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月間なび105号より あえてリスクをとる
 投稿日時: 2015/10/29
 12月竣工を目標に建設している(株)ナイスの新築マンション「パークコート」だが、正直不安だ。
 4〜6階は、サービス付高齢者住宅30室で「地域立」のヒューマンライツ福祉協会が運営する。生活保護制度改革で住宅扶助限度額が4万2千円から4万円に減額されたのは、工事着工後だった。低所得者対応の高齢者住宅を新築で提供することが異例なうえの家賃減額だから、かなり冒険だ。しかも、介護業界は空前の求人難であるから、コスト高も避けられない。
 3階は、国際幼児スクール「スターブレインズ大阪校」が入居する。外国人講師による幼児発達教育で、心と体を鍛え、学びの習慣を身につける施設で、神戸校の実績があるが、西成にマッチするのかと不安視する声は多い。
 1〜2階は、全国初の試みである「民設置民営隣保館」が入居する。愛称も「スマイルゆ〜とあい」と決まり、ヒューマンライツ教育財団が運営する。橋下改革で市民交流センターが廃館になることから、民設置民営に挑むことになった。隣保館、市民館、解放会館、人権文化センターと続いた地域のコア施設を残したいとの解放運動の要望によるが、同対法後10余年、運動の求心力も急速に衰えている。
 まさに、「三つのリスク」が重なりあうような事業となった。その点、安保法案を強行採決した安倍内閣は、リスクをとらない「アベ・ノーリスク」に転じた感があるのとは対照的だ。悪評の「一億総活躍」だが、大臣が拉致担当も兼ねるとのことで、看板政策だったはずの拉致問題から逃げたのではないかと勘ぐってしまう。「介護離職ゼロ」より「介護雇用」が先だろうと誰もが言うのに、雇用問題というリスクを避けた。消費増税の軽減問題でも、公明党のご機嫌が大事で、いま一番大事な「格差」に踏み込むことはなかった。信条に固執するがリスクはとらない内閣で、日本は内外で信頼を失うかもしれない。
 困難を経てきた地域が、貧しくても一人暮らしでも、居場所と出番のあるコミュニティになれたら素晴らしいことだし、子どもたちの豊かな国際交流が育まれたら素敵なことだと思う。「三つのリスク」は「三つの挑戦」だ。社会福祉法人が「貧しい人の砦」として、財団法人が「隣保の後継者」として、(株)ナイスが「社会的企業」として、背骨を再構築するような事業になるかもしれない。また、この施設だけでは事業性は低いから、全体の事業の安定化を図らないといけない。何より「三つの挑戦」をけん引するのは地域の部落解放運動である。「部落のため」ではなく「幸せのため」の運動である限り、サスティナブル(持続可能な)運動は可能であると思う。
 「法がないと公は動かないし、儲からないと民も動かない。しかし、法はなくても、儲からなくても、社会問題は解決しなければならない」。初心忘れずだ。

㈱ナイス代表取締役
冨田一幸

月刊なび104号より いま、政治の課題は「格差是正」のはず
 投稿日時: 2015/10/01
 ①公明党との約束通り「軽減(複数)税率」で食料品等を8%に据え置くか、②10%徴収した後、マイナンバーカードを活用して一律年額5000円程度還付するという財務省案か、③徴収後に低所得者だけに給付金を配るか、消費増税の軽減措置が国会で議論されている。財務省案が欠陥だらけだったことをみると、公明党の顔を立てる政治的取引だったのではと勘ぐってしまう。そもそも、消費増税は「逆進性」、つまり格差を拡大してしまうから「税と社会保障の一体的改革」だったはずだが、「痛税感」を和らげるということに矮小されてしまったから、いま、三つの案を論じあっても得るものは少ない。
 ボクは、社会保障改革なしの消費増税には反対だった。痛税感の緩和措置は低所得者に限定すべきで、相対的に所得の高い人には我慢してもらうべきだとも思ってきた。それも、社会保障制度がそれなりに整備されている高齢者や障がい者より、制度から抜け落ちた求職者や不安定雇用の労働者等にこそ波及する施策の財源にすべきだと思ってきた。だから生活困窮者自立支援法なのではと言われるだろうが、結局この法も、住宅扶助額等生活保護の減額と重ねられ、「転んでもただでは起きない」政治的取引にされた気がする。それも500億円の大半が相談事業等の支援者の人件費に充てられてしまって、効果が半減した。
 年間5000円還付されてどれほどの効果があるのか、それも一律還付なんだから格差は縮まらない。だったら、いっそのこと、軽減税率も還付もやめて、国民一人あたり年間5000円を「働きたい人々」への職業訓練や就労支援、生活支援の財源に回したら良い。民主党ぐらいが、せめてそんな議論でもしてくれないかと思う。
 先日、北海道で「共同連」という障がい者運動の全国大会に参加したが、「生活困窮者自立支援法は支援者のための法じゃないか」と少々過激な? 発言や、「いつまでも障がい者施策を求めるだけで良いのか、社会的困窮者施策への統合も考えても良い」という踏み込んだ発言もあって、ボクは共感した。対象者を限定してこそ福祉は成り立つが、限定すると「切る/ 分ける」という副作用も出る。もう一つ「大きな」対象者限定があれば良いのだが、マイナンバーになると「権力介入」という副作用が出てしまう。しかし、いまや非正規労働者も「転落」ではなく、「一般的な働き方」になっているのに、ポジションは「自営」となり、何かしらの「パスポート」がないと、通勤手当も控除されない等、社会保障も素通りしてしまう。いままでの常識で施策や改革を試みてもミスマッチばかり。ちょっと頭を切り替えてみる必要があるとつくづく思った。

㈱ナイス代表取締役
冨田一幸

月刊なび103号より 一強多弱から芽生えた直接民主主義
 投稿日時: 2015/09/01
 「政治の世界の一寸先は闇」なんて言われるが、一強多弱で万全に見えた安倍内閣の支持率が急降下、「危険水域」と言われる30%割れに近づいてきたのだから、政治は怖い。ある調査によると、女性票ではすでに20%台らしい。
 橋下さんは人に任さないが、安倍さんはどちらかというと組織プレーをする人、なのに肝心の身内からの足引っ張りが目立つ。「海外での軍事活動に核兵器を輸送できる」(中谷防衛相)、「法的安定性は関係ない」(磯崎首相補佐官)、「戦争へ行きたくないというのは超利己的」(武藤衆院議員)等々。岩手県知事選挙では、劣勢必至の推薦候補の立候補断念という異例の措置に出たが、これには驚いた。安保論戦から逃げただけでなく、復興論戦を犠牲にしたことになる。陣頭指揮は谷垣幹事長なのか、菅官房長官なのかわからないが、後で倍返しの打撃を受けることになる大失敗だったと思う。安保に懲りすぎの安倍さんを、野田聖子さんが「少子化対策も大事」と皮肉ったとも報道されている。SEALDs という学生団体のことを「デモに参加すれば就職できなくなる」とネットで発信した時代錯誤の自民党地方議員もいたらしい。
 公明党のお家事情も大変だ。安保法案への無批判的追随に、さすがに創価学会内部から批判が噴出しているらしい。自民党も「嫌な感じ」だが、大阪都構想の住民投票での対応も然りで、公明党が自民党の尻にくっついて右往左往する様は、ホント「嫌な感じ」だ。創価学会や公明党には、戦争については理屈じゃなく「嫌だ」という頑なさがあり、信仰を別にする人々からは、何かと頑ななところが好きになれないが、この戦争は嫌だという頑なさが救いになっていると思われてきた。何だか、昔々、「自社さ政権」なんてできたのは良いが、それで社会党が消えてしまった歴史を思い出す。土井たか子さんも、ダメなものはダメだった。
 一強多弱に押されて、尻軽く安保法案を出した安倍さんだが、一強な分どうしても持って行き様が横柄になった。一強なんだから党内論戦を見せれば良いのに、一強な分反対論を言いにくい雰囲気をつくってしまった。公明党も堅い組織な分、組織内民主主義をおろそかにしたし、失礼だが堅い分、東京派、関西派みたいな抗争もあるようだ。
 変な話だが、「一強に救われた」。SEALDs のデモでは、ひきこもっていた若者も「声を出した」そうだ。選挙は間接的だから、これは「直接民主主義」というのだろうか、久しぶりの感覚だ。8月30日は国会前に10万人、全国でも100 万人のデモが呼びかけられている。もちろん、この拙文の発行はその後になるが、『なび』もデモする予定だ。行くところないけど、行きたいと思ってる人を水先案内する「デモなび」だ。

(株)ナイス代表取締役
冨田一幸

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