「市会に市民会派を」と定めた。柳本さんが「維新もまた民意」「公募校長は見直す」と都市構想や教育政策をちゃんと議論しようと語りかけたのは良かった。
 軒並み応援する候補が落選するなかで、武さん(生野区)と松崎さん(住之江区)の無所属候補が接戦を勝ち抜いたのは朗報だった。無所属議員が「めんどうさ」を引き受ける架け橋になるかもしれない。在野とはいえ見識の高い柳本さんの発信も欠かせない、総合区を提案している公明党には先見がある、ボクはそう期待する。松井新市長も、分権のための合区とか、万博と重なる出費、ましてや実際に大阪市をなくすのがどんなに「めんどう」か覚悟しておられると察する。
 これだけの時間、経費、敵味方に分かれた論戦が無駄にならないことを祈る。「大阪市を残した都構想」「市民が参加する改革」、そこに人権や福祉が輝く、そんなおおさか改革の次のステージを期待したいものだ。

株式会社ナイス
冨田 一幸

月刊なび146号より 市民参加は面倒くさいか
 投稿日時: 2019/04/01
 この拙稿がお目見えする頃には統一地方選も終わっている。残念なことだが、大阪の主役はまたまた維新だった。歯痒い思いをしながらボクは振り返った。
 橋下さんの人気が最高潮だった頃、「冨田さんはいつも市民参加と言うけど、私は自分ではやりたくないし、時間もないから、高い税金を払って公務員や議員に任せているつもり。ボクに任せて一票入れてくれと言ってる橋下さんの方が分かりやすい」と、知人女性は語った。あれからもう8年かな? 次第に橋下さんの言は「ボク」が「ボク達」になり、大阪では強靭な橋下チルドレン、維新議員達が跋扈した。知人女性には満足な8年だったのだろうか、今度も維新に投票したのだろうか。
 知人女性はどっちでも良いと言っていたが、もう一つの橋下さんの分かりやすさが大阪都構想だった。しかし、都構想は、分権はそっちのけで、次第に市場頼みの虚言に変質した。幸いにも、インバウンド景気や安倍さんが取り込んだ教育無償化に、大阪万博というある種の「外因」が橋下維新の虚言を救った。維新は強運だった。
 しかし、皮肉にも「一票」が維新を袋小路に追い詰めた。選挙マジックが擦り減りはじめ、「もう11月(知事・市長の任期)まではもたない」、ただそれだけが理由の前倒しクロス選挙になった。維新は味噌をつけた、ボクはそう思った。
 一方で「市場頼み」も翳りを見せ、公共サービスの民営化も疲弊し始めてきた。効率性を重んじる民営化に、ボクは当事者性を活かせる「市民営化」を対案化してきたが、現場は羅針盤のないまませめぎ合っている。外国を引き合いに出した「再公営化」なんてのも出始めた。都構想の各論がきわめて乏しい維新は、次第に現場の議論から遠ざかった。この問題を今度の選挙の争点にしようという政党はなかった。
 ボクはかの知人女性にまだ返答していない。
 外交と医療と年金以外の公共サービスはすべて自治体が担っているのが日本の仕組み。当然、自治体のサービスは増えるし、その内容も変化する。あまりに小分けされた自治体の単位では非効率にもなるし、専門性も追いつかなくなる。一方で大阪市のような大都市では目が届かなくなるし、不公平も生じる。都構想などの制度変更の議論が起こる所以がある。
 しかし、そのサービス一つひとつを解析していくと、やり方一つで随分満足できるものにすることもできる。その総論に分権とか自治体共同とかの制度論もある。自治体というのはまだまだ未開拓な分野で、市民は思わぬ幸せを得られるかもしれないし、その逆もある。そういう思考回路のことを「市民参加」という。ボクの説明はまどろっこしいが、8年経って、かの知人女性に話してみたいと思った。

株式会社ナイス
冨田 一幸

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