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月刊なび141号より 差別する自由はない
 投稿日時: 2018/11/01
 東京都で人権条例が可決されたが、賛否あるようだ。推察するに、東京五輪開催都市として、ヘイトスピーチは防ぎたいし、世田谷区などいくつかの特別区が先行したことから、LGBTの先駆都市もアピールしたいという「五輪条例」の色が強いみたいだ。それはそれでかまわないと思う。ただ、この東京条例はヘイトとLGBTを特記した条例のようで、部落問題など他の人権課題が「など」や「すべての」で括られてしまっていることに異論が出ているようだ。人権条例とネーミングする以上当然だとも思う。可決された以上、条例を具体化することと、足らずを補うことの両面から条例が活かされていくのだと期待したい。
 さて、大阪の場合は、大阪市がヘイトスピーチ防止条例を全国に先駆けたわけだが、大阪府の松井知事は、大阪市以外に「立法事実」がないことを理由に、「府条例」は検討していない。一方、LGBTの人権について府や市はどう考えているのか、議論は聞こえてこない。「五輪条例」はいかにも機を見るに敏な小池知事だが、松井知事も「万博条例」であったってかまわない。むしろ機を活かすことだと思う。
 「立法事実」、要は具体の差別事例がないのに防止策を講じると言論や集会の自由などを制限することになりはしないかという見解なのだろう。なるほどHPなどを見ると都条例に「自由の侵害」という批判もあるようだ。他都市に惹起しているだけでは立法事実にならないというのは随分直感的見解で、「差別する自由はない」という民主主義への想像力に欠けた見解ではないか思うが、如何だろう。
 それから、ヘイトもLGBTも、例えば「婚姻は両性の合意による」などの憲法の解釈を巡って賛否があるのが実際で、「差別する自由はない」との観点から、いたずらな意見の衝突が暴走しないように、条例で人権を保障することを宣言し、具体策を講じることは有意義だと思う。これには松井知事も異論はないと思う。松井知事の盟友・橋下徹さんは最近の著書で、LGBTなど、古い価値観と真っ向から違う新しい価値観を有権者に問うていくのが野党だと言明されていて、日本維新の会の国会議員には早くから提言しているのに全く関心がないと一刀両断されていた。
 もう繰り言だが、大阪市のヘイト条例では、橋下市長が「被害者の訴訟費用の一部を市が負担する」という被害者救済措置を原案に盛り込んだが、次の吉村市長と自民党などはこれを削除した条例案で合意してしまった。そこにもここにも「差別する自由はない」という民主主義の根幹への揺らぎが見え隠れしていると思う。さて、立憲民主党はLGBT 条例に賛成か、ちゃんと発信して欲しいと思う。党を支持する弁護士さんたちには意外と「自由の侵害」論が多いから。ちょうど弁護士の亀石倫子さんが参院大阪選挙区に立候補されるが、この人の発信力は大きいと期待したい。

株式会社ナイス
冨田 一幸

月刊なび140号より 障害者雇用率不正算入問題への緊急提案
 投稿日時: 2018/10/01
 官公庁に6900人の障害者が働いていると言ってたのに、3460人はウソだった。いったい、どこまで闇なのか、官庁や自治体の障害者雇用率不正算入問題は深刻だ。その直接的原因は、①深刻なコンプライアンスの欠如であり、②省庁自らが率先して共生社会を築くという意欲の欠如である。猛省とともに、原因の掘り下げが求められる問題だ。
 ただ、この問題には間接的な原因もある。③現行障害者雇用促進法では、国や自治体の行政機関は報告義務もなければ、罰則規定も適用されないために悪用されたということ。④診断書に基づく障害者認定には曖昧な点も多く、拡大解釈されたかもしれないということ。⑤専門性の高い官公庁業務にとって、「就労支援プログラム」のないままでの雇用率アップ改定は、かなりの重荷になっていたのかもしれないということ。
 同時に、今回の不正算入問題は、労働現場の実態から乖離した障害者雇用制度の「ひずみ」も遠因になっていると思われる。⑥そもそも障害者認定が手帳や診断書のみに依拠する「医療モデル」になっており、是正が求められているということ。⑦とくに自治体現場に顕著な委託など、業務の多元化が考慮されていないということ。⑧雇用率制度は義務規定(権力規定)で、雇う側と雇われる側の対等な関係に立ち返るなら、法定雇用率と同時に「共生雇用率(仮称)」とでも表現すべき双方向のユニバーサルな市場目標が必要ではないかということ、などである。
 すでに、在野では幾つかの試みが成されているが、公共及び準市場に限定して紹介してみたい。⑨大阪府等幾つかの自治体は、公共発注業務契約において障害者や就職困難者の雇用を評価点としており、雇用実績では法定雇用率の3倍まで、契約当該現場では10倍までを加点対象としている。⑩福祉現場ではいわば非課税分社会貢献という観点で、制度に拠らず職域を開拓し、手帳所持の有無にもとらわれない就労モデルを実践している。
 以上の10項目を考慮して、今回の問題への対処方策を検討したい。⑪問題の社会に与える影響を考えると、障害者等被害当事者が参画する「検証委員会」の設置が喫緊であるということ。⑫3000人を超えるとも想定される未達成分の拙速な数合わせ的雇用では、かえって「二次災害」を引き起こすと懸念されることから、国会が介在して一定の猶予期間を設定すべきであるということ。⑬その際、省庁内の就労支援計画の策定を義務付け、それを検証する「臨時的な期限法」が検討されても良いのではないかということ。⑭あわせて、手帳だけに拠らない障害者認定のあり方および「共生雇用率(仮称)」や「非公務員省庁及び自治体職員」、政策的な外部委託における雇用創出など、共生社会を築くための総合的政策目標を検討する場が用意されるべきであるということ。いずれにせよ、雨降って地固まるのでなければ詮無い事件になる。

株式会社ナイス
冨田 一幸

月刊なび139号より 「自分ごと化」で政治の風景を変える
 投稿日時: 2018/09/03
 世論調査で過半が反対し、国会周辺をデモが席巻し、ネットも炎上しているのに、議会が強行採決して一丁上がり。安倍政権の風物詩になった感がある政治風景だ。橋下市長が都構想を住民投票で決するとしたのは一つの案だったかもしれないが、「強行」という悪印象はついて回った。大阪の識者にはカジノ誘致も住民投票にしたら良いなんて意見もあるが、唐突感は拭えない。直近では、吉村大阪市長が、学力テストの結果を教員のボーナスや学校予算に反映させる方針を表明され、ネット上で反対キャンペーンが盛り上がっている。市長と議会が世論に耳を傾け、こんな愚策を思いとどまってくれたら良いのだが、そうならない場合打つ手はあるのか、よくよく考えてみたい。
 そんな折、松江市の市民団体のユニークな試みが新聞で報道された。テーマは島根原発3号機の新規稼働の可否。無作為に抽出された市民による「住民協議会」を立ち上げ、原発推進と反対の専門家を招いて意見を聞いたり、市民同士の議論を深める過程を公開することで、大きな決定権を持つ首長と議会とは別の意思形成を対比させようという試みだ。何だか陪審員とか裁判員制度を想起させるが、面白い取り組みだ。この住民協議会の名称が「自分ごと化会議」だと知って、これは良いとボクは膝を叩いた。
 強行採決する側も横暴だが、反対するデモ側もエキサイトしているように見えてしまう。そこで「自分ごと化会議」だ。市民運動というのは「まず隗かいより始めよ」で、「自分ごと化」のキックオフをするのが役割。多様化した市民の意思を形成するには、政治参加という「自分ごと化」のラウンドテーブル(住民協議会)にバトンタッチするのが良い。議員は、議会と住民協議会の「複線」で丁寧な意思形成を図る役割を演じることになる。前述の「学力テスト問題」なら、市民運動が隗になり、無作為抽出で委員を選出し、様々な関係者の意見を聞き、ボーナスや学校予算への反映の可否を問うだけでなく、学力や教育向上の多様な討議を公開し、意思を形成していくということになる。
 ボクも参加している「自治フォーラムおおさか」の場で、武直樹大阪市議(無所属)も、たった一人の市民でも、A4用紙一枚で、市議会の委員会に「陳情書」、本会議に「請願書」を提出できる制度を活用してくれたら、一人会派の自分が、他会派議員へのロビー活動をして意思を形成していくと提唱されていたが、主訴は自分ごと化会議に通底している。あまり認知されていないが、大阪市が総合区に移行した場合の「総合区常任委員会」や「区政会議と自治区協議会」にも、同じような志向がある。
 まるで、暑すぎる夏のように、不快指数の高い国会、大阪市会だが、市民運動や野党の発想の転換で、ちょっとは涼しい秋を迎えたいものだ。キーワードは「自分ごと」だと思った。

株式会社ナイス
冨田 一幸

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